1990年代後半から2000年代に生まれた「Z世代」のみなさん。ここに訪れるみなさんは何らかの形で「起業」に興味があり、この記事を読んでいることだろう。一方で、「正しい起業準備」ができているか、不安を抱えている人も少なくないはずだ。
わたしたちドリームゲートは、15年以上、起業家と各分野の専門家たちとともに、「日本に起業文化を確立する」というビジョンにむけて走ってきた。今回の記事では、今までの知見を活かし、これからのZ世代における「学生起業」のリアルや起業準備のあり方など、みなさんに役立つ情報を提供したい。
- 目次 -
学生起業にまつわる現状
この章では学生起業について、会社設立の法的環境や、スタートアップのトレンド、世界的な動きと日本の状況を解説する。
学生起業とは?
「学生起業」とは、「学生がみずから事業を起こす」ことをさしている。自分のめざす世界観の体現のためにサービスを立ち上げたり、社会課題を解決するためのNPOを設立したりなど形はさまざまだ。いいかえると学生起業は、学生が主人公のスタートアップなのだ。
スタートアップとは?
クラウド会計ソフトのfreee、人工知能のAI inside、家計簿・資産管理ツールのMoney Forward・・・いずれもここ数年で急成長したスタートアップ企業で、一部はIPO(新規株式公開)を果たしている。学生起業の成功事例も、ぽつぽつ出はじめている。ちなみに、上場企業リブセンス(ジョブセンス)の創業者、村上壮一氏が起業したのは大学2年の時だ。
スタートアップには、実にさまざまな形態がある。かつては自己資金(親せきや友達からの借金も含む)か金融機関による借り入れしか道はなかったが、最近は、ベンチャー・キャピタル(VC)やプライベート・エクイティ(PE)ファンド、さらにはフィンテックによる出資のケースも増えている。
エグジット(会社・事業・株式を売却して利益を得ること)のパターンも、IPO以外に大企業への事業譲渡、会社売却、M&Aなど実にさまざまだが、巨額の創業者利益ゲットも夢ではない。ちなみにメルカリの上場で、創業者・山田進太朗氏の持ち株評価額は2000億円に達したとされる。
会社設立について
学生起業は個人事業主でもできるが、将来の成長・事業拡張を視野に入れると会社設立が望ましい。その会社について、設立プロセス・運営ルール・ガバナンスなどについて取り決めているのが会社法だ。
現在の会社法は、2006年5月の改正をもってアウトラインができあがっている。
- 最低資本金のしばりがなくなり、資本金1円での設立ができるようになった。
- 有限会社に代わって、合同会社(LLC)の設立が可能になった
ちなみに改正とは直接関係ないが、未成年でも15歳以上なら代表取締役に就任できる(ただし保護者の許しが必要)
では、学生が起業するときに株式会社と合同会社のどちらが良いか、コストや手続きを考えると、合同会社を選びたくなる。
まず会社のルールである定款認証がいらないこと、申請時に支払う登録免許税がやすいこと、設立後の機関設計がわずらわしくないことなどだ(株式会社は、取締役会・株主総会・監査役会など体裁をととのえなければならず、手間がかかる)
だが、ドリームゲートは「株式会社」での設立をお勧めする。株式を発行しない合同会社では、増資などの資金調達がやりづらく、成長機会をのがすおそれがある。それにエグジット面でも、合同会社のままではIPOやM&Aもままならない。
ビジネスを大きくする夢があるなら、株式会社を設立すべきだ。
「会社設立」について詳しく知りたいなら、こちらの記事を参考にしてほしい。
https://kaigyou.dreamgate.gr.jp/qa/kaigyou/setsuritsu-touki/3066/
日本の学生起業の現状
残念ながら、日本で「起業」をめざす学生の割合は世界と比べるとまだまだ少ない。次の調査結果(世界50か国の学生を対象とした起業意識レポート)を見てほしい。
調査対象 | 参加国全体 (世界50か国1082の大学) |
日本の学生 |
卒業 5 年後に起業したい | 38.2% | 8.8% |
起業を準備している予備軍 | 21.9% | 12.8% |
既に起業している | 8.8% | 1.3% |
【大学生の起業意識調査レポートー法政大学経営学部教授 田路則子ら】より抜粋
こちらを見てわかるように、日本の学生においては起業を考えている人口というのは非常に少ない。これは学生に限らず日本人は起業する人口が世界に比べて少ないといわれているので、社会全体の傾向として見てとれる。
学生起業のメリット・デメリット
学生起業には多くのメリットがあるが、さまざまなデメリットも立ちはだかる。ここでは、学生起業のメリット・デメリットについて解剖したい。
学生起業のメリット
バーンレートが少なくて済む
「バーンレート」とは、会社経営をするにあたって発生する1か月あたりに消費するコストのこと。起業仲間が学生であれば大学で打ち合わせをすることができ、起業準備にあたってもコストを最小限に抑えられる
バーンレートが少なくてすむ学生起業は、その分コストを事業やプロダクトに投資することができ、より早く成長していけるメリットがある。
学生をターゲットにしたビジネスモデルに強い
「学生起業」をするなら、学生をターゲットにしたビジネスモデルがおすすめ。市場・顧客ニーズ調査も含めて、学生である強みを充分に活かすことができるからだ。 みずからが日々学生として過ごす中で感じる痛みや課題の解決は、日本・世界の学生の痛み解決につながるだろう。
