LINK財務経営研究所、ドリームゲートアドバイザーの矢野覚です。
コラム第3弾として、33年間、日本政策金融公庫国民生活事業(旧国民生活金融公庫)に勤務した経験をもとに、銀行融資を断られる会社の5つの特徴についてお伝えさせていただきます。
後半で「銀行融資を断られないための21のセルフ・チェック・リスト」を用意していますので、自分に当てはまる項目がないか、ぜひご確認ください。
- 目次 -
融資判断のために銀行がみるポイント
まず、銀行が融資の可否を判断するために確認するポイントの概要について解説します。
コラム第1弾でもお伝えしたのですが、銀行が融資判断をする際のポイントを大きく分けると以下の3つになります。
- 資金使途(資金の使い道)の妥当性
- 返済能力(約束どおり返済してもらえるか)
- 企業の持続性(融資期間内に潰れる心配はないか)
この3つのポイントを検証するために行うのが「定性分析」と「定量分析」です。
定性分析とは、経営者の経営に対する姿勢であったり、その会社が提供している商品やサービスの強みであったり、数字で表わすことができない会社の強みや弱みを分析することです。
一方、定量分析とは、貸借対照表や損益計算書といった決算書に示された数字等、数値化されたものを分析することです。銀行は、この2つの側面から得られる情報で融資の可否を判断しています。
また、融資を申し込んだ経営者に融資をお断りするときに、銀行は「総合的に判断して、今回はご希望に添うことができません。」というような説明をよくします。
銀行からこういう説明で融資を断られた経験のある経営者のなかには「総合的判断ってどういうこと?もっと分かりやすく理由を説明して欲しい。」と思う方も多いと思います。
総合的判断とは、大きく捉えると「定性面」「定量面」の両面から判断したということなのです。
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銀行融資を断られる会社の5つの特徴
それでは、「総合的判断」についてより具体的に深掘りしてみましょう。それが銀行融資を断られる会社の特徴の説明に繋がると思います。
定性面から銀行が融資判断をする際に重要視するポイントとして「経営者の経営姿勢」と「商品力・サービス力・販売力」をあげることができます。一方、定量面からは「資産・負債・純資産」「損益状況」「資金収支」の3つがポイントになります。
この5つのカテゴリーそれぞれの項目について説明します。
1 経営者の経営姿勢
定性面で銀行が最も重要視するのは経営者の「経営に対する姿勢」です。それは、経営者の経営姿勢がそのまま会社の業績に反映されるからです。
業績の良い会社の特徴は、経営者が数字に強いということです。自社の現状を数字の動きからしっかり把握し、課題を見つけたら、すみやかにその解決に動くことが大切なのです。
もう1つ経営者が意識しなければならないことは、銀行との信頼関係を築くことです。融資判断のことを与信判断ともいいます。文字通り「信用を与える」ことができるか否かの判断です。日頃から銀行の担当者とは、しっかりコミュニケーションをとり、情報交換されることをお勧めします。
整理すると、
- 経営者の「ヤル気」、どんな苦境も乗り切る強い意思と行動力があるか
- 自行取引や他行の借入金が約定返済されているか、税金や公共料金等に滞納はないか
- 約束は守っているか
- 自社の経営状況を数字で把握できており、適切な説明ができるか
- 従業員の定着率は高いか
つまり、銀行は、①事業意欲、②債務観念、③信用力、④数字力、⑤組織運営力といった観点から経営者を見ているのです。
2 商品力・サービス力・販売力
顧客のニーズに合っているか、商品力・サービス力は競合他社と差別化されているか、商品力・サービス力に際だった特徴がなければ、販売方法に工夫をしているか、といった視点から実際の売れ行きを確認します。
経営者は以下の3つのポイントを押さえたうえで、銀行に説明できなければなりません。
- 対象とする顧客は誰なのか
- 顧客に対してどのような価値を提供するのか
- どのような方法によって価値を提供するのか
3 資産・負債・純資産
銀行は損益計算書よりも貸借対照表を重視しています。基本的に銀行は3期分の貸借対照表を比較して、資産(自社の財産)と負債(他人から調達した資金)のバランスやその変化、純資産(=自己資本)の額やその増減を確認します。ここでの重要なポイントは純資産がマイナス(=債務超過)になっていないかです。債務超過(資産<負債)だとかなり厳しい判断になります。
現預金や借入金のバランスや増減を確認して、バランスが悪くなっていたり、増減幅が大きかったりするとその原因と対策を聞いてきます。経営者からきちんと銀行に理解してもらえるように説明できることが重要です。
