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課題・悩み
飲食店を開業したいと考えています。事業内容はある程度固まっており、必要な資金もある程度計算できています。
ただ、どのような金融機関から融資を受ければよいのか分かりません。なにかアドバイスが欲しいです。
回答
森 滋昭(もり しげあき) / 森公認会計士事務所
誠実な人柄とわかりやすい説明で、多くの起業家や中小企業の資金繰りや資金調達の支援をされている森アドバイザー。資金調達や資金繰りでお悩みの際にお勧めのアドバイザーです。
はじめに
最初に、起業をしたときに受けられる融資は、基本的に、
- 日本政策金融公庫(以下、公庫)
- 制度融資(市区町村などでの融資です)
の2つになります。
都市銀行や、地銀、信用金庫などでも、ベンチャー企業に融資することもゼロではありませんが、 現実的には、難しいために、公庫か制度融資を活用することになります。
この公庫と制度融資を比較すると、
公庫は、
- わかりやすい(制度融資と比べて)
- 融資手続きが簡単(1カ月程度)
制度融資は、
- 自治体により条件や手続きが異なり、わかりにくい
- 中小企業診断士との面談(指導)を受けるなど、時間がかかる
- 自治体による利子補給があり、利率が低い
といったメリット・デメリットがあります。
まずは、公庫の融資の方が“わかりやすい”ということもあり、 公庫の融資を中心に説明させていただきます。
新創業融資
日本政策金融公庫の新創業融資は、無担保・無保証ということで、大変使い勝手のいい制度ですが、
- 新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方
- 融資限度が、3,000万円(うち運転資金1,500万円)
- 総資金の1/10は、自己資金を用意する
- 勤務経験要件 (自己資金の要件を満たすものとする要件) (例えば、1000万円の融資を受ける場合、100万円の自己資金が必要になります)
といった条件があります。また、無担保無保証ということで、公庫にとってはリスクも大きいので、利率も高めになります。
これらの要件のうち「勤務経験要件(自己資金の要件を満たすものとする要件)」とは、公庫のHPに書かれているように、
「1.現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方で、次のいずれかに該当する方
(1)現在の企業に継続して6年以上お勤めの方
(2)現在の企業と同じ業種に通算して6年以上お勤めの方」
「2.産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」
といった要件が挙げられています。つまり、基本的には、これから起業する事業の経験があるか、ない場合は、市区町村などがおこなっている創業スクールを受けることが要件となっています。
新創業融資のポイント
新創業融資の要件を満たし、実際に申請した場合のポイントを、いくつかみていきます。
融資が得られるかは、
- 自己資金が十分にあるか
- 起業するビジネスの経験があるのか
- 事業計画できちんと返済できるようになっているか
といった点が見られます。融資担当者からすれば、一番大切なことは、貸した資金を回収できるかということです。
つまり、融資担当者にとっては、
- きちんと顧客を集めて売上を上げることができるか
- そしてきちんと返済してくれるか
ということです。そのため、これから行う事業で、質問者様が、お客様を見つけて売ることができるかどうか、質問者様の今の職業や経験から判断されます。
そして、事業計画書では、きちんと売上を上げることができる、という説明が大切です。また事業計画では、実際に融資したお金がどのように使われるか、というのもポイントになります。具体的には、設備資金であれば、見積書や請求書などが必要になります。運転資金であれば、事業計画書から、数カ月分の運転資金の金額がでてきます。
融資金額と自己資金額
ご自身で必要資金を計算していますが、事業計画書上も本当にそれだけ必要か検討されます。公庫も創業融資のプロですので、ビジネスによってどのくらいの資金が必要かはわかりますし、事業計画書からも、不必要に多い申請は見抜かれてしまいますので、ご注意ください。
また、自己資金は、形式的には1/10でいいとされていますが、公庫としては、自己資金が大きい方がビジネスをうまくいき、資金も返済されることから、実際には、自己資金が1/10だけでは融資は下りないと思われます。一般的には、自己資金で1/3程度は用意されています。
また、公庫は、通常、1000万円程度が融資の上限となっております。そのため、それ以上の金額については、
- 他の創業融資制度を利用する
- 親や友達などから借りる
のも一つの方法です。 なお、他の制度融資でも、事業計画書や自己資金などの基本的な考え方は、公庫と共通しています。