将来的に副業として事業を回すこともできる
大学在学中などに起業をし、ある程度の収益が回る場合、就職後もその事業を副業として続けることもできる。近年では、働き方改革の一環として政府が副業解禁を推奨しており、実際に多くの企業が副業を解禁している。将来の副業として、スモールビジネスで起業するのもいい。
大学をフル活用できる
学生であることによって、大学にいるさまざまな分野のスペシャリストである教授に話を聞いてもらえる。それだけでなく、もし経営やビジネス領域の授業を受けられるのなら、質のいい情報を実践で活かすことができる。
失敗も「経験」として評価され、就職のネタになる
起業には失敗がつきものだ。だが、学生起業はその「失敗」が就活では大きく評価される。
会社の登記を行うだけでなく、自身の事業をスケールさせるために努力をし、戦略に基づく行動をしてきたそのスタンスと経験は間違いなくあなたの力となる。
学生起業のデメリット
経験や専門知識がない
社会人経験の少ない学生が起業する場合、実績がある優秀な社会人のメンターや実際に学生起業した経験のある人から学ぶことをおすすめする。起業をするのであれば、サービスをみがき上げ、事業を成長させていくことが何よりも重要なことになる。もし、学生起業をめざすのなら、実績があり、優秀な社会人のメンターを見つけるといい。
学業が疎かになる
学生の本職ともいえる、学問を究める時間が少なくなる。「学校に行かない」という選択が必ずしもいいものとはいえない。学生起業で成功している人でも、学校に通いながら自分の事業を立ち上げている人も多くいる。自分自身はどうするべきなのか、学業とどうむき合うのか、学生として一度しっかり考える時間を作るのも大切だ。
友達と過ごす時間が少なくなる
学生の時期を起業についやすということは、友達と遊んだり、旅行に行く時間が必然的に少なくなる。周りの友達がワイワイ遊んでいる姿がうらやましく思うかもしれないが、それをガマンして、自分が作るプロダクトの成長にコミットした起業経験は必ずみずからがこれからの社会で生きいくための「こやし」になるだろう。
資金調達が行いづらい
社会人経験が少なく、実績もない学生は民間金融機関から融資を受けることは比較的難易度が高い。学生起業に挑戦するにあたって、公的機関からの融資を検討するのであれば、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」など無担保・無保証で自己資金の約10倍の資金を調達することが可能だ。
しかし実際には、実績がある社会人でも公庫からの借り入れは、借り入れ額の1/3程度の自己資金が必要だ。基本的に資金調達には、資本政策なども含めた事業説明が求められるので、プロダクトを作り込むだけでなく、需要の根拠や市場価値なども示せることが必須になる。学生起業家にとって有効な資金調達の仕方については後述する。
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デジタルネイティブ世代 ~Z世代の学生起業の成功事例~
デジタルネイティブ世代というのは、生まれた時よりIT製品が普及している環境に育った世代を表しており、その中でも、1990年代後半~2000年初頭に生まれた世代を「Z世代」という。Z世代の学生起業家たちが新たに生み出すサービスの成功事例を紹介しよう。
Follop
岡山大学工学部3年の富山 知輝さんを代表とする株式会社Follopが開発したサービス。
「個人の価値が評価される時代を創ること」をビジョンに掲げ、マイクロインフルエンサー事業を中心にサービスを展開中。
ECOLOGGIE
早稲田大学商学部4年の葦苅 晟矢さんが展開する「コオロギの大量繁殖技術と養魚飼料としての普及で食糧問題を解決する」プロジェクト。食糧問題を解決する未来食といわれる昆虫。ニッチな産業から大きな社会課題の解決をめざすスタートアップだ。
Picable
人類の価値観を変えるサービスを創りたいと志す慶応義塾大学大学院に通う小島貴之さんを筆頭に立ち上がったサービス。「離れていても、一緒に楽しむ」をコンセプトに動画やWebなどをリアルタイムで同期しながら楽しむことができるアプリを開発。今後の活躍に大きく期待したい。
PoliPoli
「テクノロジーで国家システムを再構築する」をミッションに活動する株式会社PoliPoli。
あなたの課題を政治家とみんなと解決するアプリ「PoliPoli」をリリースし、政治家と国民の距離を縮める新しいサービスだ。多くの自治体とのコラボもしており、2019年1月16日にはアプリをリニューアルし、UI/デザインが一新された。代表の伊藤和真さんを筆頭に新しい社会へむけて奔走する大注目のスタートアップだ。
Taimee
一人ひとりの時間を豊かにするというビジョンをもとに立教大学経営学部4年の小川嶺さんが立ち上げた「すぐ働けてすぐお金がもらえるワークシェアリングサービス『Taimee』」は現在急成長を遂げている。2019年10月末には総額20億のシリーズBにおける第三割当増資により調達した。
最近では「タイミートラベル」という旅気分で働きながら現地の人と触れ合い“第二の故郷をみつける”ことができる新サービスもリリース。
「Z世代」ならではの起業準備の仕方とは?
