「知的財産」も「財産」という言葉がつくのですから、お金や土地や家屋と同じような財産なのでしょうか?
その答えは、「イエス」です。知的財産も「財産」といわれるように、お金や土地や家屋のような一般の財産と言われるものと原則は同じように扱われます。ですから、権利者の権利として、その知的財産を独占したり、譲渡(売り渡す)したり、貸したりすることができます(ただし、お金や土地や家屋のように目に見える有体財産とは違い、目に見えない無体財産ですので、その取り扱いには特別なルールがあります)。
ただし、知的財産は、土地や家屋と違って唯一無二の財産ではなく、いくらでも複製が可能な財産であり、財産自体が目に見えないため、他人の知的財産との関係が、非常にわかりにくくなっています。
その反面、知的財産は、日々の暮らしやビジネスのありとあらゆる処に関係しており、知らず知らずの間に、他人の知的財産を侵しているような事態が、起きている可能性があるのです(例えば、携帯電話を1つ見ただけでも、容易に理解できると思います)。
すなわち、現在のビジネス・シーンのあらゆるフェーズで、絶えず知的財産の影響を考慮する必要があるのです。
例えば、売買契約書を見てください。最近の売買契約書には、必ずと言っていいほど「知的財産権」「秘密保持」といったタイトルの条項が用意されています。
具体的な内容としては、自分たちの知的財産権の保護を積極的に行う努めや、他人の知的財産権を侵害しない誓約や、技術や営業上の秘密を守る等があります。特に、自分が考え出したと思える商品でも、他人の特許権等の知的財産権を侵害していることが後でわかった場合には、侵害によって被った顧客の被害を弁償することを義務づけるような条項が、あたりまえのように盛り込まれています。
このため、ビジネスのあらゆるシーンで知的財産権の存在を意識し、日頃から適切な対策を講じておかないと、後々、取り返しのつかない金銭的にも甚大な被害を受けるような事件に巻き込まれる可能性が、すべての組織にあります。