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課題・悩み
たまねぎ農家として20年働いてきました。今後も安定して農業に取り組むために、収益を強化したいと考えています。
現在、顧客にはスーパーや食品メーカーなどがいます。一方で、個人的に農作物を求めに来る人がいない状況です。
大口の契約がある一方で、個人の消費者からのニーズが少なく、自分の農作物にブランド性が無いなと感じております。
ブランド力向上、個人消費者からのニーズ増大のためにどのような商品開発・販路拡大・営業戦略があるのかアドバイスをいただきたいです。
回答:自身の農作物を活用した商品開発、飲食店で使ってもらう、直売所を設けるなどが考えられます。
早坂 徳敏(はやさか のりとし)/ 北海道の認定支援機関:ヒルトップファンディングG=合同会社事業計画+6次化BASE
北海道で活躍する早坂アドバイザーは銀行で融資担当をしていた経験から起業家の融資と資金調達をプロデュースしています。北海道で資金調達に困ったらぜひ早坂アドバイザーへ。
消費者から求められる商品開発、販路拡大、営業戦略、これらは御社に限らず企業にとって永遠のテーマと考えています、また、これら解決できますよと世に情報が溢れすぎている割には本物の成功事例に接することは少ないという印象です。
先ずは御社がどのような規模であるかがポイントです、
(1)数十トンから数百トンを栽培する規模
(2)数万トンを栽培する規模
(2)であれば不慣れな商品開発などはせず、得意の生産に特化し周りの生産者減少を粘り強く待ち最終的に青果物市場を占拠するという事も選択肢の一つだと思います。
(1)の生産者が絶対的な売上が限られるため付加価値をつける商品開発をして販路拡大の動きをするケースが多いですよね。
【より多くの方に、自社で生産している農作物を食べていただきファンを増やすことで、消費者から求められる強い経営体】
ファンを増やすのは一般消費者向けの展開をしていない会社にとって中々難しい課題です、自社を知ってもらう、自社の農作物を知ってもらう為の飛び道具はなく地道な発信の結果知名度が上がり指名買い等のファンが増えている、そんな企業や生産者がほとんどだとは思います。
そんな中ですが一般消費者向けの商売ではないが、自社のブランディングや告知にはTVCMも未だに有効と言えます、
最近面白いと思ったのは、ニデックです。この社名を聞いてピンとくる人はまだ少ないと思うのですが、CM→https://www.nidec.com/jp/
特に名前覚えてね編があまりに直球すぎて印象に残ります。日本電産(旧社名)などの世界的企業ですら、社名変更をTVCMも活用し告知をしています。
同じようなCM告知で北海道のイチネンホールディングスなどがあります。https://www.facebook.com/watch/?v=3856047737817675
こちらも会社も業歴は長い優良企業の様ですが、ブランディングや一般消費者への浸透にいろいろ苦労をされているのだなと感じます。SNS全盛の時代とは言え、短期間で効果を出すにはまだまだ従来メディアでの展開は無視できないものがあります。
ですが、これらCM展開は相応の費用も掛かるので通常以上の費用対効果の検証が必要です。
知名度を上げる、ファンを増やす事に取組む生産者の行動としては以下のようなものがあります。
(3)自身の農作物を使った商品開発、販売
(4)自身の農作物を使ったメニュー提供する飲食店へ卸す
(5)自分で直売所を運営する
(3)では、北海道由仁町の(くにをの鮭キムチ)という奇跡的な事例があります。元SMAPの中居正広氏のTV番組で氏が本当においしそうに食べてベタ褒めした翌日から、自社販売サイトと自社販売所で売り切れ状態がしばらく続き、供給体制が整った現在ではアンテナショップや百貨店の売り場の一等地が当たり前となっています。この様なことがあるのでやらないよりやったほうが絶対良いのですが、極めてまれであり商品は比較的容易に開発できますが、実際は倉庫に売れないトマトジュースがたくさん残っているという事例が少なくありません。
実際に商品開発に取り組む場合は、以下サイトにあるランキングが役に立つと思われます。ぜひ、参考にしてみてください。
https://hokkaido-hyakka.com/event/dosankoplaza-ranking2021/
(4)この展開は、自社のブランディングやファンを増やすにはあまり適さず、思ったほどの成果を得られない印象です。
有名飲食店や有名料理人が自社の農作物を使ってメニューを提供しても、それはその方たちのブランディングであり、生産者としては他人依存にしかなりません。実際に質問者様の経験から○○の農作物を使っているメニューから、その農作物の生産者のファンに繋がるケースは実際にどの程度あるでしょうか?一度考えてみることをおすすめします。
(3)と(5)そして(1)の事例として、かなり認知度の高い同じ北海道の白老町ウエムラ牧場の取組みです。こちらは牛ですが参考になると思います。
社長より今までの歩みをお聞きする機会がありました。最初に開発したジャーキーはただひたすら売上を少しでも上げるために必死で開発したところ、口コミで評判になった。次に開発したハンバーグは他より美味しいことを一番に求めるのではなく、自社の思いの詰まった大切な肉を食べて欲しいとの思いで開発しました。その思いに消費者が反応し、一気に人気商品になりました。そのハンバーグを牧場売店に買いに来るお客から「折角だからその場で食べたい」という要望に応えて簡単なイートイン的スペースを作ったのがきっかけになり、今では数店舗出店しています。売上を上げたい、他と比べることなくこれがウエムラの肉だという信念の商品化が今のブランディングにつながったとの事、現在白老牛のウエムラとは表示せず、ウエムラ牧場・白老牛としています。
生産者のファン作りは、その肉や商品を直接提供する場を持ち、地道に継続をする。そうすればだんだん生産者にファンが付く可能性が高まると感じています。
ただ、やみくもに店舗を出せば良いという訳ではないので、
- あえて生産に特化する農家が何処までの規模感でファンを増やしたいのか
- それは全売上のどの程度のシェアにしたいのか
- 設定したその売上やシェアの数値が自社に良い効果をもたらすのか
など十分に検討の上新事業展開を勧めて行けば良いと考えています。ただ、考えてばかりだと日が暮れてしまいますので、こんなに手を掛けて生産したうちの農作物を食べてもらいたい、そんなシンプルな思いを消費者にぶつける、そんなところに案外突破口があるのかもしれません。
生産者さんがファンづくりに成功した事例に共通することは、「想い、直接提供できる場、愚直に継続をする」この3つの要素が含まれていると思っています。
最後になりますが、御社のファンづくりが望ましい結果になることを祈念しております。