たとえ出資が決まった場合でも注意しなければならないことはいくつかあります。
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1.株式買取条項
VC投資を受けた案件のうち、約40%が「倒産はしないけれどもファンドの運用期限内にExitできない」という
リビングデッド状態
に陥ります。
責任は投資に失敗したVCにもあるので、本来あるべき姿ではないのですが、
経営者に株式の買い取りを要求するVCもあります。
買取は強制ではなく、暗黙のプレッシャーやお願いベースで要求してくるケースが多いのですが、
投資契約書で
株式買取条項をゴリ押ししてくるVC
もいまだに存在します。
したがって、株式買取条項が発動される要件や買取価格が
不当な文言になっていないかどうか注意する必要はあります。
2.希薄化防止条項
投資契約書には希薄化防止条項がほぼ必ず記載されますが、
役員や従業員へのストックオプション付与が著しく制約されていないかは注意が必要です。
経営者の持分が潜在株を含めて
アーリーステージにもかかわらず30%を切るような資本政策は経営としての安定感がありません。
経営者の持分に対して制限をかけすぎるのはピザを分ける時に、
ピザの切り口の角度で取っ組み合いのケンカをするようなもの
で、ピザ自体を大きくしていくことの重要さを理解するべきです。
希薄化防止条項についてはVCとよーく話し合って理解してもらいましょう。
3.デットとエクイティのバランス
エクイティ(株主資本)ばかりで必要資金を賄おうするケースがありますが、
借入などのデットとのバランスが悪いと資金コストは高くつく場合があります。
企業が全体として負担する資金コスト≒WACC の仕組み
を理解しましょう。
エクイティはある意味返さなくていいお金ですが、意外と、株主の期待収益率(≒金利)は高いのです。
例えば、VCが期待している期待収益率は仮に無担保の貸出利率に換算すると、50~60%。
ヤミ金なみの高さ
です。
一方で、デットは「借金として返さなくてはいけないお金」ですが、
支払利息を損金処理できる節税効果
があるので、意外と割安な場合があります。
例えば、中小企業向けビジネスローンが金利10%とすると、実効税率が30%ならば、実際の負債コストは金利7%。
日本公庫の新規創業融資(金利4%前後)という非常に安いデッドファイナンスもあります。
したがって、多くの場合、エクイティで調達するだけでなく、
ある程度借金をしたほうが企業全体の負担する金利(≒資本コスト)は低く
なります。
企業全体の資本コスト(≒WACC)を小さくするように、エクイティとデットのバランスを意識しています。
極限までWACCを低くするならば、デット70%、エクイティ30%が目安ですが、
借金を返せないと不渡りなど会社の生死に関わるので、安全係数をふくめて
デット60%、エクイティ40%が目安
です。
例えば、エクイティで4億円の調達に成功したら、デットでも6億円の調達をしておくというのが目安です。