また、併せて回収不能の売掛金や支払いが滞留している買掛金、不良在庫等がないかもそれぞれの残高から確認しています。
個人事業ですと、事業用の現預金と借入金のバランス及び個人としての現預金や個人資産の状況と住宅ローン等、事業以外の借入金等の負債とのバランスを確認します。
4 損益状況
貸借対照表の確認と同様に3期分の損益計算書を比較して、売上高、売上原価、経費、利益といった科目毎の変化を確認します。
特に売上の増減、売上原価率(粗利率)の変化、経費の増減を見ています。こうした数字に大きな変動がある場合は、その原因を銀行に納得してもらえるように経営者は丁寧に説明しなければなりません。
よく赤字だから融資して貰えないという話も聞きますが、原則として、赤字だけの理由でお断りすることは無いと言えます。赤字の原因であったり、回復の見通しであったり、経営者からそうした情報をヒアリングして、赤字が解消できるかどうかを見極めたうえで、融資の可否の判断材料にします。
5 資金収支
資金収支つまり資金繰りの状況も重要視します。コロナ禍で多くの企業が資金繰りに窮しましたが、事業を継続するためには資金が順調に回ることがなによりも大切なのだと実感された経営者の方も多いのではないでしょうか。
損益と収支は別のものです。損益は、会計のルールに基づき計上される数字ですが、資金収支は実際のお金の出入りを事実に基づき確認することができます。入金>出金となっているかどうかを預金通帳や現金出納簿等の帳簿を直接見ることにより確認するケースが多いと思います。場合によっては、資金繰り実績表や資金繰り予定表の提出を求められることもあります。
損益計算書に計上されている売上高や経費等と実際のお金の出入りに妥当性があるかどうかも確認ポイントになります。
以上、銀行が融資判断をする際に確認するポイントについて、カテゴリー別に説明しました。大きく捉えれば、こうしたポイントのすべてあるいはいずれかに課題や問題があると銀行が判断すれば、融資は難しいという結論になるのです。
5つのカテゴリーについて、セルフ・チェック・リストを作成してみましたので、参考までに載せておきます。
銀行融資を断られないための21のセルフ・チェック・リスト
0 資金の使い道
□資金の使い道とその必要額について説明できるか
1 定性面
(1)経営者の経営姿勢
□事業意欲は旺盛か
□債務観念はあるか
□約束は守っているか
□数字に強いか
□従業員等からの信頼は得られているか
(2)商品力・サービス力・販売力
□市場、顧客ニーズに見合った商品やサービスか
□他社との差別化が図れているか(自社の強みを活かした商品・サービスか)
□営業体制は整っているか
2 定量面
(1)損益計算書(損益状況)
□営業利益又は経常利益で赤字が続いていないか
□売上が減少傾向にないか
□売上総利益率(粗利益率)が前期に比べて大きく変動していないか
□販管費が前期に比べて大きく増減していないか
(2)貸借対照表(資産・負債・純資産)
□現預金残高は事業規模に応じて有しているか
□受取手形や売掛金、棚卸資産に不良はないか
□支払手形や買掛金に期日の繰延等はないか
□借入金残高は妥当か(前期に比べて極端に増加又は減少していないか)
□純資産(自己資本)は十分か(債務超過になっていないか)
(3)資金収支(資金繰り)
□毎月のお金の出入りは事業規模に応じているか
□税金や社会保険料、水道光熱費等は期限内に支払われているか(滞納はないか)
□借入金の返済は約定どおりにできているか
お気軽にご相談ください
銀行が融資判断をする際の確認ポイントを理解していただけましたでしょうか。ぜひ、セルフ・チェック・リストも活用して、自分の会社やご自身の事業の状況を自己診断してみてください。
新型コロナの影響も残っているなか、資金繰り等で厳しい経営を余儀なくされている企業も少なくないと思います。このピンチをチャンスに変えて、銀行が融資したくなる会社を目指しましょう。
LINK財務経営研究所は、コロナ借換保証の支援先として登録もさせていただいています。
コロナ借換保証に限らず、銀行からの資金調達等、資金繰り全般について対応可能ですので、お困り事があれば、ドリームゲートのメール相談(無料)を活用して遠慮なく相談してください。弊研究所で力になれることは、しっかり支援させていただきます。
執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 矢野 覚
日本政策金融公庫で融資に長年携わってきた経験を活かし、今は資金調達における創業計画・事業計画の策定をサポートしている矢野アドバイザー。長年の知見による的確なアドバイスと丁寧な対応が特長的です。資金のお悩みだけでなく、経営改善についての相談もできる心強い味方です。
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