投資家にも、さまざまな種類がある。ここではそれぞれの投資家向けに事業計画書をアレンジする方法を説明する。
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個人投資家向け
まず思い浮かぶ投資家としては、個人投資家(エンジェルとも呼ばれる)が挙げられるだろう。この個人投資家は、ベンチャーキャピタルなどの法人投資よりも一般的に投資金額は少額となる。しかし形式よりも経営者の人物や事業に対する想いに共感して投資を受けられることや、投資した後も良いアドバイザーともなってくれる場合が多いので、金額以上の価値があるだろう。
個人投資家の場合、投資の判断は個人の価値観によってさまざまだ。そのため示すべきポイントも、その相手に合わせて変える必要がある。その個人投資家が、今何に興味を持っているのか。そうした情報をあらかじめリサーチしておき、その興味のポイントに合わせて自分の事業を説明するわけである。
例えば、ある特定の業界に対して徹底投資をしているような投資家がいるとしよう。市場環境の説明の中でそのポイントをきちんと書き込んでおくことはもちろん、興味を持っている業界においてこれから始める事業がどれだけ有望なのかを、競合優位性のページで強くアピールするといった工夫を行う。
個人投資家は判断の早い方が多いので、いきなり数十ページもあるような事業計画を一からゆっくり説明できるような機会はあまりない。そのため短時間の間に、自分がこれから手がける事業がどれだけ世の役に立ち、大きく成長できるのか。そしてその結果、投資家の方々にもどんなメリットもたらすことができるのかを分かりやすく、かつ具体的に伝える必要がある。
そのためには、「サマリーシート」が鍵を握ることとなる。サマリーシート1枚で、このような自分の伝えたいすべてのことが端的に説明できるようにブラッシュアップしておこう。尚、個人投資家はお年を召されている場合もあるので、その場合には資料の文字フォントをより見やすいよう変えることを忘れずに行いたい。
また逆転の発想だが、投資家個人に合わせた事業計画書を作成するよりも、自分の事業に合った個人投資家を探す方が近道という場合もある。投資の可否は個人投資家の判断によるので、決められた審査期間もなく、その場で返答をもらうこともあり得るのだ。
ベンチャーキャピタル向け
次に、ベンチャーキャピタルについて説明しよう。
ベンチャーキャピタルは会社に資金を投資して、「株式公開」「事業売却」等による資金回収を行っている。多くの場合はベンチャーキャピタル自身もさまざまな方法で資金を集め、その資金をもとに投資しているのだ。そのため、資金の回収方法や投資期間、保証等を調整する必要がある。
またベンチャーキャピタルの場合、ある特定分野に特化した投資を行っているところも多い。例えば「情報産業」「医療・介護」「輸出業」「海外とのジョイント」など、条件に沿っていなければならない場合もある。
まず必要なことは、これから事業計画を説明する相手がどのようなことに興味を持っていて、また彼らの投資条件に自分の事業が合致しているのかをリサーチすることだ。この点は個人投資家と共通のことだが、ベンチャーキャピタルの方が法人としてルールに基づいた投資を行っている場合が多いため、特に相手の条件に合わせて提案するということが大切になる。
ベンチャーキャピタルの場合、市場の潜在規模やビジネスモデル・新規性と言った「会社の将来性」や「収益性」を重視している。また経営者の実績や素質、リーダーシップなども重要になってくるだろう。財務計画も重要だが、銀行などと比べれば財務計画の重要度はそれほど高くない。銀行は貸したお金がきちんと戻ってくることに一番感心を持つが、ベンチャーキャピタルは投資した会社のうち数社が大きく成長し、大きなリターンを得ることが目的になっている。そのため、事業の将来性の方がより重要な要素となるのだ。
ベンチャーキャピタルでは、企業規模と投資金額に応じて一部の資金を代表(社長)への融資として提案するケースもある。これは会社の資本金が少なく、投資金額を全額受け入れることでベンチャーキャピタルの持つ株式比率が高くなり過ぎる場合に見受けられることだ。一般的にベンチャーキャピタルは、株式の30%超~50%前後の株式比率で話し合いをされるケースが多いようである。
個人投資家もベンチャーキャピタルも、「投資」に値するかどうかの判断は、事業計画書の内容とそれを説明する社長の様子で行っている。相手が求めている内容を事業計画にきちんと盛り込み、分かりやすく伝えることが大切なのである。
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