人気お笑い芸人チュートリアルの徳井氏が、自身が経営する法人にかかる確定申告につき継続的に申告が遅れて、かつここ3年間は無申告であったことから、国税庁より指摘が入ったニュースがかなり話題となりました。
本ケースは、徳井氏が慢性的に申告期限というものに無頓着であり、かつ税理士に資料などを提出する時期や内容もずさんであったことなどが原因であると想定されています。
一般的に芸能人は顧問税理士がついており、すべて領収書などを提出して税理士さんにすべてまかせている、と回答するケースが多いようです。
以前、上沼恵美子氏が追徴課税を指摘されたときも、「すべて税理士にまかせていたので」という回答をされていました。
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「税理士への会計・申告の丸投げ」への疑問
そもそも、事業者や起業家が自身の確定申告を行うときに、領収書などの資料をすべて顧問税理士に預けて、「すべておまかせしている」という考え方で確定申告を行うことが通常と理解されていることは、果たして適正なのでしょうか?
今回、徳井氏が資料を確実に期限内に都度顧問税理士に提出したとしても、=「証拠能力の高い適正な会計帳簿」が出来上がるとは限りません。これは前記の上沼恵美子氏を含めて、すべての芸能人、事業者に言えることであると考えます。
なぜなら、領収書のすべての経費性、品名、内容を税理士が理解し、会計に反映させることは、100%可能ではないということです。
税理士への丸投げで起きるリスクと解決法
領収書のただし書きの内容があいまいであったり、飲食代の接待相手等の内容につき、すべてを税理士が事業者の立場で経費性を適正に理解し、処理することは出来ず、直接事業者に内容をすべて確認するのも限界があり、結果一部推定をしながら経理処理をせざるを得ないことになるのです。
一方、もし事業者が自ら会計入力をし、すべての領収書の内容を理解しながら、都度会計に反映させることができれば、その会計帳簿の内容は、税理士に丸投げした会計帳簿より実態を反映させた、より適正なものになるとは言えないでしょうか?
フィンテックやAIの時代が、事業者自らの会計処理をより可能にする!
中小企業の経営者や、起業したての事業者においては、近年、ビジネスバンキングやクレジットのデータをそのまま会計データに読み込むことができるなど、会計処理に関する事業者の事務負担軽減が確実に進んでおります。
領収書や請求書などをスキャンして、会計仕訳を作成できるシステムも出てきております。このような会計システムの高度化は、中小企業経営者、起業したての事業者にとって大きな追い風です。今後さらに事業者側で会計帳簿の作成を完了させて、あくまでも税理士は税務的観点や保証というかたちで、事業者をサポートする時代になっていくでしょう。
事業者みずから会計処理をすることで融資評価が変わる?
中小企業の経営者、起業したての事業者が自身で都度会計処理を行うことができるようになれば、会社の経営状況や財政状態をタイムリーで把握することが出来るようになります。
加えて、事業者自身で作成された会計帳簿は、税理士の書面添付で税務署への信頼性も高いものになるのはもちろん、対金融機関においても、事業者自身の数字に対する理解度の高さと、会計帳簿内容の信頼性が増すことで、融資を受ける際の評価アップにつながることでしょう。
まとめ
このように、 今後、芸能人はもちろん、その他の事業者、起業家においても、自社で会計処理を行う割合が増えていくことが、自社防衛の観点でも望まれるとともに、必ずそのような時代になっていくことでしょう。
今回の徳井氏の問題は、そのような考えについても改めて思わせる事例でした。
執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 加賀谷豪(税理士、ファイナンシャルプランナー)
株式会社ピクシス 代表取締役/税理士法人アクシオン 代表社員
1981年 北海道札幌市生まれ
同志社大学卒業後、税理士事務所業界経験12年の内、起業者の税務顧問をメインとして携わる中で、より起業支援に特化した研修、勉強会などのサービス提供を目的として、平成26年に株式会社ピクシスを設立。マーケティング戦略・ネット集客に係るプランニングにより、売上のビジョンを明確化するという目的と、それによる充実した事業計画を作成活用することで、融資対策につながるご提案を目的とした起業者向け勉強会を継続的に行っている。平成28年に税理士登録とともに、税理士法人アクシオンを設立
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