売上原価とは、当期売り上げた商品価格(売上)に直接必要な商品仕入等の原価部分である。商品10個を1個当たり105円で仕入れ、8個が1個につき157円で売れたとすると、この時の粗利は8個×52円、売上原価は8個×105円になる。売れ残った2個分の原価は売上原価から除かれて、貸借対照表に商品として計上され、翌期以降に繰り越されることになる。
製造業などでは、売上原価算出の前に製造原価が問題になる。
製品の製造にかかる原価は原材料や人件費等の労務費、製造諸経費であり、それを出来上がった製品と製造途中の製品に合理的に負担させることで、製品の原価を計算する。今月出来た製品を構成している材料・人件費等を製造原価といい、売上原価の一部を構成しているのだ。
1個の製品を製造するのに、以下の経費が掛かったとしよう。
・材料費:57円
・人件費:80円
・光熱費等:31円
・その他諸経費:57円
するとその合計は、225円になる。
製品は1個225円で出来上がるので、製品が10個できると製造原価は10個×225円だ。そのうち8個を1個あたり315円で売上げたとすると、この時の粗利は8個×90円、売上原価は8個×225円となる。売れ残った2個分は売上原価から除かれ、貸借対照表に計上されることになる。
豊富な種類の商品を並べると、選択の幅が増えるので客の目を惹き売りやすくなる。しかし増える商品の種類毎に、利益率は違ってくるだろう。付加価値のある商品を産み出し、粗利を増やす工夫は重要だ。なぜなら事務所諸経費等の固定費や材料費などの変動費といった費用をカバーして、余りある利益が必要だからだ。利益がゼロとなる時点の売上高を「損益分岐点」というが、最低でも損益分岐点を超える売り上げが見込めなければ会社は立ち行かない。
損益分岐点を知ると、どれだけ売上なければならないかが分かる。そのためにも、売上原価をきちんと把握することは重要なのだ。新規顧客開拓のコストは非常に高いことが知られているが、一度取引が開始した顧客との取引を増やすことは比較的容易であることが多い。たとえ粗利が低くても継続的に売れていくため顧客を集めやすい商品(フロントエンド)、あまり多くは売れないが一度売れると非常に高い利益が見込める商品(バックエンド)を組み合わせるなど、自社が取り扱う商品の売上原価を正確に把握することで、戦略的な経営に活かすことも可能だ。
継続して商品売買を行うと、前月に仕入れた商品の余りから順番に売上げていくことが多くなる。しかし新しく仕入れも行うため、当月末にもやはり商品の在庫が出る。一般的には、「当月初在庫+当月仕入-当月末在庫=当月売上原価」となる。
この当月初残、当月経費、当月末残の構図は、製造原価でも同じである。原材料や労務費、製造諸経費に「月初残+当月投入-月末残」の考え方があり、最終的に完成した製品と製造途中の製品(仕掛品)に振り分けて製造原価を算出する。製造原価の算出は煩雑だが、製造原価計算ソフトが販売されているので大いに活用したい。