手元に豊富な現預金を持ち合わせていると、安心である。次月以降に引き落とされる経費や支払手形の不渡りといった心配度も低く余裕ができるし、運転資金の調達にも苦労しないだろう。
中には従業員のボーナス支給や税金の支払いのために、銀行に借入をするといった会社も少なくない。この資金繰りを毎月上手に行うためにも、現金を出来るだけ多く残したいと思う経営者は多いだろう。
手元に残る現金がどのように生まれ、使われ、また残るのか。この一連の流れを把握することが重要であり、明日の利益へと繋がる。
現金を手元に残すためには、まず商品やサービスの「利益率」を上げることが方法として挙げられるだろう。いくら多くのラインナップを揃えても、利益率が低ければ現金は残らない。顧客目線で「必要」「売れる」ものを考える工夫だ。ただし単純に単価を上げたのでは、費用対効果を見て「売れない」商品になってしまう場合もある。コストを抑え、顧客から見て適正(売れる)価格で提供することと、きちんと顧客に商品やサービスの価値を伝える努力が利益アップに重要なのだ。
また当然のことながら、無駄な支出を控えることも重要である。
例えば海外視察や競合他社製品の購入、研究などに関わるような経費は将来への投資でもあるので、必要なものとして削減はしたくない。しかし社用携帯電話が私用でも利用されていたり、あるいは時間潰しに入ったカフェの飲食代が青天井で経費として挙げられていたり。こうした事態は、野放しにはしておけない。あくまで経費とは、次の利益に繋がるものでなければならないのだ。
経費の一つ一つに注視し、どの経費がどれだけ売上に貢献しているか、どの経費に無駄が生じているかを考えるべきだろう。こうした現状把握のためにも、会計業務を怠ることはできない。早期に現状を知り、健全かどうかの判断や次月経営目標の達成・予算管理などへ目を向けたいものである。それが結果として、節税対策にも結び付く。最終利益を押し下げる性質を持つ税金は、低めに抑えるに越したことはないのだ。
出ていく現金を抑え、入ってくる現金を増やすことを考えれば、自然と現金は残っていく。素直に考えれば売上を現金回収とし、仕入先への買掛金は先延ばしするといった直接的な方法もある。つまり「出を後にして、入りを早くする」のだ。
取引の都合上どうしても売掛金が発生するのであれば、取引条件を交渉して、できるだけ早期に回収するようにする。商品やサービスの魅力をきちんと伝えることによって、先払いで「前受金」としてお金をもらうことも可能だ。買掛金や未払金についてもきちんと交渉して可能な限り支払を伸ばして行くことも重要だ。細かい経費の支払いについても、従業員にクレジットカードを使って立て替えてもらうことも可能だ。細かいことかも知れないが、こうした積み重ねで会社の現金が増えていくのだ。そして、そのお金を使って、より顧客のために高い価値を提供してほしい。