「フリーランスになったばかりで確定申告が心配」「確定申告のルールは複雑で、すべてを理解できない」などと悩んでいませんか?
独立して個人事業主になったばかりの人に大きく立ちはだかる壁、確定申告。フリーランスになって数年が経過して、確定申告を何度か経験している人でも「難しい」と感じているのではないでしょうか。
たしかに確定申告のは複雑ですが、ひとつひとつのルールは単純です。ステップ・バイ・ステップで学んでいけばクリアできます。
この記事では確定申告の基本事項やスケジュール、手続きの流れ、控除などをくわしく解説していきます。じっくり読んでいただければ、必ず確定申告を攻略できるはずです。確定申告を早く確実におこなう方法もあわせて紹介します。
- 目次 -
フリーランスが最初に知るべき確定申告の基本5つ
確定申告をはじめてするフリーランスは、次の5つの基本事項を順番に知っていけばスムーズに確定申告できます。
- 確定申告が必要な理由
- 確定申告が必要になる条件
- 確定申告が不要でも確定申告をしたほうがよい理由
- 青色申告と白色申告の違い
- 青色申告をおすすめする理由
1つずつみていきましょう。
確定申告の基本①確定申告が必要な理由
確定申告とは所得税や住民税、消費税などの税金を支払う手続きです。会社員から独立してフリーランスになると、「そもそもなぜ確定申告が必要なの?」と疑問に感じる場合もあるでしょう。
会社員時代は、勤務先の会社が会社員の給料から税金を天引きして税務署などに納めてくれていました。会社が会社員の納税業務を代行してくれていたわけです。
税金を払う必要がある人は、税金を払う手続きも必要という観点でいえば、実は確定申告のほうが「普通の形」といえます。実際、フリーランスがおこなう確定申告は普通徴収という区分です。
もちろんフリーランスになると誰も納税業務を代行してくれないので、自分でしなければなりません。したがって確定申告が必要なわけです。
ちなみにフリーランスであっても一定の条件をクリアすると、事業で得たお金のなかの消費税分を税務署に納めなければなりません。この手続きも確定申告のなかでおこないます。
そして意外に知られていないのですが、確定申告には「支払いすぎた税金をもどす」側面もあるのです。フリーランスが仕事をすると、クライアント(発注企業)によっては源泉徴収をしたうえで対価を支払いますが、源泉徴収した額が多すぎると確定申告によって還付がおこわれます。確定申告をして還付となれば、お金がもどってきます。多すぎた分が納税者にもどしてもらうためにも確定申告が必要です。
確定申告の基本②確定申告が必要になる条件
フリーランスを含む個人事業主は原則、確定申告をしなければなりませんが、次の人は確定申告が不要です。
確定申告が不要なフリーランス | 売上高が0円以下 |
所得税額が0円以下 |
事業が赤字で売上高が0円以下であれば、そもそも所得税が発生しないので確定申告は不要です。また事業が黒字でも黒字幅が一定額以下であれば所得税が発生しないので、やはり確定申告は不要です。
一定額とは「所得税額」で、次の計算式で算出します。
- 売上高-経費=所得
- 所得の合計-所得控除=課税所得
- 課税所得×所得税率-控除額=所得税額
この計算をして所得税額が0円以下になれば「売上高」や「所得」がプラスでも(黒字でも)所得税は発生せず、確定申告は不要です。
確定申告の基本③確定申告が不要でも確定申告をしたほうがよい理由
売上高が0円以下、または所得税額が0円以下であれば、フリーランスでも確定申告は不要ですが、それでも確定申告をすると「よいこと」が起きるかもしれません。
確定申告をしたほうがよい理由①還付
確定申告をすることによって還付が受けられるかもしれません。源泉徴収で「払いすぎた」税金を取りもどすには、確定申告をしなければなりません。
確定申告をしたほうがよい理由②減税効果
確定申告には青色申告と白色申告の2種類があるのですが、このうち青色申告を選択すると欠損金の繰りこしが可能です。欠損金を繰りこすと翌年の所得から欠損金分を差し引けるので減税効果が生まれます。
この減税効果を得るには、確定申告が必要です。青色申告と白色申告については後でくわしく解説します。
確定申告をしたほうがよい理由③練習になる
確定申告をすると「確定申告の練習」ができます。
フリーランスになりたての人が、売上高0円以下や所得税額0円以下だからといって確定申告をしないと経験をつめません。税金の知識を身につける機会を捨ててしまっているといえます。
事業が軌道にのって黒字になれば、いずれ確定申告が必要になります。そのときには仕事が忙しくなっているので、1から確定申告を学ぶのは大変です。
