前回の記事で、調査結果をもとにパワーハラスメントの多い職場は、「上司と部下のコミュニケーションがない/少ない」職場であるとご紹介しました。
最近は、生産性の高いチームのキーワードとして、「心理的安全性」が注目されています。心理学の世界では昔から大切であると言われているキーワードです。ひとことでいうのであれば「何でも言い合える関係」です。健全なディスカッションができる関係ともいえましょう。パワハラ行為があれば心理的安全性は保てません。また、心理的安全性を保つためには、コミュニケーションの質を上げていくことが大切です。
つまり、コミュニケーション力を高めることは、パワハラをなくし、職場の生産性を高めることにつながるのです。事業拡大のためにも適切なコミュニケーションを身につけましょう。
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コミュニケーション力を高める前に
経営者にとって必要なコミュニケーションには大きく分けて以下の3つがあります。
1、伝える 2、聴く 3、動機づける
すぐにコミュニケーションのスキルを身につけようとする方がいますが、いきなりスキルを身につけようとすると失敗します。自分のコミュニケーションのタイプを把握しておかないと、どんなスキルを使おうとしても上手く使えません。
例えば、「~であるべき」が強く批判的なメッセージを発しやすいタイプであると気付かず、どんなに上手な言葉で何かを伝えても、批判的なニュアンスを感じ取られてしまうことがあります。仕事でも現状把握をしないと、対策が上手くいかないと思います。まずは自分のコミュニケーションのタイプを把握しましょう。
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自分のコミュニケーションのタイプを知る
そもそもどんなコミュニケーションを取りやすいのか把握するために「宮本式エゴグラム」を使って確認してみましょう。人には大きく分けて3つのタイプがあり、それを更に5つ(CP・NP・A・FC・AC)に細分化し、個々の人がどの状態のタイプを周囲との関係の中で出しているのか、その強弱をグラフ化したのがエゴグラムです。では実際、以下の質問に答えてエゴグラムを作成してみましょう。
どのタイプが一番高く、どのタイプが一番低かったですか?エゴグラムは組み合わせによって判断しますが、まずは最も点数が高いものを意識してください。最も点数が高いものが2つ以上ある場合は、それぞれ心がけてみましょう。
タイプ別の起こしやすいパワハラとコミュニケーションのヒント
パワーハラスメントの種類はたくさんあります。その全てを意識し、気を付けることは難しいです。そのため、自分のタイプを知り、コミュニケーションにおいてパワハラを起こさないよう心掛けてもらいたいと思います。5つのタイプのうち、点数が最も高かったタイプの解説を見てぜひ参考にしてください。
①CP(厳しい・支配性)
規律やルールを守り、課題の改善にエネルギーを費やす人です。部下のできていない点に目が行きやすくダメ出しをしたり、「~するべきだろ!」と価値観の押し付けが多い傾向があります。
そのため、部下を精神的に追い込んでしまうパワハラをしてしまう可能性があります。また、支配的で自分に従わない部下に対しても「おかしなやつだ!」と性格や人格に言及したパワハラをしてしまう可能性もあるので、気を付けましょう。
叱る際には、性格や人格に言及すること・全否定をすることは避けましょう。事実について具体的に指摘し、「改善案を一緒に考えよう」と伝えることをお勧めします。日頃から、部下の良い面・できている面を意識して見つけ、部下をほめる努力をすると関係性が良くなると思います。
②NP(優しい・寛容性)
ホスピタリティ溢れる人ですが、相手にも同じホスピタリティを求めがちです。例えば、「〇〇さん、お疲れ様。最近忙しいと思うけど、無理しないように」と部下に笑顔で声をかけたとします。その際に部下から「大丈夫ですけど」と淡々と返事された際に、「なんて冷たい奴なんだ!チームで働くことに向いていない奴だ!」と思ってしまうことがあります。
その結果、「一緒に仕事したくない」と部下を避け「人間関係の切り離し」というパワハラをしてしまうケースがあります。また、世話好きなところがあるので、何でも教えたがります。その結果、部下は「信頼されていないのでは」と不信感持ってしまう可能性があります。
誰もがNPが高いわけではないので、自分の期待した反応ではない時でも業務上支障がないのであれば過度にホスピタリティを求めないようにしましょう。日頃から「任せる」というコミュニケーションも大切な場合があります。
③A(冷静・論理性)
論理性を重視するあまり、必要以上に「なんでできないの?」「なぜ上手くやらないの?」とネチネチと詰めて、精神的に追い込んでしまうパワハラをしてしまう可能性があります。
