「フット・イン・ザ・ドア」とは、初めに小さくて受け入れやすいお願いから始めることで、次の大きなお願いを受け入れてもらいやすくする方法である。まず小さなお願いを受け入れてもらい、段階的にお願いの内容を大きくしながらクロージングしていく。
人は一度小さな要求を受け入れると、次の要求も受け入れやすくなる。フット・イン・ザ・ドアは、この考え・心理に基づいた方法だ。アンケートなどで囲い込みを行い、次に商品を売るといったイメージである。
例えば高額商品を売るのに、いきなり売りつけようとしても購入確率は非常に低い。ほとんどの場合は、断られるはずだ。そこでまずは軽く接触を図り、親近感を持たせるようにするのである。
この方法でよく見られるのが、「お試し」だ。
「試しに着てみませんか?」
こんな具合に、まずは試着を勧める。そして試着してみると、今度はその姿を褒めて購入を進めるのだ。きっと、多くの方が一度は経験したことがあるのではないだろうか。
このように最初の承諾が人間の心を拘束することを、社会心理学では「コミットメント」という。そしてこのコミットメントを応用した営業のテクニックが、フット・イン・ザ・ドアなのだ。
フット・イン・ザ・ドアという言葉は、営業マンが片足を入れてドアが閉まらないようにすれば、もう売ったのと同じだということを表している。
他にもフット・イン・ザ・ドアを使った例として、仕事を作るためにまず無料で仕事を引き受けてしまうという方法がある。「無料で仕事を受けるなんて」と非難する人もいるかもしれないが、実はこれが営業拡大に向けて大きな効果を発揮する。
実際に無料で仕事をすることで、相手にこちらの仕事を知ってもらう。また、効果を感じてもらうこともできるだろう。仕事によっては事前に相手との機密保持契約などを締結することもでき、すると相手に関するさまざまな情報を得られる関係ができあがる。
化粧品サンプルを配られ、その効果が確かだと次からその商品を購入するのと同じだ。何も分からない状態で仕事を依頼するのは不安やリスクが伴うので、フット・イン・ザ・ドアによってそのハードルを取り払ってしまうのである。
特になかなかアプローチから攻略できない相手には、接点を持つ上で効果的な手法といえるだろう。