それならば事業規模が小さいうちに確定申告を経験しておいたほうがよいでしょう。事業規模が小さければ経理処理件数が少ないので、確定申告も比較的楽に済ますことができるからです。
確定申告の基本④青色申告と白色申告の違い
青色申告と白色申告の特徴は次のとおりです。
青色申告 | メリット | ・特別な所得控除(10万円または65万円)が受けられる ・欠損金(赤字額)を3年間繰りこせる |
デメリット | ・複式簿記で経理処理をしなければならない ・決算書など確定申告時の添付書類が増える |
|
白色申告 | メリット | ・経理処理がシンプル ・確定申告の添付書類が少なく手間がかからない |
デメリット | ・特別な所得控除が受けられない ・欠損金を繰りこせない |
詳細は次で解説しますが、フリーランスには青色申告がおすすめです。
確定申告の基本⑤青色申告をおすすめする理由
フリーランスになりたての人のなかには、「最初の数年は白色申告にして、慣れてきたら青色申告に変えよう」と考えている方もいると思いますが、最初から青色申告に挑戦したほうがよい理由があります。理由は次のとおりです。
- 複式簿記による経理や決算書の作成は、ビジネスの力になる
- 企業の経理業務と異なり、フリーランスの経理業務はコツさえつかめば「なんとかなる」
- 特別な所得控除の減税効果はとても大きいので利益への貢献度が高い
- 欠損金の繰りこしは将来の減税効果になり将来の利益への貢献度が高い
「フリーランスをやるのは1、2年」と決めている人以外は、青色申告のほうが「お得」です。「自分には複式簿記は無理。確定申告にも時間を割きたくない。特別な所得控除が受けられなくても白色申告でよい」と考えず、青色申告を目指しましょう。
青色申告をする場合は、事前に税務署に届出をする必要があります。届出をしないと、白色申告しかできません。
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確定申告のスケジュール
確定申告は毎年2月中旬から3月中旬の1カ月間、税務署でおこないます。これ以外にも、フリーランスが気にしておかなければならないスケジュールがありますので紹介します。
フリーランスの期首と期末は1月1日から12月31日
確定申告におけるフリーランスの「1年間」は、1月1日から12月31日までです。つまり、フリーランスの事業の期首は1月1日で、期末は12月31日になります。会社は自社で期首・期末の日にちを決められますが、フリーランスはそれができません。
具体的な確定申告スケジュール(1年間)
確定申告は、前年の1月1日から12月31日までの所得に対する税金を支払う手続きです。たとえば、2021年1月1日~12月31日までに発生した所得にかかる税金は、2022年2月15日~3月15日(曜日によって変更することがある)の間に確定申告をおこないます。
そして確定申告には経理処理がつきものです。経理処理とは具体的には、帳簿づけや経費の計算のことです。経理処理は毎日おこなうことが理想です。毎日や毎週が無理な場合でも月1回は経理処理の時間をつくりましょう。
確定申告の流れを3ステップで紹介
確定申告は3ステップで完了します。
ステップ①確定申告に必要な書類を準備
ステップ1では、確定申告に必要な書類を用意します。次のとおりです。
【共通】
確定申告会場で電子申告をしたことがある人 | ①利用者識別番号を取得した際に交付された「利用者識別番号等の通知」
②上記①がない場合は、事前に税務署から送付されたはがきなどで「利用者識別番号がわかる書類」 |
昨年分の確定申告をしている人 | 昨年分の申告書等の控え |
マイナンバーカードの保有者 | <番号確認書類・身元確認書類>マイナンバーカード(写しによる確認の場合は、表面及び裏面の写しが必要) |
マイナンバーカードを持っていない人 | ①<番号確認書類>通知カードやマイナンバーの記載のある住民票の写し等のうちいずれか1つ
②<身元確認書類>運転免許証、公的医療保険の被保険者証、パスポート、在留カード等のうちいずれか1つ |
扶養している者や事業専従者がいる人 | その者のマイナンバーがわかるもの |
税金の還付を受ける申告をされる人 | 申告される方名義の預貯金口座番号がわかるもの |
全員 | 印鑑 |
【収入関係】
給与収入がある人 | 申告する年分の給与所得の源泉徴収票 |
公的年金等を受給している人 | 申告する年分の公的年金等の源泉徴収票 |
その他収入がある人 | 収入金額及び必要経費がわかる書類等 |
【所得控除関係】
医療費控除を受ける人 | 医療費控除の明細書、医療費通知(原本) |
