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課題・悩み
以下のケースの場合「著作権違反にならず、引用の範囲としてみなせるか?」についてご相談させてください。
<質問内容>
仕事柄、セミナー・講演を担当することが多いです。その際、他社HPや他社が作ってYouTubeに公開している動画を、「事例」としてセミナー中にスライドにうつし、「例えば、〇〇の会社のこちらのHPは△△の仕掛けを取り入れていて、興味喚起が促されますよね。皆さんにとって参考になるのではないでしょうか」のように説明をすることがあります。
セミナー参加者への配布資料には掲載しません。あくまでスライドに映すのみですこの場合、他社のHPやYouTube動画を活用して少し解説することは著作権違反など、何かしら法に反することになるのでしょうか?
<私としては引用の範囲、ということにしたい>
1時間のセミナー内で、事例として他社サイトをスライドに映して開設する時間は2分程度と短いため、「引用の範囲」ではないのかなと素人ながら思っています。
<引用の範囲としてすませたいと考える理由>
本来は、セミナー中に事例として紹介させていただくHPや動画の著作権者である各社に、事前にセミナーで御社の動画やHPを紹介してもよいかと、聞くのがベストなのですが、ただ、この確認作業を行ってしまうと各社は、特に大手企業、色々なリスクや、社内確認しなきゃいけないといった余計な作業が発生することを嫌がってなのか、大抵は「ダメです」と、一律断ってくるという現状があります。そのため、今後は、あくまで他社HPや他社動画をセミナー中に1~2分ほど紹介することは「引用の範囲=法律違反していない」ということで、各社への確認は行わない方向にしたいと考えています。「引用の範囲」として各社に確認作業を行わずに、セミナー中に事例紹介として他社HPや動画を1~2分ほど活用することは、可能でしょうか。
回答:引用の範囲になると考えられる。
ご質問の引用については、著作権法における重要論点であり、さまざまな議論がなされており、裁判例も多数あります。また、質問者様のほうの利用形態も、多くのセミナーや講演をなさっていると思いますので、そのすべてについてOKかどうかを申し上げるのはなかなか難しくありますが、少なくとも、ご質問頂いた範囲の利用であれば、著作権法において許される引用であると思います。
引用の要件は、一般的には、次のとおり整理されています。
- すでに公表されている著作物であること
- 「公正な慣行」に合致すること。何をもって「公正な慣行」というかですが、カギ括弧などにより「引用部分」が明確になっていること、引用の「必然性」があること、などが基準になるといわれています
- 報道、批評、研究などの引用の目的上「正当な範囲内」であること何をもって「正当な範囲内」というかですが、引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であること、引用される分量が必要最小限度の範囲内であること、などといわれています
- 「出所の明示」があることそして、今回のご質問については、まず、他社HPやYouTubeで公開されている動画を使うとのことですので、
当然、①の要件は満たします。実務上問題になり易いのは、②③の要件ですが、「1時間のセミナー内で、事例として他社サイトをスライドに映して少し解説するのは、わずか2分程度」とのことですので、②や③も満たすだろうと思います。また、④についても、説明の際に、「〇〇の会社のこちらのHPは△△の仕掛けを取り入れていて、興味喚起が促されますよね」、「こちらの動画は、すごく面白くて参考になります」のように説明されるとのことですので、出所も明らかにされていると思います。
このように考えると、ご質問のケースでは、引用として許されるだろうと考えます。