マニュアル - 営業・売上拡大

ここでは、起業家・ベンチャー経営者のための「営業の基礎知識」を解説していく。営業でまず重要なのは「顧客」だ。「顧客」と一言にいっても、この定義や分類がある。商品やサービスを闇雲に売れば良いという時代ではない。ここに解説してある言葉は最低限の知識として是非抑えて欲しい。

第1章 営業の基礎知識

1. 顧客を定義する

「顧客」とは、我が社の商品やサービスが自己(自社)の欲求を満たすことに気づき、実際に使用・活用している状態を指す。ドラッガー氏は「顧客を創造すること」が事業の目的であると提言した。
つまり、社会に対して自社の商品やサービスの存在意義を知らしめ、その存在意義を顧客が認めることが、最初の一歩となる。

よく「ニーズは存在するもの」という常識がまかり通っているが、実際には「ニーズ」は存在しない。
いや「商品を提案されるまでニーズには気がつかない」というのが正解だろう。
従って、セールスとは、潜在客が求めるであろう「ニーズ」を顕在化させ、そのニーズを満たすのに我が社の商品やサービスが最適であると認識させ、購買行動へと結び付けることにある。
そのためにも潜在客の「求めるもの」「理想」「あるべき姿」と「現実」のギャップを正確に掌握することが事業家には求められている。

2. 営業手法(プル戦略)

営業手法を考える際、大きく分けて2つの方法がある。それが、「プル戦略」と「プッシュ戦略」だ。ここではまず、プル戦略について考えてみたい。

「プル(Pull)」には、「引く」という意味がある。営業手法においてこの意味は、つまる「引きを待つ」ということになるのだ。
例えばテレビCMを思い描いてもらいたい。テレビを見ていると、CMの時間になり、各社が数十秒から1分程度のCMが流れる。このCMは企業が広告費を払って流している。当たり前だが、これも立派な営業手法である。

ではCMは、あなたに対して何をしてくるだろうか。答えは「何もしない」だ。一方的に映像と音声で商品やサービスをPRしているだけで、個人(あるいは法人)に対して直接的なアプローチを行っているわけではない。
このCMの目的は、CMを見た人から問合せあるいは購入を「受ける」ことにある。特にテレビCMは不特定多数の相手に対して放送されているため、誰が見ているかなど分らない。CMを発信した側は、ただCMを見た人の動きを待つだけなのだ。

CM以外に雑誌やWEB広告、看板やポスティングや折込チラシなど、様々なプル戦略が存在する。 それぞれに、反応を得る為のノウハウが存在するが、大切なことは、正確かつ継続的に反応率を計測すること。
どの媒体で、どんな内容の広告を打てば、これぐらいの反応が得られる。
この蓄積が自社のマーケティングノウハウの基礎となっていき、プル戦略を成功させるためのメソッドを確立させていくのだ。

3. 営業手法(プッシュ戦略)

プル戦略に対して、こちらから直接的にアプローチをかける手法が「プッシュ戦略」である。ターゲットに対して、直接コンタクトをとっていく。

例えば毎年4月頃になると、企業には多くの「新卒営業マン」が訪れる。彼らはとにかく足を動かし、企業を回る「飛び込み営業」を行っている。あるいは突然電話でセールスをされるということもあるだろう。良く新人営業の関門や腕試しのように行われるので、4~6月頃は飛び込み営業やテレアポが増える。

このように売り手から買い手に対して直接働きかけることを「プッシュ戦略」という。
相手の反応なども分かるため、たとえ商談に繋がらなくても情報収集にもなりうる。

プル戦略とプッシュ戦略、どちらがベストか・・・と議論の対象となることがあるが、実務ベースではミックスをすることが最も効果的。

また、プッシュ戦略の立案、実行スキルを磨くには、直接顧客と接触するプッシュ戦略の経験は貴重な財産となる。
顧客の反応がイメージできるからこそ、最良なプル戦略が立案できる。
特に新商品の場合は、必ず買い手の反応が目の前で観察できる「プッシュ戦略」を必ず経験することが重要だ。

4. 売上拡大

企業が共通して目指すものは、何だろうか。それは、売上の拡大だ。売上がなければ、当然のことながら企業経営は成り立たない。
では、いったいどうすれば良いのか。特に独立したて、もしくはこれから独立を考える場合には、まずはこう心得て頂きたい。

「経営者こそ、トップ営業マンであること」

スタートアップであれば、営業マンを雇用する資金がないというケースもあるだろう。しかし営業を外部委託などしてしまうと、そのノウハウは企業に蓄積しない。

経営者自らが販売することで、商品改良や新商品開発の必要性も早期に判断できる。
さらに意図せぬ競合の発見や想定していないチャンスも嗅ぎ分けることが出来る。
経営者自らが販売に現場に立つこと。

これが最強の営業戦略を構築する「前提条件」ともなりうる。

5. 営業戦略のたて方

営業活動は、ただ考えなしにアプローチを行っても最高の成果はあげられない。
そこには、成果を生むための「戦略」が必要なのだ。では、どうやって戦略を立てれば良いのか。

まず、事業規模や商品特性に合わせて、圧倒的なシェアを取れるまで市場を鋭く絞る事である。
そして、絞った市場の中にいるオピニオンリーダーを特定し、確実に受注する。
さらにその導入事例を販促材料として、一気に拡販する。

この三段論法を実現させることこそ、シェアを増殖させていく基本プロセスである。営業戦略が誤っていると、どんな手法を用いても成果には繋がらない。 全社的事業活動を鑑みた上で、成果につながる戦略の立案が必要だ。戦略の良しあしで、営業の結果が大きく左右されることを認識しておきたい。