社会保険料控除を受ける人 | 社会保険料(国民年金保険料)控除証明書など |
小規模企業共済等掛金控除を受ける人 | 支払った掛金額の証明書 |
生命保険料控除・地震保険料控除を受ける方 | 保険会社などが発行する支払額などの証明書 |
寄付金控除を受ける人 | 寄付した団体などから交付を受けた寄付金の受領証 |
【税額控除関係】
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除を受ける人 | (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算書など |
住宅耐震改修特別控除・住宅特定改修特別税額控除などを受ける人 | 住宅耐震改修特別控除額・住宅特定改修特別税額控除額の計算明細書など |
その他、確定申告書が必要です。確定申告書については次で解説します。
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ステップ②確定申告書と決算書の作成と提出
確定申告書にはAとBがあり、フリーランス(個人事業主)は「確定申告書B」を使います。税務署は確定申告書を、事前にフリーランスの自宅に郵送します。もし届かなければ、税務署で入手することができます。
青色申告をする人は、確定申告書Bに加えて青色申告決算書が必要です。税務署はフリーランスに、確定申告書と青色申告決算書の書き方を解説した説明書も送付します。それを読みながら確定申告書と青色申告決算書を書いていくことになります。
また国税庁の下記のURLでも、書き方を解説しています。
https://www.keisan.nta.go.jp/kyoutu/ky/sm/topret#bsctrl
ステップ③税金の納付や還付の手続き
確定申告書を書くと自分が税金を支払うのか(納付するのか)、支払いすぎた税金がもどってくるのか(還付されるのか)がわかります。確定申告書と添付書類を税務署に提出し、それが受理されると、支払う税金の額が確定します。または還付されるお金の額が確定します。
支払う税金の額が確定したら、「納期限までに」税金を納付しなければなりません。この「納期限」は「確定申告の期限」とは異なるので注意してください。
しかし「納期限」は3月15日(曜日によってずれることがある)で、「確定申告の期限」と同じ日に設定されています。そのため、確定申告を3月15日におこなってしまうと、その日のうちに税金を支払わなければならなくなります。理想は、確定申告を早めに済ませて、余裕を持って税金を納めることです。
税の納付方法は次のとおりです。
- 振替納税
- e-Tax利⽤
- クレジットカード納付
- QRコードを利⽤したコンビニ納付
- 窓口納付
還付は、確定した額が、確定申告をした人(ここではフリーランス)の預貯金口座に振り込まれます。
フリーランスも活用できる所得控除
所得控除は節税効果を生みます。フリーランスが活用できる所得控除を紹介します。
そもそも所得控除とは?
控除とは「差し引く」という意味です。つまり所得控除とは「税金を計算するときの所得の額から一定金額を差し引く」ことを指します。所得に税率をかけて税金の額を算出するので、所得控除されると税金の額がへります。そのため所得控除には減税効果があります。
所得控除を受けられるケース
フリーランスが利用できる所得控除には次のようなものがあります。
- 雑損控除
- 医療費控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 寄付金控除
- 障害者控除
- 寡婦控除
- ひとり親控除
- 勤労学生控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 基礎控除
たとえば「ひとり親控除」は、ひとり親である納税者(ここではフリーランス、または確定申告をする人)の所得から一定額を控除して税金の計算をします。所得控除額は35万円です。
またふるさと納税をしている人は所得控除とは別に住民税の控除を受けとれます。ふるさと納税による住民税控除を受けるときも確定申告で手続きをします。
確定申告をするフリーランスに重要なこと3つ
確定申告をスムーズかつ確実に、そして「楽に」進めるには次の3つのことを実行してください。
- 日々の帳簿づけ
- 確定申告のルール変更に注意を
- 「早く確実な方法」税理士に相談することも視野に入れる
日々の帳簿づけ
フリーランスは帳簿を毎日つける習慣を身につけたほうがよいでしょう。これをするだけで確定申告は格段に「楽に」なります。なぜなら頻繁に帳簿をつけることで経費の計上方法や勘定科目の選択が正確になるからです。確定申告書や決算書に記載する「数字」は、帳簿がベースになります。