SNSの活用
Yentaの活用で広がる人脈
学生起業において、「社会人とのつながりが少ない」という点は大きなデメリットの一つである。その問題を解決するためには、ぜひこのyentaというアプリがおすすめだ。完全審査制によるAIビジネスマッチングアプリで質のいい出会いを体現している。起業後に出資を受けるエンジェル投資家との出会いやメンターとの出会いなど優秀なビジネスマンと出会うためにはもってこいのアプリだ。
SNSの情報発信や情報収集
最近では日本のビジネスマンのFacebookからTwitterへの移行が始まっており、Twitterからの採用だったり、情報収集を行う人も増えてきている。スタートアップの経営者やベンチャーでバリバリ働いている社会人の方々も含め、自己ブランディング目的で利用している方もかなり増えてきている印象だ。
Twitterは投稿の文字量に制限がかかっており、1つの投稿がまとまっていてかなり見やすい構造になっており、情報鮮度や情報内容が濃く、これから起業をする、または起業している学生にとっては必要不可欠なツールの一つである。
令和時代の学生起業のアイデアの見つけ方
情報収集はできたとして、その情報をどのように学生起業のアイデアに結び付ければいいか、いくつかのヒントを考えてみたい。
- 自分の好きなこと得意技をとことん追求する
- すでにうまくいっているビジネスモデルをマネる
- 自分が不便に感じることからナゼを考える
- 世の中のサービスや商品は「なぜあるのか」本質を考える
- 日常の生活や風景から企業のアイデアを探る
くわしくは、次の記事を参考にしてほしい。
学生起業における資金調達について
起業し、会社を経営していくことになると、必ず必要になってくるもののひとつとして「資金」がある。人を雇ったり、税金を払ったり、サービスをスケールさせたりするためには、この資金が必要だ。この会社経営においてとても重要な資金を「学生起業」の場合どう調達したらよいのか、くわしく説明していきたい。
クラウドファンディングによる資金調達
クラウドファンディングとは、「インターネットを通じて不特定多数の人たちに資金提供を求め、自身のプロジェクトや事業に共感した人からお金を募る方法」だ。
クラウドファンディングの種類は4つほどある。
- 「購入型クラウドファンディング」:みずからのプロジェクトに必要な目標額と出資期限を設けて、支援者を募る。金銭以外のリターンが設定されているのが特徴。
- 「寄付型クラウドファンディング」:NPOや研究機関、地域活性プロジェクトなど社会貢献度の高いプロジェクトを中心に寄付を募るクラウドファンディング。
- 「融資型クラウドファンディング」:不特定多数の出資者からの資金を借り手に出資して、その投資家に対して、分配金をつけて資金を返済するクラウドファンディング。
- 「株式型クラウドファンディング」:企業が資金調達するために、未公開株を提供する代わりに出資を募るクラウドファンディング。IPOやM&Aをめざす企業が出資を募るが、まだ日本では実績がないのが現状だ。
学生起業において、クラウドファンディングという資金調達方法はかなり魅力的だ。民間金融機関などから出資を受けづらい背景を考えると、ぜひ利用したいサービスの一つである。
エンジェル投資家やベンチャーキャピタルからの資金調達
学生起業において、一つの重要なポイントでもあるメンターの存在。ベンチャーキャピタル(以下VCと略)やエンジェル投資家の実績あるところから出資を受けることでさまざまなサポートを受けられるメリットがある。また、VCからの出資だと事業提携先の紹介を受けることができるのも大きなメリットだ。学生起業家に多く出資しているVCもあるため、調達の時にはVCからの調達も視野に入れたいところだ。
バイト、インターンなどで最小限の資金を集める
学生起業のスタートは基本スモールビジネスから始めることが好ましい。バーンレートが少なくて済む学生起業はコストを最小限に抑えることができるため、バイトやインターンでお金を貯めることも有効な資金調達方法である。
ビジネスコンテストでの入賞
ビジネスコンテストで入賞することで、何も担保にすることなくお金をもらうことができる。それだけではなく、コワーキングスペースの無料貸し出し権や出資企業先の紹介などの特典も魅力的だ。ただし、自分のビジネスモデルを公開し、ビジネスモデルを盗まれてしまう可能性があることも把握しておきたい。
資金調達に必要な「事業計画書」とは?
