私は東京で「融資・補助金に強い専門家」として活動しているドリームゲート・アドバイザーの川居宗則です。メガバンクに32年勤務し、主に融資業務に従事、関わった案件は10,000件を超えます。2か店の支店長を経験して銀行の現場で感じたことを活かし、融資のアドバイスやセミナーを行っています。
創業の資金調達には、計画書作りが必要となります。とはいっても、多くの創業者が初めてのことで、手探りの状態からのスタートではないでしょうか?
日本政策金融公庫では「創業の手引」をWeb上で公開しています。創業融資の審査に通るためには、この手引の理解を深めることが近道となります。
このコラムでは3回にわたり、元・銀行支店長の視点・経験から、全40ページにわたる「創業の手引」から“ここだけは押さえてほしいポイント”を解説します。
初回は、創業計画書を作るための骨格となる「ビジネスプランの立て方」を採り上げます。
- 目次 -
ビジネスプランの立て方「アイデアの整理」
日本政策金融公庫の創業計画書作成にとりかかるうえで、まず創業にかける想いを棚卸しすることをお勧めします。
「創業の手引」では、“「やりたいこと」、「できること」、「ニーズ」の 3 つ全てを満たすビジネスであれば、継続できる可能性が高いビジネス”と言えるという説明があります。
「やりたいこと」:いつ、どこで、どんな経験をして、創業したいと考えるようになりましたか?→
ここは、ご自身がこれまでどのような経験をしてきて、その経験を通じてどのような事業を創業したいかまとめましょう。
「できること」:知識、経験、人脈、自分が住んでいる地域の資源など、事業に生かせるものはありますか?→
ここは、創業に活かせるご自身のスキルやノウハウ、経験を棚卸ししましょう。例えば、アパレル会社の企画部門でノウハウを蓄積して、アパレルショップを開業するなどです。
「ニーズ」:現行の商品・サービスに不満を感じることや、地域や社会で問題になっていることがありますか?→
ここが大変重要です。「やりたいこと」「できること」が世の中のニーズに合っているかということです。とりあえず創業してニーズを探る形ではリスクがあるので、融資が通りにくくなります。第三者がみて“なるほど”と思ってもらわないといけません。コロナ禍をきっかけに“新たな日常生活”と言われています。例えば、リモートワークにも着用しやすいアパレルということならば、今後のニーズへの説明がしやすいでしょう。
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ビジネスプランの立て方「3C分析」
ご自身の「やりたいこと」「できること」が、「ニーズ」に合っているか検討した次には、成功可能性が高いかどうか「3C分析」という手法で検討しましょう。
3C分析とは顧客(Customer)、競合他社(Competitor)、自社(Company)を分析することです。
1.顧客(Customer)
ビジネスのターゲットとする顧客について、以下のように切り口を4つに分けて考えます。
①ターゲットの属性:年齢、性別、職業、居住・ 勤務地域、特定の趣味などです。顧客像といっても構いません。ここをしっかりとイメージできることで、このあとの販売戦略が具体化します。
②ターゲットのニーズ:求めている商品・サービス、現行の商品・サービスの不満点などです。創業する前は、自らも消費者の目線でこんな商品・サービスが欲しいというところを思考しましょう。
③ターゲットの市場規模と近年の推移:アパレルショップを創業するならば、対象とするターゲット顧客が多く住んでいる地域を選びます。飲食店ならば、来店してくれるターゲット顧客が多く通る場所が有利です。
④ターゲットの購買行動:有効な宣伝方法や販売方法などです。自社の商品・サービスについてどのような形でターゲット顧客に到達できるかということです。いくら良い商品を置いていても、その商品の良さを伝えなければなかなか来店してもらえません。ネットを上手に活用することも一策です。
2.競合他社(Competitor)
①競合企業の状況:例えば出店する場合、ライバルになる店舗が営業エリア内にどのくらいあるかということです。飲食店などは、グーグルの地図情報などを使えば、調査が進みます。事前に調査してまとめておけば、創業計画書の付属資料として活用できます。
②競合企業の特徴:商品・サービスの内容、ターゲットなどです。ライバル店舗がある場合は、できるだけ実地調査をしておきましょう。また、ホームページがあれば比較することが可能です。
3.自社(Company)