行き過ぎるとメンタルヘルス不調を生み出し、大きな問題になるかもしれません。根拠が明確で要点がまとまった報告などを求めるので、部下が一生懸命に話している途中で遮り、「つまりどういうこと?」とバッサリ切ってしまう傾向があります。「怖い」「冷たい」という印象を与え、部下から情報が上がってこなくなる可能性もあります。
人には思考と感情があります。感情面も大事にしたコミュニケーションをとるだけでも、あなたの印象が変わります。例えば、「この点が不安なんだね」と共感することで、部下との関係が良くなり、部下はあなたからのアドバイスを受け止める余裕を持つことができます。
④FC(自由・奔放性)
縛られず自由な発想を持っている人なので、その時思いついた最高のアイディアを突然部下に伝えたり、その瞬間思いついたことを指示するところがあります。
行き過ぎると、部下は「コロコロ変わる」「勝手だ」「横暴だ」と常に振り回されている気持ちになるかもしれません。また、次から次に部下に要求するところがあり、行き過ぎると「過大な要求」というパワハラに発展してしまう可能性があります。思ったことをすぐに口に出すので、つい暴言を吐くなんてことがないように気を付けましょう。
「こんなことも知らないなんて馬鹿か!」とつい言ってしまい、パワハラになったケースがあります。即答できない部下に「なんで思ったことを言わないんだ!」と怒ってしまうことがあります。
日頃から、コミュニケーションにおいて、まずは部下の話を聴くことからスタートしましょう。すぐに回答を求めず、「~日までに気になったことあったら言ってきて」と猶予期間を設定することもお勧めします。
⑤AC(従順・順応性)
部下に気を使いすぎて、言いたいことを我慢することがあります。そのため、本当は叱りたいことも我慢し続け、ある日突然爆発し、大声で怒鳴り散らすようなパワハラをしてしまう可能性があります。
部下に気を使いすぎた結果、「私がどれだけ我慢していると思っているんだ!お前なんていらねぇんだよ!消えろ!」と切れてしまったケースがあります。また、気を使いすぎて我慢の限界が来た結果、A4用紙で8枚にもわたる長文メールを部下に送り付けたというケースもあります。ここまでどれだけ自分が我慢していたのか、つらつらと書いてあり、1年以上前の出来事を引っ張り出し、部下を批判する内容でした。日頃何も言われないのに、突然長文のメールをもらえば部下が戸惑うのも当然です。
日頃から、気になることは口に出して指摘することが必要です。前回の記事のI(私)メッセージがお勧めです。Iメッセージは、「~してほしい」と未来に向けたメッセージです。相手も受け取りやすいコミュニケーション方法ですので、お勧めします。
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タイプは意識すると変化する
ここまでタイプ別にどんなパワハラに気を付けなければならないのか、どんなコミュニケーションを意識すればいいのかご紹介しました。これまで多くの方のカウンセリング・コンサルティングでエゴグラムを紹介してきましたが、自分のタイプに気づき意識ができると変化します。自分のタイプが分かれば、今よりもより良いコミュニケーションを取るきっかけになり、コミュニケーションが活発になれば、パワハラの防止にもつながります。
「自分のコミュニケーションが悪い」と落ち込むのではなく、自分のタイプの良さを活かす視点も必要です。また、かみ合わない部下がいた場合には、「エゴグラムのタイプが違うのかもしれない」と思うと、その部下のタイプを予想し、コミュニケーションを考え直すいい機会になると思います。
コミュニケーションの具体的なスキルについては、またの機会にご紹介できればと思います。なお、もっと細かくタイプを知りたい場合には、TEG(東大式エゴグラム)を受けフィードバックを受けることをお勧めします。弊社でも実施することは可能です。職場のコミュニケーションで困ったことがあれば、心理学にもとづいたアドバイスしますので、ぜひお気軽にご相談ください。
執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 宮本 剛志(みやもと つよし)
(株)メンタル・リンク代表取締役。公認心理師、産業カウンセラーとして心理学をベースにしたハラスメント対策のコンサルティングを行っている宮本アドバイザー。事業を成功に導くための社員とのコミュニケーションを経営者に伝えています。深い知識と経験に加え、温厚なお人柄で経営者に寄り添ってサポートしてくれます。著書:こんなの理不尽!怒る上司のトリセツ(時事通信社)・「怒り」とうまくつき合うーアンガーマネジメント入門(SMBC経営懇話会)
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