決算月について、3月と12月の会社が多いようですが、いつにしたら良いですか?

この記事は2020/01/30に専門家 李 顕史 佐々木 美佳 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

Q.決算月について、3月と12月の会社が多いようですが、何月にしたら良いですか?

決算月について、3月と12月の会社が多いようですが、何月にしたら良いですか?

A.回答「とくに決まりはなく、いつでもいいです。」

会社は通常、定款で事業年度を定めます。事業年度とは、会社の経営成績や財務状態を明らかにする目的で決算をするために設けられた一定の期間のことを指します。そして、この事業年度の最終日のことを「決算日」といいます。

会社の事業年度は、1年以内の期間であれば、会社の都合で自由に定めることができます。例えば「3月10日から9月9日」といった事業年度でも構いません。この場合の決算日は「9月9日」になります。

このように会社が自由に決算日を定めることは許されているのですが、多くの会社は決算月を3月31日や12月31日に設定しています。(参照:国税庁https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/hojin1997/11.htm

3月31日とする会社が多い理由としては、次のようなことが考えられます。

  1. 国の予算期間が4/1~3/31の期間に設定されているため、国や地方自治体との仕事が多い場合には、時期を合わせた方が計算しやすい。
  2. 日本の学校は3月末で終わるため、事業年度開始の4月に新入社員を迎えやすい。
  3. 上場企業では、株主総会の時期を合わせることで、いわゆる反社会的勢力対策になる。

12月31日に決算日を設定している会社には、単純にキリがいい、暦年とおりという理由で決めている会社も少なくありません。また、個人事業主から法人成りした場合に決算日をそのままにしておいた、ということも考えられます。

専門家からのヒトコト
いずれにしても、3月末や12月末に決算日を設定したほうが良いという、決定的な理由はないようにも思えます。
ドリームゲートアドバイザー 李 顕史

先に述べたとおり、決算日は自由に設定して良いのです。

実際、ユニクロを運営しているファーストリテイリング社などでは、9/1~8/31を年度の期間としており、8月末に決算日を設定していたりもします。

つまり、会社それぞれの思惑にあわせて、原則として自由な日付に設定することが出来る、というのが本当のところです。

それでは、これから起業する際、決算時期を自分が好きな日など、適当な日に設定しても、本当に問題がないのでしょうか?

決算というのは、会社にとって非常に重要です。決算月をいつにするかは、会社の経営に大きな影響を与えかねない問題ですから、しっかりと考え抜いてから設定するべきです。
何を参考に決算日を決めたら良いのでしょうか?

決算月の決め方について

これには、大きく分けて、4つのポイントがあります。

ポイント1:税理士との関係(繁忙期を避ける)

1つ目は、税理士との関係です。
税理士の繁忙期を避けることで、会社に不利な対応をされないようにする、言い換えれば、丁寧に対応してもらえるように、決算日を設定します。

まず、決算に当たっては、決算報告書の提出が義務づけられています。
そしてその決算報告書は、決算から2ヶ月以内に、税務署に提出する必要があります。

例えば3月末決算であれば、5月末までに、12月末決算であれば2月末までに、決算処理をして、決算報告書を作成しなくてはいけません。

多くの会社が決算を3月末と12月末に設定しているため、税理士にとってみれば、5月と2月は忙しい時期となります。

言い換えてみれば、他の時期は比較的ヒマな時期となります。

つまり、あなたの会社が税理士に顧問を依頼する際、決算時期が3月末と12月末以外の月であれば、比較的ていねいに対応してくれる可能性もある、ということです。

また、一概には言えませんが、例えば人気のあるような税理士でも、繁忙期でなければ余裕もあり、顧問になってくれる可能性が高くなるでしょう。

ポイント2:金融機関との関係

融資を検討している場合は金融機関との関係が大切です。
つまり、金融機関から融資を受けたいとき、決算書の見栄えが悪くならないような決算日を設定するほうが良い、ということです。

銀行は必ず決算書をチェックします。

銀行と信頼関係のない創業間もないベンチャー企業などでは、直近月が黒字であっても、前年度の決算書が赤字だと、なかなかお金を貸してはくれません。

そうすると、せっかく儲かり始めたのに、運転資金が不足して、黒字倒産なんてことにもなりかねません。

前年度赤字でも、期中にお金を貸してくれるようなノンバンク系の銀行もありますが、利率が高く、これはこれで、リスクが高くなります。

売上のメドを予測し、決算で黒字にすることは、会社を運営していく上ではとても大事なことなのです。

売上の立ち方は会社の事業内容などによりまちまちです。これから始める事業の内容について良く考え、タイミングを見極めてみてください。

例えばWEBの制作事業などは、12月および3月は、一年の中でももっとも仕事が多い、稼ぎ時です。

これは、多くの企業が12月か3月を決算期にしているため、その前に、宣伝費用などの余った予算を使い切ろうとするため、これらの月に、発注が集中するのです。

一方で、たとえば人材研修を行う会社は、4、5月が一番忙しい時です。この時期は、新入社員研修が多く組まれるために、土日も休めないほど案件が入ってくると言われています。

おおよそ、どの業界も年間を通しての忙しさの波がありますので、決算時期を決める際は、事前に必ずその波を調べてから決定することをおすすめします。

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※ただし、節税の観点からは、決算日を売上が高くなる月から離れた時期に設定するほうが得策です。年度の利益予測を早期に可能とし、節税の対策を柔軟に行うことができるようにするためです。
ドリームゲートアドバイザー 李 顕史
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ポイント3:消費税の免税期間との関係(消費税の免税期間が長くなるようにする)