①自社の有形の経営資源:設備、機械、車、不動産などです。活用できる、目に見える資源のことです。店舗を出店する際に、自己所有物件を活用するか、賃貸するかでは違います。賃貸の場合はどうしても貸主の条件に拘束されます。また、例えばキッチンカーを所有していればそれだけでも相当の設備を持っていることになります。
②自社の無形の経営資源:スキル、人脈、従業員などです。有形の経営資源は、資金を調達すればある程度、保有することはなんとかなりますが、無形の経営資源は、これまで創業者が培ってきた経験なしには保有することができません。いわゆる創業者が独自に持っている資源です。
③自社の優位点:競合の事業者に比べて優位な点です。取扱いの商品・サービスが競合他社と差別化している、設備が整っている(例えば3密回避の徹底など)、アクセスしやすい(来店や連絡方法など)等、この強みをいかに持つことができるかが成功のカギになります。
4.3C分析による事業領域
前述の3.のところでは、顧客のニーズ、競合他社ができること、自社ができることを検討しました。この図は、その事業領域を図に表したものです。事業を行ううえでは、顧客のニーズに重なっている領域であることが必要です。自社が得意でも、顧客ニーズに合致していなければ事業として成り立ちません。そのうえで、以下の領域について考えましょう。
領域①(レッドオーシャン):顧客ニーズがあり、競合他社ができること、自社ができることの3つが重なっています。多くの事業者が参入していることから、価格競争に陥りやすい領域です。いわゆるレッドオーシャンと言われるところです。
領域②(ブルーオーシャン):顧客ニーズがあり、自社ができる領域であり、競合他社が入ってこない領域です。自社が競合他社と差別化できていることから利益を確保しやすい領域で、いわゆるブルーオーシャンといわれるところです。
実際の事業では、必ずしもこのようにはっきりとエリア分けができるものではありません。しかし、中小事業者はできるだけ顧客ニーズがあり競合他社が少ない領域で事業を行うことが重要です。サッカーの試合でも、相手に囲まれているとなかなかゴールができませんが、相手がいないフリーな状況ではゴールを決めやすくなります。創業者の方にはぜひ多くのゴールを決めていただきたいと思います。
ビジネスプランの立て方「ビジネスモデルの具体化」
さあここまでくれば、あとは具体的に顧客に提供する商品・サービスの内容を決めるとビジネスモデルが出来上がります。
実際の、日本政策金融公庫「創業計画書」では、以下のような箇所に記入します。
ビジネスプランが出来上がっていれば、「誰に」「何を」「どのように」提供するかという観点から記載することができます。
しかも、できるだけ競合他社と差別化した事業領域を意識しているので、融資審査のポイントが高くなります。
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さいごに・無料相談をご利用ください
ビジネスプランの立て方として「アイデアの整理」「3C分析」「ビジネスモデルの具体化」について説明しました。
プランニングという作業は時間がかかり、少し手間かもしれません。しかし、「急がば回れ」でステップを踏んで検討していくことで、創業という夢の実現に近づきます。そして、しっかりとプランニングすることが創業後にも活きてきます。
とはいえ、創業者お一人でプランニングしていると、煮詰まることがあるかもしれません。また、第三者の意見を聞きたくなることが起きるかもしれません。
私は、これまで1万件以上の計画書を見てきました。創業計画のサポートがほしい場合などは、ぜひ一度ご相談ください。
初回相談は無料です。
【参考】
日本政策金融公庫 創業の手引、創業のポイント集 「創業の手引」
https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/sougyou03.html
日本政策金融公庫 国民生活事業 各種書式ダウンロード 「創業計画書」
https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html
執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 川居 宗則
(かわい むねのり) /経営デザインコンサルティングオフィス
長年金融機関に勤務し、融資課長、支店長を経験し、融資実行は5,000社以上という実績を持つ川居アドバイザー。融資以外にも、補助金・助成金なども相談できます。資金調達の力強いパートナーになる方です。
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