国(厚生労働省)と東京都が、新型コロナウイルス対策で、テレワークを導入する中小企業に助成金を給付します。
テレワークは、労働者が自宅やサテライトオフィスで仕事をするので、会社に通勤しなくてよく、第三者との濃厚接触の機会が減り、有効なコロナ対策になります。
厚労省の助成金は全国の中小企業が使えますが、東京都の助成金は都内の中小企業しか使えません。
1つの企業が2つの助成金をもらうことはできないので、東京の中小企業はどちらかを選択することになります。
東京都の助成金のほうが、助成内容が充実していますが、対象になる条件が少し異なります。この記事では、2つの助成金の概要を紹介します。
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厚労省のテレワーク助成金の概要
厚生労働省は2020年3月、「新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース」(以下、コロナ対策テレワーク助成金)を創設しました。これは、コロナ対策として、在宅やサテライトオフィスで就業するテレワークに取り組む中小企業に対し、関連費用の一部を国が負担する助成金制度です。
厚労省には元々、「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」という助成金制度がありました。これは、コロナ対策と関係なく、テレワークに取り組む中小企業に助成金を支給する仕組みです。
ただし、この助成金を受けるには、時間外労働の改善やワークライフバランスなどを推進しなければなりません。
そこで厚労省は、感染拡大防止の目的で、コロナ対策テレワーク助成金を設けたわけです。
コロナ対策テレワーク助成金なら、コロナ対策としてテレワークを導入すれば、それで助成金を受けることができます。
厚労省のテレワーク助成金の内容
コロナ対策テレワーク助成金の額は、テレワーク導入にかかった費用の2分の1で、1企業あたりの上限額は100万円です。
例えば、テレワーク導入コストに70万円かかれば、35万円の助成金が支給されます。コストが300万円であれば、上限額が適用され、100万円が支給されます。
「テレワーク導入にかかった費用」とは、具体的には次の5項目です。このうち、ひとつでも該当すれば、助成金を受け取ることができます。
- テレワーク用通信機器の費用:VPN装置、web会議用機器、社内のパソコンを遠隔操作するための機器、ソフトウェア、保守サポートの導入、クラウドサービスの導入、サテライトオフィス等の利用料など
- 就業規則・労使協定などの作成・変更の費用:例えばテレワーク勤務に関する規定を整備するなど
- 労務管理担当者に対する研修を行う費用
- 労働者に対する研修、周知、啓発を行う費用
- 社会保険労務士などの外部専門家によるコンサルティングを受ける費用
この5項目のうち、謝金、旅費、借損料、会議費、雑役務費、印刷製本費、備品費、機械装置等購入費、委託費などの費用の半額(上限100万円)を助成してもらえます。
ただし、テレワークで使うパソコン、タブレット、スマートフォンの購入費用は助成金の対象になりません。
対象になる中小企業
助成金の対象になるのは、1)以下の表の条件に合致する、2)コロナ対策として新規にテレワークを導入する、3)労働者災害補償保険の適用になる、中小企業(事業主)です。
業種 | 資本または出資額 | 常時雇用する労働者 |
小売業(飲食店を含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
テレワークを実施した労働者が1人でもいれば、助成金を受け取ることができます。
また「新規のテレワーク導入」には、試行的に導入しているケースも含まれます。つまり、すでにテレワークを実施していても、それはあくまで「試行的なもの」であり、これから「本格的に」導入するのであれば、助成金を受けることができます。
期間
このコロナ対策テレワーク助成金は特例なので、実施期間は長くありません。
助成金を受けるには、2020年2月17日から5月31日までに、対象事業(テレワークへの取り組み)を実施する必要があります。
申請の流れ
コロナ対策テレワーク助成金の申請と支給は、4つのステップで進みます。
<STEP1>
まず、「働き方改革推進支援助成金交付申請書」を、テレワーク相談センターに提出します。このとき、事業実施計画書などの書類も必要になります。
テレワーク相談センターの連絡先は以下のURLから確認できます。
https://www.tw-sodan.jp/index.html
申請の締め切りは5月29日です。
<STEP2>
助成金の交付が決まると、厚労省から通知がきます。
<STEP3>
事業(テレワークの導入)が終了したら、テレワーク相談センターに支給申請をします。
支給申請の締め切りは7月15日です。
<STEP4>
厚労省が助成金を支給します。
参考
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000617764.pdf
https://www.tw-sodan.jp/index.html
東京都のテレワーク助成金の概要
東京都のテレワーク助成金は、公益財団法人東京しごと財団の「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」(以下、テレワーク助成金)になります。
東京都のテレワーク助成金の内容
東京都のテレワーク助成金の額は、テレワーク導入にかかった費用の全額で、1企業あたりの上限額は250万円です。
「テレワーク導入にかかった費用」は、具体的には次の6項目です。このうち、ひとつでも該当すれば、助成金を受け取ることができます。
- 機器等の購入費:例えば、パソコン、タブレット、VPNルーターの購入費
- 機器の設置・設定費:例えば、VPNルーターなどの機器の設置、設定作業費
- 保守委託等の業務委託料:例えば、機器の保守費用
- 導入機器等の導入時運用サポート費:例えば、導入機器などの操作説明マニュアル作成費