第2章 営業テクニック

第2章では「営業テクニック」を解説していく。前置きとして、テクニックありきの営業は決してお薦めはしない。本質的ではないからだ。しかし、それでも覚えておいて損はない単語やテクニック、ノウハウ等を解説していこう。

1. 営業活動で失敗しないために

営業活動を行う場合、営業活動における各フローを「全体最適化」させることが大切だ。アプローチのテクニックが如何に優れていようとも、自社の強みが活かせる市場層でなければ、見込客発掘の成果を得ることは出来ない。
また、相性のよい市場層に最高のアプローチができても、その市場層に対して効果的な商談またはプレゼンテーションができなければ成約率は下がる。

顧客リスト作成手法やアプローチ・テクニック、提案、クロージングといった商談スキルの向上を図るべく、様々な書籍が氾濫し、教育研修プログラムも乱立しているが、それはあくまでも「個別最適化」の世界。

売上をあげる仕組みを作り上げるには、対象市場層に対して、アプローチから商談、クロージングまでの全体設計を行う必要がある。 川が流れるように、すべてのプロセスで購買心理に基づいた「アクション」を準備する。
売上を最大化するために、各アクションの成功率を計測し、成功率を極限まで高めるための仮説を立て、検証し、また新たな仮説を検証しながら、全体の最適化を図る努力をしていくことが、重要である。

各プロセスの成功率を計測している企業は少ないが、アタリマエの事をちゃんとやる企業は成功する。 営業は感性が非常に大切だが、その裏付けを検証する仕組みも、また重要だという認識を持ち続けてほしいものである。

2. 知っておきたい。営業の心理学

営業は、当然のことながら相手があってのものだ。ファーストアプローチからクロージングまで、一連の購買プロセスにおいて、様々な心理的な変遷が起こり得る。

従って、相手の心理状態を把握しながら話を進めるということは、とても大切。
何も心理戦をしろというのではない。
相手の心理に対して適切なアプローチを行うことが重要なのだ。
単純に、こちらが紹介した商品やサービスに対し、どの程度の温度感で興味を持っているのかを読み取ることも、相手の心理を把握することに繋がるだろう。

事業は、顧客、取引先、従業員など、多くの人間関係のなかで、成り立っている。
従って、人の心理を学ぶことは、経営にとっても、非常にプラスになる。
とは言っても、心理学を学ぶと言っても、学ぶ範囲が広すぎる。
学者になるわけじゃないので、いわゆる心理学を習得する必要はないだろう。

事業を行う上では承諾心理、購買心理、また事業に対して総括的な影響を与える群集心理くらいは抑えておいた方が良いだろう。

第3章 営業成功の秘訣

ここからは「営業成功の秘訣」と題して業種別のアプローチ方法を解説していく。営業と一括りにしても、法人・個人、業種によって抑える経べきポイントが異なる。また、是非抑えておいてほしい営業キーワードの解説も最後に付け加えた。

1. 営業対象別アプローチ

営業対象は、大きく分けて2つある。それは、「法人」と「個人」だ。法人営業を「BtoB」、個人営業を「BtoC」などとも呼ぶ。

法人も個人もアプローチによってコンタクトを取る相手は「人」だが、組織であるか否かで最適な営業アプローチの方法は異なる。この点を理解しておかないと、営業活動は上手くいかないだろう。

法人は、あくまでも「決済者」にアプローチをしなくてはならない。
営業で接触する担当者の組織的立ち位置を探りながら、情報を巧みに出し入れするセンスが求められる。
これは企業研修でも中々身につくものではない。
だからこそ、営業プロセスの全体設計を行い、トップセールスと下位層セールスの幅ができないように標準パターンを作り上げる必要がある。

自社が狙った市場層で必要な知識を抽出・体系化し、個々の営業マンの専門知識へと落とし込むのだ。
ただし、この「専門性」を見誤ってはいけない。例えば単純な「商品知識」などではなく、提供する商品が、その組織でどのような財務的な影響を及ぼすのか、マネジメント上どんなインパクトを与えるのか。そこまで含めた知識が求められる。

法人営業は、ズバリ「買い手の財務に何かしらのインパクトを与えること」が目的で購入される。
コピー紙ひとつとっても「消費費」にあたるし、広告営業も「売上拡大」に影響を与える。つまり相手の事業を手助けするプロに徹する事だ。

また個人営業は、自分の欲求を満たすためにモノやサービスを購入する。
これは「欲の充足」か「恐怖の回避」に大きく分かれるのだが、セールスでは、何の欲の充足なのか、どんな恐怖を回避しようとしているのか・・・・正確に掴み取りセールスに組み込む必要がある。

この際あれもこれもアピールせず、ポイントを絞って訴求することで、顧客の心は動いていく。

法人営業、個人営業問わずだが、事業というのは、顧客の理想と現実のギャップを埋める作業をしているのだ。従って、焦点を絞って顧客とコミュニケーションをして、気づきを促すことが重要になってくるのだ。

そこのツボを抑えられるかいなかが、成否をわける大きなポイントとなるのである。

2. 業種別のポイント

法人は、いくつもの属する業界に分かれる。業界それぞれに特徴があることは言うまでもないが、営業手法についても異なる点がある。ある業界で成功した営業手法・戦略があったとして、異なる業界でも同一のものが成果を生むとは限らない。

もちろん、営業の基本となる知識や考え方は、前章まででご紹介したものに相違ない。そこに業界特性に合わせた工夫を加え、ポイントを射た営業活動を行って頂きたい。

3. 抑えておきたい営業キーワード

ここからは、マニュアルの構成上、漏れてしまったが、是非とも覚えて欲しいキーワードについて解説する。

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