まず法人と個人事業との違いを理解しておくことが大切だ。
事業形態は、大きく「法人」と「個人事業」とに分かれる。
平成18年5月1日に施行された会社法で資本金の規制が撤廃されたため、資本金が1円でも会社が設立できるようになった。しかし、1円では会社は作れない。設立そのものでどうしても発生する費用がある。それでも、設立の敷居はずいぶんと下がったことは事実だ。
個人事業と法人の違い、メリット・デメリットを考える場合、大きく「開業手続き」「社会的信用度」「納める税金」「社会保険制度」という4つの視点で捉えると理解がしやすい。
(1)開業手続き上での個人と法人のメリット、デメリット
個人:メリット…税務署への開業届のみ(特別な手続きは不要)
法人:デメリット…定款作成、認証、法務局への登記申請および税務署等への法人設立届等の手続きが必要
(2)社会的信用度のメリット、デメリット
法人:メリット…財務諸表をはじめとして、会社の経営状況をおしはかる指標があり、また会社法など法律の規制を受けることになる。そのため、個人事業に比べて法人のほうが社会的信用度は相対的に高いとされている。また金融機関からの融資や上場会社との取引という点でも、法人の方が有利に働く事が多いのが日本社会の現状である。
個人:デメリット…財務諸表等の公開義務や資本金といった概念がなく、一般的には社会的信用度を図る指標がない。そのため、法人に比べて個人事業の社会的信用度は相対的に低いとされている。
(3)税金面でのメリット、デメリット
下記のように、納める税金が異なる。
法人:メリット…法人税はさまざまな優遇政策もあり節税もしやすい。損をした場合は繰り越せる制度もある。
個人:デメリット…個人の所得税は累進課税であり、収入にもよるが法人税に比べて高くなる傾向にある。
(4)社会保険制度でのメリット、デメリット
個人:メリット…国民年金と国民健康保険に加入することになる。実質的にはこちらのほうが負担が少ない。
法人:デメリット…代表取締役や役員は、法人に使用されるものとして社会保険(厚生年金、健康保険)に加入することになる。
尚、国民年金は全国一律定額保険料であるのに対して、社会保険は会社からの報酬に応じて保険料が変わる仕組みになっている。
このようにメリット・デメリットが一長一短あり、一概にどちらが得で損とは言えない。強いて言えば、事業を大きくスタートさせようとすれば、社会的信用もあり税金面でのメリットが大きい法人ではじめるほうがメリットが大きく、まずは一人が生活できるレベルは十分といったスモールビジネスであれば、個人事業主からスタートしたほうがメリットがあるだろう。