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タクシー料金計算やスマフォの電池を長持ちさせるアプリが、累計100万ダウンロード!
展開している事業内容・特徴
ちょっと情けないおじさんキャラ。キモカワというやつだろうか。妙に愛らしく気になってしまう……。そんなキャラクターをウリにした実用アプリが大ヒットしている。
手がけているのは、茨城県守谷市にオフィスを構えるFULLER(フラー)株式会社。
「ぼく、スマホ」というアプリは、スマートフォンの電池を長持ちさせることができる。アンドロイド版のみだが、すでに50万ダウンロードを超えている。バックグラウンドで動いているアプリで不要なものを停止させたり、削除していくことで、電池の消費量を削減するという仕組みだ。
ついつい便利だと思ってダウンロードしたアプリがたくさんあるが、実は使っていなものも多い。そして、そうしたアプリが使われないまま起動して、自動的に通信したり、アップデートすることで電池を消耗する。そこで、このアプリではそうした無駄を省いてくれるというわけだ。
このアプリがヒットした要因の一つに、アプリを消すことを「ダイエット」に見立てたことが挙げられる。実際にアブリを消していくと、おじさんがどんどん痩せていく。そのゲーム感覚が楽しい。
実は2012年6月にリリースした最初のバージョンには、おじさんキャラクターがついていなかった。電卓のような機能性だけに特化したUIで、アプリダウンロード数が伸びなかった。ユーザーからの「つくりや見た目が理系っぽい」という意見を参考に、同年9月からおじさんキャラクターを登用。特に女性からの受けがよくなった。2013年11月時点で、ユーザーの7割が女性だという。
また、「タクシーおじさん」というアプリは、現在地と目的地を入れるとルートと料金を計算してくれるというもの。このアプリで、タクシーの配車予約もできる。料金検索機能や配車予約は、タクシー大手の日本交通が提供しているAPIを利用。これも普段はタクシーをあまり使わない女性層に受けるような、シンプルで可愛らしい見た目にしたところ、ヒット。日本交通という大企業と小さなベンチャーとのコラボだが、FULLE社の代表である渋谷修太氏がたまたまベンチャー系のイベントに参加し、そのピッチを聞いていた日本交通の川鍋社長から声をかけられたことがきっかけで実現した。
そのほかにも、電卓アプリや懐中電灯アプリ、QRコード読み取りアプリなど、8本のおじさんシリーズのアプリを添加中で、すべてのアプリ累計で100万ダウンロードを超えている。
現在の売り上げは、アプリベンダーからの広告収益が主で、本格的なマネタイズはこれからだ。
2012年12月にはロンドンのm8 capitalと朝日ネットから総額1億円の資金調達も行っている。この資金調達がとにかく大変で、投資家向けに事業計画書を作成したが、事業計画書の作成自体が初めての経験。しかも海外のベンチャーキャピタル向けだったので、さらに翻訳作業も必要。計画書の作成と翻訳は弁護士の先生などの協力を仰ぎながら進めたそうだ。
学生時代の仲間が集まって起業。背中を押してくれたのはライフネット生命の岩瀬氏
ビジネスアイデア発想のきっかけ
FULLER株式会社を創業した渋谷氏は、1988年生まれの25歳。高専で情報工学系のプログラミングを学んだあと、筑波大学に進学。卒業後はGREEに入社した。
しかし、もともと自分で何かつくりたいという思いが強く、GREEを1年で退職し、高専・大学時代の仲間と一緒に起業した。
つくば市内の一軒家をオフィス兼住居として共同生活をスタート。その後、東京への移動時間を短縮するべく、中間地点である守谷市に拠点を移した。取材時に伺ったオフィスは、各々が好きなものを持ち込んだサークルの部室のような雰囲気だ。
起業の直接のきっかけになったのは、ライフネット生命の岩瀬氏が主宰する起業塾に参加したことだった。渋谷氏のプレゼンを聞いた岩瀬氏から「応援するから起業しては」と進められ、資金調達などの協力を得ながらスタートした。
最初につくったのは、アプリのランキングサイト。アプリストアの情報を取得してランキングするというサービスだったが、すぐに人気化。数十万ダウンロード規模のアプリに成長して利益も出た。
その後、アプリが大量に世の中に出ているが、それを管理するツールがまだないと気づき、開発したのが先述した「ぼく、スマホ」である。
「タクシーおじさん」が生まれたきっかけは、日本交通の川鍋社長ということは、先に話したとおり。川鍋社長は、創業家の3代目として多額の負債を抱えた会社を引き継ぎ、見事経営を立て直したことで有名な経営者だ。実はスタートアップに強い興味があるとのことで、何か一緒にやろうということが出会った当日に、渋谷氏とタッグを組むことを決めたそうだ。そこから1カ月ほどで、「タクシーおじさん」を開発・リリースしている。
トヨタの車、任天堂のゲーム機に続きたい。世界中で使われる日本発のサービスを目指す!
将来への展望
取材の最後に渋谷氏に気になる起業家・経営者を聞いたところ、「ポケモン」の開発者である田尻智氏との答えが返ってきた。
「ポケモンは世界的コンテンツで、僕らはそういうゲームで育ってきた。ポケモンがあったから友だちと楽しい時間をすごせたし、プログラムを始めたきっかけもポケモンのようなゲームをつくりたいと思ったから」
また、田尻氏も高専卒であることも、理由の一つだそうだ。ちなみに、コロプラの馬場社長、サクラインターネットの田中社長など、実は高専卒の起業家は多い。
起業関連のイベントでシリコンバレーに行くことも多いという渋谷氏。そこで感じたことは、起業する人間やチームの技術的な差はないが、起業に関する環境の成熟度の違いは大きいという。
「プレゼン一つとっても、場馴れしているというか、みんな上手い。出てくるビジネスプランも日本では見かけないテーマが多い。最近ではビットコイン関連が目立った。しかし、そんなシリコンバレーで走っている車はトヨタ車だったり、任天堂のゲーム機が普通にある。日本発のプロダクトが自然と存在する。そうした光景を見て、日本でも面白いベンチャーはやれると感じた。自分もいつかは、スマートフォン業界で、世界中で使われるプロダクト、サービスをつくりたい」と渋谷氏は語ってくれた。
高専卒で根っからの技術者・クリエイターといった雰囲気の渋谷氏。「映画ソーシャルネットワーク」さながらの世界が日本でも確実に生まれている。未来のトヨタや任天堂のようなエクセレントカンパニーが、こうした新しい世代から生まれる事を期待せずにはいられないインタビューだった。
FULLER(フラー)株式会社 | |
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代表者:渋谷 修太 | スタッフ数:10名 |
設立:2011年11月 | URL:http://fuller.co.jp/ |
事業内容: モバイルアプリケーション事業 インターネットメディア事業 |
当記事の内容は 2013/12/3 時点のもので、該当のサービス内容が変わっていたり、サービス自体が停止している場合もございますので、あらかじめご了承ください。