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課題・悩み
新規に社内ベンチャーとして運営事業・観光振興をする新会社を設立し、そこの代表に就任することになりました。主な業務は、地元行政から委託された宿泊施設の運営です。
現在の資本金は200万円です。設備投資と運転資金で合計4000万円の資金調達を検討中です。建築コスト等は行政の資金で賄うためかかりません。担保も保証人も必要ない日本政策金融公庫にて、新規開業資金や新創業融資制度を検討しています。
日本政策金融公庫での融資の実際の限度額や、地元の公庫や地域金融機関と連携した方がよいのかなどについて、アドバイスをお願いします。
回答:「資本性ローン」という制度がおすすめです。
上野 光夫(うえの みつお) / (株)エムエムコンサルティング
元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方にはうってつけのアドバイザーです。
4,000万円の資金調達で個人保証がないのであれば、やはり日本政策金融公庫が妥当です。県や市などの「制度融資」もありますが、保証協会付になるので、代表者の個人保証を求められます。
日本政策金融公庫の制度では、新規開業資金、新創業融資といった通常の制度ですと、実質2,000万円が上限です。
おすすめなのは、「資本性ローン」という制度です。4,000万円を個人保証なしで調達できる可能性があります。
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/57.html
この制度は、借入金が資本的な役割を果たす「劣後ローン」といわれるもので、元金は5年後とか、7年後とかに一括返済する形です。その間は利息のみを支払います。しかしその利率は、赤字だと1.0%、黒字だと3%以上とやや高くなる変わった設計になっています。ようするに、「元金の返済を先にするので、利益が出たら還元してくださいね」という趣旨の制度です。しかし、審査のハードルがかなり高いのが実態です。
私は以前、科学技術系のベンチャー企業のサポートをして、4,000万円の資本性ローンを実現しました。審査のハードルは高いですが、行政とのタイアップで地元観光にも効果のある事業なので、可能性は十分あります。
資本性ローンを申し込む場合、日本政策金融公庫へそのまま相談に行っても、話が進まない可能性があります。そこで、行政の担当者と一緒に行くような工夫が必要です。行政の計画と貴社の計画の全体像が分かる事業計画書を作成し、収支見通し、経済効果、地域貢献など、説得力のある資料を作成することも不可欠です。
資本性ローンは、支店ではなく本部での審査をパスする必要がありますので、アプローチ方法や資料の内容について、工夫することが重要です。
なお、社内ベンチャーということは、株主はお勤め先の会社でしょうか?
もし上場企業の子会社だとすれば、日本政策金融公庫の融資対象外になる可能性もあります。
いずれにしても、日本政策金融公庫への申請としてはレアなケースなので、しっかりとした準備と対策をとりましょう。