製造業の多くは、直接エンドユーザーへの販売を行っていない。間に卸売業者や販売代理会社などを介して、商品を市場に提供している。
しかし、これは非常に危険な状態である。エンドユーザーと乖離した商売をしていると環境変化に気づかず、時代に取り残される危険すらある。
サロン向けの化粧品を製造しているメーカーの例を挙げてみよう。
卸売業者を一次流通として、全国のサロンに商品を販売しているメーカーの売上は逓減傾向にあった。
新商品を起爆剤にしようと、卸売業者に提案するものの、目新しさが残る3ヶ月を過ぎたあたりから、また売上は落ち始めてしまう。
メーカーは卸売業者との付き合いがあるから、今更直販にも移れず、ジリ貧の経営状態を指を加えてみるばかりであった。
しかし、商品を購入してくれる卸売業者ではなく、サロンの現状を見てみると今までとは違う景色が見えてきた。
エステサロンの新規開業者が増加し、競争環境は厳しくなっていると想定していたが、現場では、「整体院」や「カイロプラクティック」などの業者が「耳つぼダイエット」などの商品を担いで、エステの市場に侵食していたのだ。
エステサロンとの強力なネットワークを持つ卸売業者との長年の取引があるので、メーカーから直接エステサロンに営業することは倫理上できない。
しかし、整体院やカイロなら話は別だ。
サロンは今までとおりに卸経由で商品を新たに販売したとしても、整体院やカイロなどの新流通経路は自社開拓できる。
しかもサロンと異なり、他の化粧品会社は営業構成をかけていない。
まさに価格競争に陥らず、独壇場で活躍できる市場だったのだ。
もっと早く現場に入り込んで現状を把握できていたら、もっと早く対策も打てたはずだ。
卸売業者や販売会社だけに営業を頼ってしまうと、環境変化に気づかず、時代に取り残される恐れがある。
自社の運命は自社でコントロールできるように、製造業は、顧客と直接結びつく経営を実践しなければならないのだ。