また、決算日と事業年度を決定する際のポイントとして、消費税の免税期間との関係があります。
消費税の納税の義務は、一定の条件のもとで免税されます。事業年度の定め方によって、その免税の期間が変わってしまう場合があるため、その期間を最大化するためにはどうすればよいかという問題です。

これは会社の規模などによって、次の3パターンに分けることができます。

  1. 特別な考慮が必要でない場合
  2. 最初の事業年度を1年(12ヶ月)とする方が良い場合
  3. 最初の事業年度を7ヶ月とする方が良い場合

複雑な制度になっているので、ここでは簡易な判断基準だけ述べておきます。

①特別な考慮が必要でない場合
大きく分けて2つの場合があります。

  • まず、設立当初から資本金又は出資の額が1,000万円以上の場合は、特別な考慮は不要です。この場合は最初から免税期間がないからです。
  • そして、課税売上高が1,000万円(事業年度が1年未満の場合は1年に引き直した売上高)を超えない見込みの場合も、基本的には特別な考慮は不要です。課税売上高が1,000万円以下である限り、免税期間が続くからです。

この場合は、事業年度の設定の仕方で消費税の免税期間が変わるわけではないので、特別な考慮は必要ありません。

②最初の事業年度を12ヶ月とする方が良い場合
①以外で、1期目の事業開始年度開始の日以後6ヶ月間の課税売上高が1,000万円以下となる見込みの場合です。

この場合、設立後2期目の事業年度までは、免税期間が続きます。そのため、1期目を12ヶ月・2期目を12ヶ月とすると、最大24ヶ月の免税期間の恩恵を受けることができます。3期目からは消費税が課税されます。

また、1期目の事業開始年度開始の日以後6ヶ月間の課税売上高が1,000万円を超える場合でも、支払う給与(役員報酬含む)の金額が1,000万円以下の場合には同様に考えることができます。

③最初の事業年度を7ヶ月とする方が良い場合
①、②のいずれにも当たらない場合は、第1期を7ヶ月、第2期を12ヶ月とすると、合計の19ヶ月について、消費税の免税の恩恵を受けることができます。

本来この場合は、第2期から課税事業者となってしまいます。ただし、短期事業年度の特例という制度があって、第1期目の事業年度を7ヶ月以下とすれば、免税期間を第2期まで伸ばすことができるのです。

従って、第1期を7ヶ月とすれば、最大19ヶ月まで免税期間を伸ばすことができます。ちなみに、第1期を8ヶ月としたら第2期から課税事業者となり、免税期間は8ヶ月となってしまいます。

専門家からのヒトコト
※専門家のアドバイスを受けるべき
消費税の免税を考慮して決算期を決める場合、税理士など専門家のアドバイスを受けることを強くお勧めします。
税法は改正が多いし、他にも細かい規定があります。また、会社によっては免税の制度を使わないほうが良い場合(消費税の還付がある場合など)もあるからです。
ドリームゲートアドバイザー 李 顕史

ポイント4:税金の支払時期との関係(資金繰りに余裕をもたせる)

最後に、税金の支払時期との関係があります。
資金繰りに余裕がある時期に納税時期があたるように、決算日を設定するということです。

会社は、決算日から2ヶ月以内に法人税、住民税、事業税および消費税を納付しなければなりません。これらの税金の支払いは、通常大きな資金の支出が見込まれます。
そのため、少しでも資金に余裕のある時期のほうが、資金繰りが楽になります。

決算月はあとで変更ができる

実は、決算日や事業年度はあとから変更できます。
会社を設立した後、事業運営を進めていく中で、決算日や事業年度を見直す必要が出てくることがあるかもしれません。

例えば、当初予想していた繁忙期と実際の繁忙期が異なり決算日を変更するほうが都合良いと感じるようになってきた場合や資金繰り上、決算日を変更する必要性が大きくなってきた場合などが考えられます。

そのような場合には、決算日や事業年度を変更することができるのです。
必要な手続きの流れについては、次のとおりです。

  1. 株主総会の特別決議(株主の3分の2以上の賛成)により、定款を変更する。
    (※この場合、役員の任期が変わることもあるので、定款の役員の定めの確認が必要です)
  2. 株主総会の議事録をつくる。
  3. 税務署へ異動届出書を提出する
    (参照:国税庁「異動事項に関する届出」https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/1554_5.htm
    ※事業年度は登記事項でないため、法務局への届出等は不要です。

デメリットとしては、事務手続きの負担などが考えられます。例えば、次のようなものがあります。

  • 主要取引先や銀行等の金融機関に、事業年度変更の連絡をする。
  • 許認可事業などを行っている場合には、管轄する省庁等への届出をする。
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この記事の監修者
李 顕史(り けんじ)
税理士/公認会計士/FP(ファイナンシャルプランナー)
李総合会計事務所 代表
「金融に強い税理士」として年間延べ500回の経営アドバイスを提供している。大企業の監査経験を基にした知識の豊富さと、実行支援まで行う実行力の高さで相談者からの信頼も厚い。また、大手ネットメディアなどで豊富な執筆経験を持つ。一橋大学非常勤講師
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佐々木 美佳(ささき みか)
税理士/FP(ファイナンシャルプランナー)
佐々木税理士事務所 代表
東京商工会議所ビジネスサポートデスク 派遣専門家税理士。税理士業界に30年以上携わった経験により関わった企業は1,000社以上。
一般社団法人シェア・ブレイン・ビジネス・スクール認定講師も務め、強みを活かしたビジネスモデル策定に関わった経験が豊富。
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