合同会社を設立しようと考えているものの、株式会社との違いがわからず、「なにかで損をするのでは…」と不安になっていませんか?じっさい、合同会社にはメリットとデメリットがあります。
もっとも合同会社と株式会社の違いは明確で、しっかりその違いを理解すればどちらにすべきかを判断するのは難しくありません。
そこで今回、6万件以上の起業相談などにのってきたドリームゲートが合同会社のメリットや株式会社との違いをまとめてわかりやすく解説していきます。これを読めば、会社設立で後悔するリスクを避けられるでしょう。
- 目次 -
合同会社とは全社員が出資者の企業
そもそも合同会社とは、社員全員が出資者である会社のことです。雇用契約を結んだ社員が出資しているのではなく、合同会社に出資している人を社員と呼びます。一般的なイメージの社員とは明確に違うのがポイントです。
なお近年設立数が増えており、会社設立の情報収集時に目にする機会が増えていますが、全部で4つある会社の形態の1つでしかありません。他の形態との違いやメリットを理解し、自分にあっているかどうかを判断した上で合同会社を選ぶのが重要です。
なお全部で4つの形態があるといっても近年設立されるのは合同会社か株式会社がほとんどです。そこで、合同会社と株式会社の違いを紹介していきます。
累計8万人が利用!質問に答えるだけで「事業計画書・数値計画書」が完成
⇒事業計画書作成ツールを無料で利用してみる
- 日本政策金融公庫の創業計画書も作成でき、融資申請に利用できる。
- 業種別にあなたの事業計画の安全率を判定
- ブラウザに一時保存可能。すべて無料!
合同会社と株式会社の大きなちがいは2つだけ
合同会社と株式会社には多数の違いがありますが、どちらで会社を設立するか判断するために知っておくべき違いは以下の2点です。
- 経営の主体
- 資金調達の手段
これを理解すれば合同会社が自分に向いているのかすぐにわかります。
経営の主体のちがい
株式会社は所有者が株主で経営者の選定と委任をしているのに対して、合同会社の経営の主体は社員全員になります。経営の代表者などにも違いがあり、まとめると次の図のとおりです。
合同会社 | 株式会社 | |
経営の主体 | 出資者全員が会社を所有し、経営 | 会社は株主のもので、経営する人員は株主総会などで選出する |
意思決定の場 | 社員総会 | 株主総会 |
代表者 | 代表社員 | 代表取締役 |
役員の任期 | なし | 最長2年 |
決算公告 | 不要 | 必要 |
株式会社の社員が基本的に自社への出資はしていない従業員なのに対し、合同会社に出資している社員は経営者と同等で議決権を持ちます。じっさい、合同会社の社長に該当する肩書きは代表社員で、他の出資者会社を所有していて経営もするという合同会社の特徴をよくあらわしています。
まとめるとシンプルな形態をしているのが合同会社で、所有と経営をわけているために会計参与や監査役といった複数の機関が必要なのが株式会社です。
資金調達の方法のちがい
資金調達の方法に差があるのも合同会社と株式会社の大きな違いです。くわしくは後述しますが、合同会社は株式の発行ができないために株式会社よりも資金調達の選択肢が少なくなります。
また、一般的に株式会社よりも合同会社の認知度や信用度は低いので、銀行などの金融機関から資金調達する難易度も上がりがちです。
合同会社のメリット5つを解説
合同会社のメリットは次の5つが代表的です。
- 設立費用が安い
- 設立の手続きが簡単
- 決算を公表する義務がない
- 利益の分配が自由
- 経営の自由度が高い
合同会社を設立する直接の理由になるので、各メリットの詳細を解説していきます。
設立費用が安い
合同会社の設立費用は、株式会社よりも安いです。具体的には7~10万円で合同会社が設立でき、21~25万円で株式会社が設立できます。差額の根拠としては、以下の表を参考にしてください。
株式会社 | 合同会社 | |
認証手数料 | 約5万円 | かからない |
謄本手数料 | 約250円×枚数 | かからない |
登録免許税 | 資本金の1000分の7に相当する額 または15万円の高い方 | 資本金の1000分の7に相当する額 または6万円の高い方 |
実印作成代 | 約5千円 | |
印鑑証明取得書類 | 約450円×必要枚数 | |
登記簿謄本の発行費 | 約600円×必要枚数 | |
電子定款作成費 (自分で設立する場合) |
約3千~5千円 | |
専門家への手数料の目安 (専門家に依頼する場合) |
約50,000円~ | 約40,000円~ |
合計 | ||
自分で設立する場合 | 約215,500円~ | 約74,250円~ |
