法人成りを検討していて、消費税について悩んでいませんか?実際、法人成りをきっかけに、納税のタイミングや節税を気にする人は多いです。
事前知識さえあれば数年間にわたって消費税を免税でき、場合によっては還付金の取得も目指せます。
そこで今回、43万人が登録する起業メルマガ配信や経営相談をしてきたドリームゲートが、法人成りをするさいに知っておきたい消費税の知識をまとめて紹介していきます。
これを読めば、納税がはじまるタイミングや免税にむけてやっておくべきことが明確になり、ビジネスに使える資金が多くなるでしょう。
- 目次 -
最大4年間、消費税が免税になる条件とは?
個人事業主でも法人でも、売上高が1,000万円をこえると消費税の課税事業者となります。顧客から支払われた消費税から、自社が支払った消費税を差し引いた額を納税しなければなりません。
しかし売上高が1,000万円をこえても、消費税は工夫しだいで最大4年間免税にできます。4年間の免税の内訳は、以下の2点です。
- 条件しだいで法人成りをしてから2年間は消費税を免税にできる
- 個人事業から合わせるとさらに2年間免除にできる
それぞれ詳しく解説していきます。
条件しだいで法人成りをして2年間は消費税を免税にできる
仮に売上高が1,000万円をこえても、基本的に法人成りをしてから2年間は消費税を免税にできます。というのも消費税の納税を判断する基準となる期間(基準期間)は、原則として前々年となるからです。
個人事業と法人は別と判断されるので、仮に個人事業主時代に課税事業者になっていても、法人成りをしてから最大2年間は消費税の課税対象機関にならないというわけです。
下の国税庁の例がわかりやすいでしょう。
*引用元:消費税のしくみ│国税庁
上図のとおり、令和元年に売上高が1,000万円をこえていても、令和元年分の納税義務はありません。課税事業者となるのは令和3年からになります。ただし、例外はあるので注意してください。たとえば法人成りをしてから6ヵ月間(特定期間)で売上高が1,000万円をこえてしまうと、翌年は課税事業者となります。
上の国税庁の図でいうと真ん中の例。つまり令和元年に売上高が1000万円以下で、令和2年の上半期に1,000万円以上の売上だった場合です。この場合は、令和3年から課税事業者になってしまいます。1,000万円以上の売上がみこめるなら、特定期間内に1,000万円以上の売上にならないように注意しましょう。
すでに法人成りをしてから半年以内に1,000万円以上の売上になっている場合でも、免税事業者になれる可能性はあります。具体的には、給与などの支払金額が1,000万円以上になっていなければ、免税事業者になれます。特定期間の1,000万円の判定は、課税売上高のほか、給与などの支払額でもできるからです。
特定期間内に売上も給与などの支払額も1,000万円以上だった場合は、免税期間が短くなるのを避けるのは難しいので、大きな売上がみこめているなら注意してください。なお、注意点はほかにも複数あるので、後でまとめて紹介します。
まずは最大4年間の消費税の免税を目指すために、個人事業主時代の免税について見ていきましょう。
個人事業から合わせるとさらに2年間免税にできる
個人事業から合わせるとさらに2年間消費税を免税にできます。個人事業も法人成りしたときと同様に、前々年の事業年度の売上高が課税の対象になるからです。
個人事業を開業した初年度に1,000万円以上の売上を記録しても、課税がはじまるのは2年後になります。そして、個人事業主として課税対象になる2年後に法人成りをすれば、法人の免税期間と合わせて、計4年間免税にできるというわけです。
というわけで、売上が1,000万円以上でも法人成りをするタイミングしだいで、消費税を4年間は免税にできます。
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消費税を免税にするさいの注意点3つ
法人成りをしてからの半年間で1,000万円以上の売上を達成してしまう以外に、消費税を免税にするさいの注意点が、3つあります。
- 第1期をできるだけ長くする
- 資本金は1,000万円をこえないようにする
- 資産の引き継ぎには消費税がかかる
上記3つに注意していないと、免税期間が短くなったり、大きな消費税を支払う必要が出てきたりします。
第1期をできるだけ長くする
1期目ができるだけ長くなるように、決算月を設定しましょう。先に解説したとおり消費税が免税になるのは2年間です。1期目と2期目の売上が免税の対象になるので、1期目はできるだけ長いほうが有利になります。
法人成りしたさいに決算日は自由に設定できます。法人成りした前の月を決算月にすれば、第1期を最も長くできるのでおすすめです。
資本金は1,000万円をこえないようにする
資本金は、1,000万円をこえないようにするのもポイントです。資本金が1,000万円をこえてしまうと、法人成りした第1期目から課税事業者となってしまいます。明確な理由がないなら、1,000万円未満の資本金にするようにしましょう。
