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課題・悩み
現在の勤務先を退社し、自分の会社を立ち上げたいと考えています。
退社から会社設立までの期間に、失業保険や再就職手当の申請することは可能でしょうか?
回答:求職活動と並行して創業の準備・検討をする場合は、申請できます。給付までに期間があるので、会社設立のタイミングを熟考しましょう。
服部 純子(はっとり じゅんこ) /服部純子税理士事務所
どんな相談にも明るく接してくれるフットワークの軽さに、若い経営者から支持を集める税理士の方です。じっくり時間をかけてアドバイスをくれる姿勢が、人気の秘密です!!
まずは失業保険についてです。
求職活動と並行して創業の準備・検討をする場合は、失業保険の受給対象となります。
雇用保険説明会と初回講習を終え、約4週間ごとにある認定日に求職活動の実績を報告し、失業状態であることの認定を受ける必要があります。離職票の提出後、離職者全員が必ず受講する「初回講習」も求職活動の実績として報告することができます。
ただし、以下の場合は受給できませんので、ご注意ください。
- 求職活動をせずに、創業の準備・検討をする場合
- 創業の準備・検討期間が終了したとみなされる場合(開業届の提出、会社の設立、事務所の賃貸契約書の締結など)
- 会社の役員などに就任した場合(名義だけの役員も含む)
自己都合の退職の場合は3か月の給付制限期間が設けられます。最初の給付金が振り込まれるのは、離職票の提出から約4か月後になります。
会社都合の退職であれば、最初の給付金が振り込まれるのは離職票の提出から約1か月後です。 失業保険を最後まで受給するためにかかる期間は、自己都合退職の場合で離職票を提出後約7ヶ月~9ヶ月、会社都合退職の場合で約4ヶ月~12ヶ月となります。
失業保険を受給するためには、退職した会社から「離職票」を受けとり、これを居住地のハローワークに提出する必要があります。求職活動を同時に進めていることが大前提とはなるのですが、この失業保険をもらいきるまで時間をかけて創業準備をすれば、全額を受給できます。
失業保険をもらえるかどうかは別にして、申請書類だけでも提出しておきましょう。起業はすべて計算通りにいくわけではありません。起業準備中に何が起きても対処できるように、手続きは怠らないようにしましょう。
つぎに、再就職手当についてです。
再就職手当とは、失業保険を受給する資格がある方が離職票の提出後約1ヶ月半以降に創業や再就職をした場合に支給される手当です。支給される金額は、90日や150日の失業保険を受給できる全日数のうち、まだ受給していない日数分の70%もしくは60%ぶんを、一時金として受け取ることができます。
ただし、創業や再就職の予定日の前日時点で、まだ受給していない給付日数が、失業保険を受給できる全日数の3分の1以上残っている必要があります。
退職後すぐに創業するなら受給資格はありませんが、自己都合退職の場合は離職票の提出後約1ヶ月半以降、会社都合退職の場合は離職票の提出後約7日以降の創業であれば、失業保険を全額もらうことができなくても、再就職手当を受給できるケースがあります。再就職手当の支給を受けるためにも、会社設立のタイミングを熟考しましょう。
なお、不正受給には厳しい処分がありますので、適正にご申告ください。
- 不正な行為のあった日からは、特例一時金の支給を受ける権利がなくなり、一切の給付がおこなわれません。(支給停止)
- 不正な行為により支給を受けた金額は、全額返還しなければなりません。(返還命令)
- 悪質な場合(例えば、安定した職業についていながら申告しなかった場合など)には、不正な行為により支給を受けた額の2倍に相当する金額の納付が命ぜられます。(納付命令) この場合には、2.とあわせて、不正に受給した額の3倍の金額を納めなければならないこととなります。
- 不正に受給した日以後、全額を返還、納付し終えるまで、年率5%の延滞金が課されます。なお、それらの納付を怠ったときは、財産の差押え等が行われる場合があります。
- 特に悪質な場合は、警察等へ刑事告発され、詐欺罪などにより処罰されることがあります。
- 偽りの届出、報告または証明をすることにより不正受給をほう助または指示した事業主に対しても、不正受給者と連帯して返還及び納付が命じられます。