決算・納税には、貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書、株主資本等変動計算書が必要だ。これらの書類は、総じて「財務諸表」と呼ばれている。また会社によっては、個別財務諸表だけでなく連結財務諸表を作成することもある。この中で経営者にとって重要なのは、損益計算書と貸借対照表だ。この2つの読み方と使い方をマスターできれば、合格といえるだろう。
決算日時点での資産や負債、資本金などが網羅されているのが貸借対照表。資産や負債は流動性の高いものから区分表示され、無形資産も金額で表している。また資本が負債の下に表示されるが、この資本には元手となった資本金をはじめ、これまでに生み出された利益も表示されている。
車を例にして、資産に触れてみよう。
購入したての車はピカピカで、転売しようとすれば購入時とあまり変わらない価格で売ることができる。しかし2年・3年と時間が経過した後では、思った以上の低価でしか売ることができない。このように価値が減少する資産は、その減価分を経費としてその期の収入に対応させて適正な損益を表示し、妥当な価格を貸借対照表に表示することで適正な企業の体力が分かるようになるのだ。
損益計算書は、一会計期間の利益がどのように生み出されたかが分かるように作成されている。売上を生み出すために直接かかる原価や売上の有無に関係なく、毎月かかる費用などを区分表示しているのだ。さらに予期せぬ大規模な損失の金額を分けて表示することで、大きな利益や損失の発生原因が判明しやすくなる。
売上を見てみると、原価に利益がのせられていることがわかる。売上が伸びると原価も比例して伸びるが、その差額が「売上総利益」と呼ばれる利益である。これは「粗利」とも呼ばれる。
ところで、全く売上がなくても支払わなければならない経費があるのをご存じだろうか。そうした固定費を払って余りあるだけの売上総利益を毎月生み出していくことが、経営には大切なこととなる。その為に、損益計算書はとても役に立つ資料なのだ。
貸借対照表と損益計画書だけではお金の流れが見えにくいという問題がある。キャッシュフロー計算書は、手元の現預金・現金同等物が会計期間中にどのようにして生み出されたのかが分かる計算書である。一定期間のお金の流れを項目分けして表示しているので、利益があがっているのにお金がないというような場合は原因が見えてくる。この計算書には種類があり、直接法と間接法とで計算の仕方や表示が全く異なることを覚えておきたい。このキャッシュフロー計算書を読めば、どの項目がキャッシュを生み出したのかが一目瞭然だ。
株主資本等計算書は、資本金とこれまでの儲けの中身が会計期間中にどう変化したのかが分かるものとなっている。外部の株主の立場で見たときには有用な情報を得られるが、オーナー経営者にとってそれほど重要性は高くない。
財務諸表は決算書と呼ばれることも多い。法人税や所得税の確定申告書に添付しているし、銀行借入の際にもコピーを提出することとなる。例は少ないものの株式会社の場合は公告という手続で公表したり、場合によっては閲覧を求められることもありえる。そのため、会社にとってはとても重要な書類なのだ。
また調査会社のデータベースに登録する必要が生じることもあるため、大赤字になってしまえば恥ずかしいだけでは済まない。取引を継続してもらえなくなったり、銀行でお金を借りられなくなるなどの具体的なデメリットも出てくるのだ。
逆に利益が出過ぎれば税金をたくさん徴収されるので、財務諸表についての知識を活用し、会社が目標としている利益へ到達させることが経営者の腕の見せ所といえる。