- 機器のリース料:例えば、パソコンなどのリース料金
- クラウドサービスなどのツール利用料:例えば、コミュニケーションツール使用料
東京都のテレワーク助成金では、パソコンとタブレットの購入費用も助成金の対象になります。厚労省の助成金は、パソコンとタブレットの購入費は対象外でした。
また上限額も、東京都の助成金のほうが有利です。
対象になる中小企業
助成金の対象になるのは、次の条件に合致する中小企業です。
- 常時雇用する労働者が2人以上999人以下
- 都内に本社または事業所を置く中堅企業または中小企業
- 都が実施する「2020TDM推進プロジェクト」に参加している
2020TDM推進プロジェクトとは、東京オリンピック・パラリンピックのときに、企業に交通混雑対策を打ち出してもらう取り組みです。詳細は以下のURLで確認できます。
https://2020tdm.tokyo/project/index.html
期間
助成金を受けるには、助成金の支給決定日から6月30日までにテレワーク導入を完了しなければなりません。
申請の流れ
テレワーク助成金の申請と支給は、4つのステップで進みます。
<STEP1>
「事業計画書兼支給申請書」などを、5月12日までに東京しごと財団に郵送します。
東京しごと財団の連絡先は以下のとおりです。
https://www.shigotozaidan.or.jp/koyo-kankyo/boshu/kinkyutaisaku.html
<STEP2>
審査ののち、支給決定通知が届きます。
<STEP3>
事業(テレワークの導入)を6月30日までに終了させ、「実績報告書」を作成して、東京しごと財団に郵送します。7月31日必着です。
<STEP4>
助成金を支給されます。
参考
https://www.shigotozaidan.or.jp/koyo-kankyo/joseikin/kinkyutaisaku.html
https://www.shigotozaidan.or.jp/koyo-kankyo/boshu/documents/zigyoukeizoku-boshuuyoukou0401.pdf
https://www.shigotozaidan.or.jp/koyo-kankyo/boshu/kinkyutaisaku.html
https://2020tdm.tokyo/project/index.html
東京都の助成金のほうが有利、他道府県の中小企業は厚労省助成金の利用を
厚労省のコロナ対策テレワーク助成金と東京都のテレワーク助成金では、圧倒的に東京都のほうが有利です。
上記の比較の内容を表にまとめてみました。
厚労省の テレワーク助成金 |
東京都の テレワーク助成金 |
|
助成金の内容 | 費用の半額、上限100万円 | 費用の全額、上限250万円 |
費用の内容 | パソコン、タブレットの購入費は対象外 | パソコン、タブレットの購入費も対象 |
対象になる中小企業 | ・資本金5,000万~3億円以下 ・労働者50~300人以下 |
・資本金ルールなし ・労働者2~999人 ・本社または事業所が都内にある ・2020TDM推進プロジェクトに参加する |
期間 | 5月31日までにテレワークを導入しなければならない | 6月30日までにテレワークを導入しなければならない |
申請締め切り | 5月29日 | 5月12日 |
この2つの助成金は併給できないので、東京都に本社や事業所がある中小企業は、東京都の助成金をまず検討してみてはいかがでしょうか。
他の道府県の中小企業は、厚労省の助成金を検討してみてください。
そもそもテレワークとは、なぜコロナ対策になるのか
テレワークとは、自宅やサテライトオフィスで働くスタイルのことで、最大の特長は「会社に行かなくてよい」ことです。
国や東京都などが企業にテレワークの導入を促すのは、コロナ対策に有効であると考えられているからです。
人との接触を回避できる「秘策」
テレワークで働けば、通勤ラッシュや人混みを回避できます。コロナ対策では人との接触を避けることが重視されているので、テレワークはかなり効果が期待できる対策であるといえます。
総務省は「可能な限り、テレワークの積極的な活用をお願いします」と、企業や労働者に呼び掛けています。
助成金以外のテレワーク支援
助成金以外にも、コロナ対策としてのテレワーク支援事業があります。
総務省は、一般社団法人日本テレワーク協会と協力して「テレワーク緊急導入支援プログラム」を実施しています。
プログラムメニューには、「web会議システムの90日間無償支援プログラム」「リモートアクセスツールの導入支援」「ヘッドセット・スピーカーフォンの無料トライアル」「サテライトオフィスの無料開放」「ビジネスチャットシステムの導入支援」などがあります。
詳細は以下のURLで確認できます。
https://japan-telework.or.jp/anticorona_telework_support/
参考
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/telework/02ryutsu02_04000341.html
https://www.soumu.go.jp/menu_kyotsuu/important/kinkyu02_000385.html
https://japan-telework.or.jp/anticorona_telework_support/
まとめ~「コロナ後」を考えても検討に値するのでは
厚労省のコロナ対策テレワーク助成金は、導入費用の半額しか支給されません。つまり、半額は、企業の持ち出しになります。
しかし、テレワークは働き改革に寄与します。コロナ問題が終息したあとの企業経営を考えても、今、テレワークの導入に踏み切ることは得策といえるのではないでしょうか。
また、そもそもテレワークは、ワーク・ライフ・バランスを改善することから、労働者のためにもなります。
1)国や東京都の助成金が受けられ、2)コロナ対策に貢献することができ、3)働き方改革を推進でき、4)労働者に喜ばれるテレワークの導入は、十分検討に値するのではないでしょうか。