起業・経営FAQ:屋号に関する、知的財産権やパブリシティ権についてアドバイスお願いします。

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

課題・悩み

パン屋を開業しようと考えています。そこで屋号に関する、知的財産権やパブリシティ権について知りたい事がありますので、以下質問にご回答お願いします。

  • 屋号を例えば、ドイツ語で「パン」という意味の「Brot(ブロート)」という名称にする場合ですが、意味が「パン」で普通名称になるため商標登録できないという認識なのですが、間違いないですか?
  • 商標登録不可な名称でも、デザイナーが創作したデザイン文字のロゴや、識別力を有する絵などを含んだロゴにすれば商標登録される可能性があるのでしょうか。
  • もし、商標登録をせずに使用している屋号が有名人のグループ名や芸名などと同じ名称だと、パブリシティ権の侵害になり、漫画、本、ドラマ、歌のタイトルやキャラクター名などと同じだと著作権侵害になるのでしょうか。

ご回答の程よろしくお願いいたします。

回答:屋号のデザイン文字のデザイン性が高い場合、商標登録される可能性があります。

この質問への回答者

梅田 明彦(うめだ あきひこ) / シグマ国際特許事務所
大手商社でご経験を積まれた後に弁理士として独立された梅田アドバイザー。物静かな雰囲気をお持ちですが時折見せる笑顔が非常に素敵なアドバイザーです。知識と経験が豊富ですので知的財産や知的資産に関する事は梅田アドバイザーにご相談ください。

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  • 先ず最初のご質問ですが、ご認識のとおりです。

「ブロート」をGoogleで検索すると、約643,000件がヒットし、その多くは、パンに関連するビジネスや商品・サービスで、ドイツ語のBrot(パン)の意味で使われていました。この実情から、「ブロート」及び「Brot」という単語は、パンに関連する業界で普通に又は慣用的に使われていると考えられます。

このような単語を特定の個人や企業に独占使用させれば、業界の他の人は皆困ってしまいますから、「ブロート」又は「Brot」という単語だけの商標登録は、特許庁に認められないと考えられます。

  • このような単語をデザイン文字で表したり、絵などのデザインと一緒に表したりすれば、商標登録できるのではないか、というのが2つ目のご質問かと思います。

一般的には、「ある単語」と別の単語や言葉、図形(例えば、絵)などを結合させて、新しい言葉や表現を創り出したり、新しい意味合いを持たせたりした商標は、それを「ある単語」と比較したときに「ある単語」とは違うものだと、一般消費者が簡単に区別して認識できる場合に、「識別力」があると言います。

ところが、デザイン文字で表した商標の場合、デザイン化されたフォントでも、誰でも読める程度であれば、称呼(読み)は同一なので、普通のフォント(例えば、明朝体)で表した商標に類似すると判断されます。従って、商標登録される可能性は低いです。デザイン文字のデザイン性が高い場合、商標登録される可能性は高くなりますが、その判断はケースバイケースになります。

そこで、「ブロート」又は「Brot」という単語を使っていながら商標登録されているものが何件あるのか、特許庁のデータベースを調べてみました。その結果、「ブロート」又は「Brot」だけで商標登録されているものは、見受けられませんでした。一方、「ブロート」又は「Brot」の単語に別の単語や文字列、図形などを組み合わせて商標登録されているものは、数件ありました。従って、ご質問への回答としては、商標登録される可能性はありますが、その可能性の大小は実際の商標によって違うので、あくまでケースバイケースと考えて下さい。

  • 最後のご質問については、場合分けをした方が分かりやすいと思います。

その前に、パブリシティ権とは何か、を確認しておきましょう。著作権が著作権法ではっきりと定義されているのに対し、パブリシティ権は、法律で定義されていません。パブリシティ権は、裁判の中で、民法の不法行為や不当利得、商標法や不正競争防止法などの解釈から生まれた財産権です。その基本的な考え方は、ある者(実在の個人やグループなど)が創り出したパブリシティの価値(顧客を吸引する機能、顧客に購買行動を起こさせる力)を、第三者が営利目的で利用するには、「ある者」の許諾を得なければならないし、報酬を支払わなければならず、無断使用は禁止される、というものです。

  • 有名人のグループ名、芸名と同じ名称

その有名人から許諾を得ないで使用すれば、パブリシティ権を侵害する不法行為となります。もちろん、本人以外の第三者は、商標登録もできません。

  • 漫画、本、ドラマ、歌のタイトルと同じ名称

法律的な一般論として、漫画、本、ドラマ、歌のタイトルそれ自体に、著作権は生じません。従って、漫画等のタイトルと同じ名称を使用しても、著作権侵害にはなりません。しかし、漫画等のタイトルが著名な場合には、不正競争防止法に基づいて、漫画等の権利者から使用許諾を得ていると誤認混同させる虞があるとして、訴えられる可能性があります。

  • キャラクター名と同じ名称

キャラクターという言葉は、実際広い範囲の意味合いで使用されています。ここでは、漫画やアニメーション、映画、小説、テレビドラマ等に登場する架空の人物や動物、シンボル等の名前をキャラクター名と言うことにします。キャラクター名も、漫画等のタイトルと同様に、著作権は生じません。従って、キャラクター名と同じ名称を使用しても、著作権侵害にはなりません。

しかし、キャラクター名が著名な場合には、上記で説明したように、不正競争防止法に基づいて、キャラクター名の権利者から使用許諾を得ていると誤認混同させる虞があるとして、訴えられる可能性があります。

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