起業・経営FAQ:書籍から引用したものをビジネスで使用する際、対価を支払わなければなりませんか?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

課題・悩み

予備校にて世界史の講師として働いています。

授業で配布するプリントに新聞・雑誌の記事などを引用するのですが、この場合、その引用をした書籍の出版社、著者、に対して、何割か利益の分配、承諾などを得る必要があるのでしょうか?

回答:4つの条件を踏まえて引用した場合、承諾を得る必要はありません。

この質問への回答者

梅田 明彦(うめだ あきひこ) / 東京都 / シグマ国際特許事務所
大手商社でご経験を積まれた後に弁理士として独立された梅田アドバイザー。物静かな雰囲気をお持ちですが時折見せる笑顔が非常に素敵なアドバイザーです。知識と経験が豊富ですので知的財産や知的資産に関する事は梅田アドバイザーにご相談ください。

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著作物を書籍として、書籍から引用する場合について、一般的なお話しをさせて頂きます。

著作権は財産権ですから、著作物(書籍)を他人が複製したり、翻訳したり、変形させたりする場合には、その著作権者(著作物の創作者又は創作者から著作権を譲り受けた者)から許可・承諾を受けなければなりません。そのとき、著作権者から使用料(対価)を請求されることもあります。

しかし、著作権は、その使い方によって自由に利用できる場合があります。勿論、その場合に使用料を支払う必要はありませんし、一々著作権者の承諾を得る必要もありません。そのように自由に利用できる場合の一つが”引用”(著作権法第32条第1項)です。

但し、世間一般に引用と言われている使い方と、著作権法での引用とは、少し違います。著作権法の条文や裁判所の判決文は難しいので、できるだけ分かるように説明してみます。 著作権法での”引用”というためには、次の4つの条件を全部クリアしていなければなりません。

(1) “引用”した著作物が既に公表されていること。

今回のご相談は、著作物が書籍ですから、既に公表されていることは間違いないと思います。

(2) 文書全体を見たとき、自分の書いた部分と引用した部分とを明確に区別でき、かつ自分の書いた部分が主な部分(主体)で、それに対して、引用した部分が補足的であること。

引用を踏まえた上で自身の見解等を記載している場合、ご自身の文章が主体になると推測されます。また、引用した部分は、例えばかぎ括弧でくくることによって、簡単に区別できます。

(3) 自分の文書全体の構成から、著作物の引用が必然であること。

質問者様が”引用”されるのは、世界史の授業をするに当たって、書籍等からの”引用”が、ご自身の書かれる内容を補って効果的になるような場合だと思われます。この点は、一般的な基準が無く、説明しにくいのですが、引用の目的や業界の慣習によって判断されるので、予備校業界では一般にどのような引用の仕方をされているのかを参考にされては如何でしょうか。

(4) “引用”した著作物の出所を表示すること。

新聞や雑誌などで、括弧書きで書籍名、著者名、発行者名、発行年などが書かれたものをご覧になったことがあると思います。これも、どこまで書けばOKという明確な基準は無く、社会通念上普通に使われている形で記載することになります。

以上4つの条件を読まれて、これまでに質問者様が書かれてきたものはいかがでしょうか。

(4)出所表示が抜けているケースが多いので注意してください。

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