理由があって1,000万円以上の資本金にせざるを得ない場合は、役員借入金などの形で自社の資金にするとよいでしょう。
資本金を1,000万円以上にせざるを得ない業種や事業規模の場合、売上高も大きくなる傾向があるので、売上高と給与にも注意してください。法人成りをしてから2年間免税になる方法で解説したとおり、特定期間(法人成りをしてから半年間)内に売上高と給与が1,000万円をこえると、課税されるからです。
法人成りしたての場合や検討中の場合は、資本金と給与、売上高が1,000万円をこえないようにしたほうがよいとおぼえておくとよいでしょう。
資産の引き継ぎには消費税がかかる
資産の引き継ぎには消費税がかかるので注意しましょう。
法人成りをする場合、個人事業の廃業をしてから資産と負債を法人に引き継ぐのが一般的です。資産の引き継ぎは個人事業と法人とで売買契約を交わしての支払いという形になるので、課税対象になるのです。
したがって、棚卸資産や土地に店舗、備品といった資産を法人成りの直前に入手しないようにしてください。リース資産やリース債務にも注意しましょう。
簡易課税制度
簡易課税制度について事前に知っておくと、後になって助かる場合があります。
簡易課税制度とは、おさめる消費税の計算を簡易的にできるものです。詳しくは後述しますが、事務的な負担を減らせます。ただし、前々の事業年度の課税売上高が5,000万円以下で、税務署に届け出を出しておく必要があります。
条件と事前準備が課せられていますが、4年間の免税期間を過ぎてから実際に簡易課税制度を利用する法人も多いです。簡易課税制度のメリットと計算方法について詳しく紹介していきましょう。
メリットは事務負担が減ること
簡易課税制度のメリットは、事務負担が減ることです。というのも、取引で発生したすべての消費税を計算(本則課税)せずに、売上高に7割などの数字をかけるといった計算で、おさめる消費税をかんたんに算出できるからです。
計算方法の詳細は後述しますが、自社の売上高と業種ごとに設定されている数値だけ知っておけば問題ありません。金銭の出入りで発生したすべての消費税を計算していく必要がないのです。事務的な負担が減らせ、営業や新商品開発といったビジネスに重要な業務に使える時間が増やせます。
計算方法を3ステップで解説
簡易課税制度の基本的な計算方法は、以下3つのステップで完了します。
- 売上高に消費税率をかける(=売上にかかる消費税額)
- 売上にかかる消費税額にみなし仕入率をかける(=仕入れなどにかかる消費税額)
- 売上にかかる消費税額から、仕入れなどにかかる消費税額をひく
みなし仕入率は、業種ごとに異なります。具体的には以下のとおりです。
事業の種類 | みなし仕入率 | |
第一種事業 | 卸売業 | 90% |
第二種事業 | ・小売業 ・農業/林業/漁業(食用) |
80% |
第四種事業 | ・製造業等 ・農業/林業/漁業 (非食用) |
70% |
第五種事業 | その他の事業(飲食店業等) | 60% |
第六種事業 | サービス業(運輸通信業、金融業、保険業等) | 50% |
第七種事業 | 不動産業 | 40% |
2種類以上の事業を営んでいる場合は、ほかにも計算方法が用意されています。計算方法しだいで消費税額をおさえられる可能性もあります。詳しい計算方法は国税庁のホームページで公開されているので、確認してみてください。
本来の消費税の計算方法(本則課税)のほうが、納税額が少なくなる可能性も大きくなる可能性もあります。なるべく納税額をおさえたい場合は、税理士や起業コンサルタントにシミュレーションをしてもらうとよいでしょう。
ここまで納税することを解説してきましたが、実は消費税は還付される場合もあります。
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消費税還付金
場合によっては、消費税還付金が発生します。納税する消費税は、預かった消費税から支払った消費税をひいたものだからです。つまり支払った消費税のほうが大きい場合は、還付金が発生するというわけです。消費税の還付金発生のパターンは以下のとおりです。
- 大幅な赤字を計上した場合
- 大幅な設備投資をした場合
- 輸出中心の貿易業をしている場合
オフィスの借り上げや自社ビルの建築、高額の設備投資やリースなどをした場合には、あえて消費税の課税事業者になる届出書(消費税課税事業者選択届出書)を出すのもよいでしょう。
まとめ:消費税の免税で自社に資金をのこそう!
消費税は、事前の知識があるだけで、免税や還付金をうけられる税金です。ぜひ今回紹介した情報をいかして、自社に資金を少しでも多く残し、より良いビジネスにつなげてください。
なお、より良いビジネスを展開するするには、事務作業への時間を減らし、商品開発やマーケティング、営業などに使える時間を増やすべきです。
もちろん、会計業務をきちんとしていないと追徴税などのリスクが発生します。そこで、定番の自動化ツールなどを導入して早く確実な会計業務を目指すことも忘れないでください。