事業のスタート段階での役員報酬の支払い方法について

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

課題・悩み

知人3人で一般社団法人をつくりました。定款で理事長、副理事長、理事を定めましたが、営利業務の報酬の支払い方法について悩んでいます。

スタート段階で売り上げ規模が見込みにくいなかで、定期同額給与、事前確定届出給与、利益連動給与のどの方法を選択すればよいでしょうか?

 

回答:事業のスタート段階では、「定期同額給与」がおすすめです。

この質問への回答者

中田 哲也(なかた てつや) / 東京会計総合事務所 / 中田哲也税理士事務所
フットワークの軽さは、アドバイザーNo1。その人柄で、相談者の方には「何でも相談できる、頼れる兄貴分」との評判も高い。「専門家に相談するのは苦手…」という方。一度中田さんへご相談を!!

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おっしゃるように、税務上では①定期同額給与 ②事前確定届出給与 ③利益連動給与 に該当しないものは、損金(経費)にはできません。ひとつずつ説明します。

 

①定期同額給与

最初の理事会で個別に決定した報酬額を、毎月同じ金額で支払います。 賞与はなく、年収を12で割ったイメージです。

税務署へ届出はいりませんが、議事録は作成しておきましょう。税務調査で確認されます。 税務署への給与額の事前届出も必要ありません。ただ、給与などを支払うさいは「給与支払い事務所の開設届」は出しましょう。

 

②事前確定届出給与

賞与がほしい場合、事前に届出をして損金(経費)にできます。何月何日にいくら賞与があるのかを明記し、途中で減額などはできないという縛りがあり、初年度では使いづらい制度でもあります。 ある程度大きな会社で制度上使われているケースは見かけますが、まだ資金繰りが安定していない会社では使うのは危険です。

 

③利益連動型給与

こちらも②と同様、規模が大きめの会社での活用が多いです。まず報酬委員会を設置して、有価証券報告書に連動給与を開示する必要があります。かなりハードルは高いです。

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/11/19.htm

 

 

ハードルの低い順に①②③となっています。最初は①を選択するのがおすすめです。

①の定期同額給与を選んだ場合、財政上どうしても支払いがきびしいときは報酬を減額することも可能です。 https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/qa.pdf

上記は国税庁の減額理由です。客観的に財政状態が悪化していると認められることが要件なので、自由に上げたり下げたりはできません。

 

報酬を払える状態ではなくても、減額をせずに未払理事報酬で処理することも可能です。しかし未払理事報酬の額に対して税金が発生するので、まだもらってない報酬の税金を前払いすることになります。よって、報酬の支払いが厳しくなったら、減額することをおすすめします。

逆に、儲かったので報酬額を増額するというのもNGです。儲かった場合は法人税を払うことになるので、報酬を途中で上げられると法人税が減ってしまい、利益操作もできてしまうからです。 資金繰りが心配で、法人税の支払いに問題ながければ、報酬は低く抑えた方がよいでしょう。事業が儲かれば法人税は発生しますが、資金繰りで悩むこともありません。

事業がうまくいく可能性も十分あるので、はじめは予定どおり報酬を払い、財政状態が悪化したさいに報酬を減額する方法も検討できます。

初年度の報酬の決定はなかなか難しいですが、節税を考えるなら想定額で、資金繰りを考えるなら控えめにという感じで検討するとよいでしょう。

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