専門家に頼む場合 | 約261,500円~ | 約110,250円~ |
定款を電子にしない場合は、上記に加えて4万円の収入印紙代がどちらの会社でも加算されます。会社設立を専門家に依頼するとおおよそ4万円の費用がかかりますが、各種支払などを代行してくれるので、営業やマーケティングなどのコア業務の時間を増やせるでしょう。
合同会社と持株会社のどちらで会社設立をすべきかといった相談もふくめて専門家への相談を積極的にすれば、結果として事業の成功確率を高められます。
設立の手続きが簡単
設立の手続きが簡単なのも合同会社のメリットになります。先述のとおり、合同会社は株式会社にくらべてシンプルな形態をしているからです。株式会社の場合、役員の決定や機関の設立、株式関連の取り決めなど、多くの手間がかかります。合同会社にすれば、さまざまな手間がなくなるので、設立時の手続きは楽に済むというわけです。
決算を公表する義務がない
合同会社には決算公告の義務がありません。株式会社のように情報をまとめて発表する手間がなく、毎年およそ6万円かかる官報掲載費も不要です。
利益の分配が自由
合同会社は利益の分配を自由にできます。社員の出資率に応じた議決権の差異が発生しないからです。会社の所有権が株主にある株式会社の場合は、配当金の分配は株主の持ち株数に応じておこなわなければいけません。
経営の自由度が高い
経営の自由度が高いのも合同会社のメリットです。経営者と企業の所有者が分離している株式会社の場合は、どうしても株主の意向を聞きとりながら経営をしなければいけません。
しかし、企業の所有者が社員である合同会社の場合は、社内のみで迅速に意思決定ができたり内部組織などを定款で自由に設計できたりします。具体的な社名は後で紹介しますが、自由度の高い経営が可能なことから合同会社に移行した大企業も複数あるほどです。
累計8万人が利用!質問に答えるだけで「事業計画書・数値計画書」が完成
⇒事業計画書作成ツールを無料で利用してみる
- 日本政策金融公庫の創業計画書も作成でき、融資申請に利用できる。
- 業種別にあなたの事業計画の安全率を判定
- ブラウザに一時保存可能。すべて無料!
合同会社のデメリット4つを解説
合同会社にはメリットだけでなく、デメリットも存在します。具体的には、以下の4つです。
- 資金調達の方法が限られている
- 上場できない
- 信用を得にくい場合がある
- 出資した社員全員の同意が必要
合同会社よりも株式会社を設立したほうがよいという判断につながる場合もあるので、各デメリットをくわしく解説していきます。
資金調達の方法が限られている
合同会社は株式会社よりも資金調達の方法が限られ、大規模な資金を調達するのは難しくなります。株式会社のように新株を発行するといった方法がとれないためです。もっとも合同会社であっても社債は発行でき、各種補助金や助成金、少人数私募債の発行といった方法で資金調達自体はできます。
上場できない
上場ができないのも合同会社のデメリットになります。合同会社は株式を発行できないためです。したがって、明確に上場をしたいという目的があるなら、株式会社にする必要があります。
信用を得にくい場合がある
合同会社は信用を得にくい場合があります。合同会社という形態は2006年にできたもので、認知度が低く、信頼を築いている企業の数も株式会社とくらべると少ないためです。信用を得にくいために資金調達の方法が限られている側面もあり、取引先を増やすといった活動をするさいにも影響がでる可能性はあります。
出資した社員全員の同意が必要
出資した社員全員の同意が必要なのも合同会社のデメリットになります。出資者全員が会社を所有して経営もしている以上、意見の違いからトラブルが発生する可能性があるわけです。
たとえば、自由に設定できる利益配分が社員間のトラブルに発展する場合もあります。ていねいに社員全員の同意を形成していく必要があります。
合同会社にすべきかを判断する要素4つを紹介
合同会社にすべきかの最終判断をくだすために知っておきたい要素としては、以下4つが代表的です。
- スタートアップか、スモールビジネスか
- 合同会社にむいている人の特徴
- 合同会社にむいてない人(株式会社にむいてる人)の特徴
- 後から会社の形態は変更可能
会社の形態に悩んでいる時間でビジネスが前にすすんでいるわけではないので、迅速かつ適切な判断をくだすために各要素の詳細を解説していきます。
スタートアップか、スモールビジネスか
自社のビジネスモデルがスモールビジネスか、スタートアップかを見分けると、合同会社にすべきかどうかの判断材料にできます。スモールビジネスとスタートアップの詳細は下図を参考にしてください。
出典:田所雅之 著/起業の科学