資金調達にあたっては、事業計画書が欠かせない。事業計画書は、起業後数年間の資金繰り・キャッシュフロー、売上成長率、販促費予算、商品・サービスの顧客ターゲット・チャネル、商品のサプライヤーなどに基づき、事業の持続性を検証した資料だ。
金融機関にとってみれば融資の回収可能性、得意先にとっては安定した商品供給などが気がかりなはずで、事業計画書はこうした関係者(ステークホルダー)に対する大切な参考資料だ。
同時に、事業計画書はあなた自身にとっても欠かせない。みずからの事業が本当に実現可能なのか検証し、細かいところまで練り上げていくのに事業計画書は欠かせない。
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学生起業家の卒業後の道
学生起業家の活動は、卒業とともに終わりを告げる。卒業後どのような道を歩むかは、会社のメンバーや取引先といった関係者のためにも早めに決めておきたい。
そのまま経営者として事業を続けるもよし、事業を売却・譲渡して就職するか別の事業を始める、あるいは就職し副業として事業を続ける(のちに売却やそちらを本業にすることを見すえる)道もある。
学生起業において大切なこと
Why?を突き詰めること
わたしはなぜこのサービスをやるのだろう。なぜ起業したいのだろう。その問いを何度も自分自身に説いてみることをおすすめする。もし、仲間がいるのであれば、チームとしてその思想を何度も考え、自分たちがめざす世界観の意思統一を図ることが何よりも大切だ。
なぜこの「Why」が大切なのか。チームの中で事業の核となるビジョンが共有されていないと、ピボットの方向性の相違によってチームが分裂してしまったり、みずからがどこに向かって走っていけばよいのかわからなくなり、目的を見失ってしまうからだ。
時間を無駄にしない
ここに訪れている学生起業家の卵たちは、すでに気付いているだろうが、学生というブランドを有効活用できるのも「学生」であるうちだけだ。学生起業家というだけで、メディアの露出も増えたりなどさまざまな利点が多く存在する中、そのバリューを使える期間はとても短い。もし起業を本気でめざすであれば、さっそく準備をはじめよう。
たくさんの「人」に会うこと
これからの時代、起業をめざさなくとも「つながり」というソーシャルな資本は大きな価値となる。学生時代に何かを目指し、アクションを起こし、たくさんの人と出会い、つながりを創ること。起業をめざすのなら、なおさらこの「つながり」は資産となり、起業後の事業を加速させるためには必要不可欠なものとなるだろう。
まとめ
今回は「学生起業」にフォーカスをあてて、起業家を紹介したり、リアルな学生起業の準備のやり方、起業において大切なことなどについて記事を書いてきた。どんどん社会のストラクチャーが変化し、第4次産業革命も起こりつつある今、物心ついたころにはIT社会で生きていた「Z世代」は、これからの社会で大きなバリューを発揮することだろう。
わたしたちドリームゲートでは、学生起業家が活躍しやすい環境をととのえるためにも活動している。法務や会計のプロ、会社設立のプロなどさまざまなフィールドのプロフェッショナルが相談に乗ってくれる。もしあなたが学生起業家の「たまご」ならば、ぜひ一度相談してみてほしい。
https://www.dreamgate.gr.jp/kigyou_soudan_top/
事業計画作成サポートツールでは、健全経営をしている先輩経営者を独自調査した結果と、あなたが作成した事業計画とを比較・判定が出来ます。
開業資金と売上見込みを入力するだけで、あなたの事業計画の安全率を測定することが可能です。
さらに、作成した事業計画はCSV形式、Excel形式、PDF形式でデータをダウンロードでき、日本政策金融公庫の融資申請時の事業計画書としてご利用頂けます。
あなたの事業計画は成功する計画かどうか、ぜひチャレンジしてみてください。
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