契約書を作成せずに口約束だけで取引をはじめたり、あるいは長年取引をしているにもかかわらず、全く契約書が作成されていないということは、日本のビジネスシーンにおいてはよく見られます。
「新規取引に際して契約書を作って欲しいというと、相手を信頼していないように思われるから。」
「長年取引をしてきて信頼関係があるから。」
「契約書に何を書いたらよいかわからない。」
など、いろいろな理由があるでしょう。
たしかに、契約というのは必ず「契約書」という文書で作成する必要は無く、口頭で「こうしましょう」とお互い約束さえしていれば、それで契約は成立します。
しかし、契約書を作成しなかったことによって、
・お互い悪意が無くとも、自分の思い込みで「こうであるはずだ」と思い込んでおり、トラブルになると双方の誤解が表面化する。
・先方の前任者は了解していた事項について、担当者が交替したことによって「そんなこと聞いていません」「引継ぎを受けていません。」「それは前任の担当者が個人的にお話ししたことであって、会社としてお約束したことではありません。」などと前言を撤回される。
など、トラブルが発生する事例が後を絶ちません。
逆に、契約書があることによって、紛争の種が発生しても「契約書にこう書いてあるから、このように処理しましょう。」とお互いが納得することも多いのです。
取引開始時や、長年取引をしている、いわば「平常時」には、契約書はそれほど必要とされるわけではありません。トラブルとなったときに初めて「こんなはずじゃなかった。」「契約書を作っておけばよかった」と後悔することになるのです。
したがって、ビジネス社会において契約書を作成しておくことの重要性はいくら強調しても強調しすぎることはありません。
仮に何らかの理由により契約書が作成できないとしても、できるだけ取引条件については文書の形で残しておくべきでしょう。たとえば、不安に思う点についてファックスやメールで問い合わせをして、文書で回答して貰う、ということを積み重ねることで、双方の意思がある程度明確になる場合もあります。