スタートアップは最終的に上場や自社売却を目指して、新しい市場で急成長をねらうので株式会社にするのがおすすめです。一方で、フリーランスや小規模事業から法人成りする場合は合同会社も選択肢に入ります。
合同会社にむいている人の特徴
合同会社にむいている人の特徴としては多額の資金を必要とせず、小規模な組織や個人経営の店舗を運営したいことがあげられます。具体的にはスモールビジネスをしたい人や飲食店・美容院といった小規模な一般消費者むけの店舗を経営したい人などです。
合同会社にむいてない人(株式会社にむいてる人)の特徴
ビジネスをどんどん大きくしていきたい人や資金調達の手段をへらしたくない人は株式会社を選ぶのがよいでしょう。また、なんらかの理由で取締役などの肩書きが必要な場合も株式会社を選ぶべきです。
後から会社の形態は変更可能
会社の形態は後から変更可能で、一度設立するとずっとそのままということはありません。
最初は費用や労力の少ない合同会社ではじめて、経営がうまくいけば株式会社に移行するのも可能です。株式会社としてさらに拡大と安定をはたして社会的な信用を獲得できれば、迅速で自由な経営といったメリットを得るために合同会社にもどすといった方法もとれます。したがって、完璧な判断をしようと時間をかけすぎずに会社の形態を選ぶとよいでしょう。
どんどん増えている合同会社の現状を紹介
新設される合同会社は右肩上がりで増え続けています。具体的な数値は、下図のとおりです。
引用元:東京商工リサーチ2018年「合同会社」新設法人年間推移
2019年に新設された会社のうち合同会社がしめる割合は23.2%で、およそ4社に1社が合同会社というのが現状です。現状から合同会社を選択した先人の傾向などがわかるので詳細を紹介しましょう。
有名な大手企業も合同会社を選択している
先に紹介した合同会社にむいた人の特徴として、スモールビジネスや個人経営の店舗を紹介しましたが、大企業もメリットを得るために合同会社を選択しているケースが多々あります。具体的な企業名の一部としては、以下のとおりです。
- Apple Japan
- グーグル
- アマゾンジャパン
- 西友
- DMM.com
- ユー・エス・ジェイ
- ユニバーサルミュージック
- ワーナーブラザースジャパン
- フィリップモリスジャパン
株式会社として成長してから決算公告の手間の削減や柔軟で自由な経営といったメリットを得るために合同会社に乗り換えた会社が多いとされています。
合同会社はどんな業種が多いか紹介
大企業が合同会社を選択するケースがあるのは事実ですが、基本的に規模の拡大を必要としていない個人店舗やスモールビジネスの経営者が合同会社を選択するケースが多いです。業種としては、研究開発や士業系、情報サービス・制作業などが多い傾向にあります。より具体的な業種については下図を参考にしてください。
引用元:東京商工リサーチ2018年「合同会社」の新設法人調査
不動産業は不動産投資などの目的で物件を合同会社で法人化していましたが、審査の厳格化などを理由に減少傾向にあります。一方で小売業といった一般消費者に近い小規模事業者が多い業種では合同会社が増えています。
近年合同会社が増えている理由
およそ4社に1社が合同会社と、近年合同会社が増えている理由として個人投資家が設立するパターンもふくまれていることがあげられます。不動産や仮想通貨、FXで成功した個人投資家が節税目的で合同会社を設立するケースが多々あります。
近年メジャーな会社形態だと思ってなんとなく合同会社を設立するのではなく、きちんとメリットとデメリットを理解して会社の形態を選ぶのが重要です。
会社設立・各種法人設立のアドバイザーに相談してみる
会社設立をするさいには、アドバイザーへの相談も検討するのがおすすめです。会社設立は重要なことではありますが、収益はうみません。時間や労力をかけすぎては本末転倒です。
アドバイザーに最適な判断や各種手続きをしてもらえればコア業務の時間を増やせ、ビジネスの成功確率が上がります。もちろん業種への専門性や設立件数が多いアドバイザーを選ぶのは重要です。以下のリンクから50人以上の経験豊富なアドバイザーにオンライン面談や面談申込みができるので活用してください。
まとめ:合同会社のメリットをいかして会社を成功へ!
合同会社にはデメリットもありますが、迅速で自由な経営や設立費用が安いといったメリットが多数あります。目指したい方向性と合同会社のメリットが合致していれば自社の成功確率が上がるので、メリットとデメリットを見きわめるのが重要です。
一方で、会社設立はなれない手続きや作業の連続で時間と労力がかかります。コア業務の時間が圧迫されては本末転倒なので、本当に合同会社でよいのかふくめてアドバイザーも積極的に活用しましょう。