ここで、実際に助成金に成功した事例と失敗した事例を紹介しましょう。
・成功事例
脱サラして飲食店を開いたS社。会社を退職後、まず職安へ行って失業の手続きを行いました。自己都合だったので、給付制限期間中にご相談を受け、早速、助成金の受給のためのスケジューリングを行いました。
S社の場合、
中小企業基盤人材確保助成金と受給資格者創業支援助成金、
再就職手当と短時間労働者均衡待遇推進助成金
が利用できそうでした。
そのため、まず、ハローワークにて法人設立等事前届を提出していただき、その後賃貸契約や会社設立手続きに入り、中小企業基盤人材確保助成金の改善計画と実施計画を提出・受理され、人材の雇用を行いました。
スケジュールは以下のようになりました。
S社の場合、
中小企業基盤人材確保助成金で510万円、
受給資格者創業支援助成金で200万円、
これとは別に
短時間労働者均衡待遇推進助成金で60万円
を受給できました。
・失敗事例
中小企業基盤人材確保助成金を受けたいという健康食品の製造会社D社。
D社から、化粧品の卸売の事業に進出するにあたって異業種進出ということで、上記の助成金が利用できないかというご相談。
D社にはすでに顧問社労士がおり、出勤簿や雇用保険関係の書類は問題ないのですが、それが失敗のはじまりでした。
D社の社長は、助成金が簡単にもらえるという意識でした。
しかし、中小企業基盤人材確保助成金において、異業種進出となると、既存事業との人的交流や設備の共用は認められません。極端にいうとパーティションなしに机を並べることもできません。
D社の社長にはあらかじめそのような説明した際も、「ロッカーで完全に仕切るから大丈夫」だとの返事。その後は担当社員に助成金関係は丸投げでした。
結果、改善計画、実施計画は何とか受理され、認定まで至ったのですが、いざ、支給申請の際に問題が発生しました。中小企業基盤人材確保助成金は、実施計画が受理された翌日以降に基盤人材を雇い入れないと対象となりません。
実はD社は、受理される1か月も前に事前雇用をしていたことが総勘定元帳で発覚しました。
社長は雇用保険の加入日だけきちんとしておけば大丈夫だと高を括っていたようですが、助成金の審査はそんなに甘くありません。
審査はプロが行います。
総勘定元帳はもちろん、現金出納帳や通帳の原本まで調査されます。
どこかでボロが出るのは目に見えていました。
あらかじめそのような審査があること、厳しいこともお伝えしていたのですが、社長への報告も上がっていなかったようです。
結局、「総勘定元帳を作り直せばいいのか!」というような話しにまでなりましたが、それは不正受給につながるのでNGです。
このように、助成金の審査は簡単ではありません。審査が簡単であれば、企業側は適当に書類を改ざんして申請します。しかし、そのような不正はとおりません。助成金申請をする場合には、真っ当に行いましょう。