また毎日帳簿をつけると、お金の流れを把握できるようになります。利益に敏感になったり、経費削減モチベーションが高まったりするでしょう。
確定申告のルール変更に注意を
国税庁は確定申告のルールを毎年「マイナーチェンジ」しています。大筋は変わらないのですが細かく変わります。
そのため「今年の」確定申告書は、「今年の」ルールで書かなければなりません。確定申告の作業に取り掛かる前に、国税庁のホームページで新ルールを確認しましょう。
「早く確実な方法」税理士に相談することも視野に入れる
確定申告の経験はどのフリーランスにも有益ですが、すべてのフリーランスが「完璧な確定申告スキル」まで必要なわけではありません。確定申告を何度か経験してある程度税の知識を身につけたら、経理業務も確定申告業務も税理士に任せてしまったほうが本業に専念できます。
税理士に任せれば、フリーランスは経費を見落とす心配からも領収書の内容を転記する時間からも解放されます。
フリーランスであっても業績が伸びたら、「外注」を利用したいものです。自分の仕事を外注に出せば時間を買えるからです。また外注は専門家の知見を得ることでもあるので、フリーランス自身のビジネススキルが向上します。つまり外注化は、ビジネスのコストパフォーマンスを高めます。
確定申告業務や経理業務の外注は、ドリームゲートに在籍している税理士アドバイザーの活用を検討してみてください。各業界に強みのある税理士に無料で相談できます。ご相談はコチラから可能です。
なお経理ソフトや経理クラウドサービスもフリーランスの強い味方になりますが、これらには次のようなデメリットがあります。
- 結局は自分で処理をするので間違いが発生し得る
- 按分などの複雑な計算をしなければならない
- 税務調査に対応できない
税理士に依頼すれば、上記の3つのデメリットも解決できます。
確定申告をしないと最悪「脱税」になる
確定申告が必要なフリーランスが確定申告をおこたると、最悪「脱税」になります。
確定申告をしないことによるペナルティ
確定申告をしないことによるペナルティは次のとおりです。
行為 | ペナルティ |
期限後に申告をする | 納める税金のほかに無申告加算税が課される |
所得金額の決定を受ける | 納める税金のほかに無申告加算税が課される |
税務署の調査を受ける前に自主的に期限後申告をする | 無申告加算税が5%の軽減される |
1)申告などで確定した税額を法定納期限までに完納しないとき
2)期限後申告書または修正申告書を提出した場合で、納付しなければならない税額があるとき 3)更正または決定の処分を受けた場合で、納付しなければならない税額があるとき |
延滞税が課される |
無申告加算税は「税」とついていますがペナルティです。無申告加算税の額は、納付すべき税額に対して50万円までは15%、50万円を超える部分は20%となります。
延滞税はいわば利息です。納付すべき税額に、年利7.3~14.6%の延滞税(利子)がかかります。
故意に確定申告をしないと刑事罰の可能性も
故意に確定申告をせず、それが発覚するとペナルティ(無申告加算税や延滞税)だけでなく刑事罰が科されます。正当な理由なく確定申告をおこなわないと、単純無申告という犯罪になり、1年以下の懲役または50万円以下の罰金となります。
特に悪質だと、犯罪名は申告書不提出となり、5年以下の懲役または500万円以下の罰金となります。そして、これを上回る悪質な行為とみなされると脱税となり、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金です。
逋税(ほぜい)という言葉があります。税金逃れをして納税しないという意味で、法学では脱税犯のことを逋税犯と呼ぶことがあります。
まとめ:フリーランスの確定申告は効率よく済まそう
フリーランスになると「納税の義務」を強く意識することになります。会社員時代も税金は支払っているのですが、勤務先の会社が納税手続きを代行してくれるので「税を支払っている」感覚がうすい状態です。
しかしフリーランスは自分で納めるべき税金の額を計算して確定申告書に記入し、税務署で確定申告をして納税しなければなりません。納税が身近に感じられます。そのため、確定申告はフリーランスにとって最も重要な手続きの1つといえますが、それに時間を取られすぎて本業をおろそかにするわけにもいきません。
そこで税理士への外注が有効になってきます。税理士に依頼したほうが、より確実かつ正確に確定申告ができてビジネスの時間も確保できます。フリーランスとして働いていくなら確定申告の効率化を考えてください。