「お金をもらいながらM&Aの案件を探せる仕組みがあるとは知りませんでした」
「出資してもらってからM&Aをする話はすごく刺さりました。詳しい話を聞きたいです」
これは昨年11月に開催したセミナーを受講くださったお客様からのお声です。
「最強の起業ビジネスモデル」と題したそのセミナーでは、起業を成功させる7つのパターンをご説明しました。そのなかで、第7の手法への反響がひときわ高く、受講者アンケートでも冒頭に挙げたようなコメントが多く寄せられました。
その手法の名は「サーチファンド」。
今回のコラムでは、この「お金をもらいながらM&A案件を探せる仕組み」、サーチファンドをご紹介します。
- 目次 -
サーチファンドとは
「サーチファンド」?
このワードをここで初めて目にした人もいらっしゃるかもしれません。
起業の際にM&Aによる事業承継を利用する、いわゆる「M&A起業」への関心はここ数年のあいだに相当に高まってきました。
2018年4月に刊行されブームのきっかけとなった三戸政和氏の「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」(講談社+α新書)以降、小規模M&Aによる起業/事業承継をテーマにした書籍は数多く出版されています。
一方でサーチファンドに関して書かれた書籍は2022年3月末時点ではまだ1冊もありません。
というのも、サーチファンドを運用する法人が日本国内に誕生し始めたのは2018年5月からなのです。実際に投資が実行され事業承継が完了するまでに2年程度かかるケースも多いので、実績が報告されはじめたのは本当にここ1~2年のこと。
欧米の起業家には1990年から2000年代にかけてすでに普及しているサーチファンドですが、日本国内ではまだピカピカに新しい選択肢なのです。
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サーチファンドとは、M&A起業をする人が出資を受ける仕組み
サーチファンドとは、M&A起業する人が、投資家からの出資を取り付けてから承継する会社を探すという手法です。
サーチファンドを利用してM&A起業しようとする人は「サーチャー」と呼ばれ、まずは買収の対象企業を探す(「サーチする」)過程に対する出資を受けます。これを「initial search capital」といいます。
案件を探すこと自体にかかる費用や、デューデリジェンスなど専門家のサポートをお願いする際の費用、交渉や面談にかかる旅費・交通費、サーチャーがフルタイムで活動して他からの収入がない場合にはその生活費などに、initial search capitalが適用されます。
これが、お金をもらいながらM&A案件を探すという状態ですね。
さて、サーチ活動の結果、承継したい企業を絞り込むことができ、現経営者とのあいだで譲渡の合意が得られた場合は、実際に買収するための資金を追加で受けます。こちらは「acquisition capital」といいます。
これにより買収を完了させたら、サーチャーはめでたく当該企業の経営者となって事業に専念することになるのです。
これが出資を受ける側からみたサーチファンドの概要です。
活動開始から買収完了まで2年程度と先に述べましたが、これは金銭的な支援のおかげで2年ほども時間をかけてじっくりと検討することができる、と言い換えてもよいでしょう。
もちろん出資者は事業投資として資金を拠出しています。サーチファンドのゴールは買収完了ではなく、この企業の価値が上昇したのちにキャピタルゲインを得ることです。
ですから、サーチャーは自分が事業価値の向上にしっかり貢献できると確信できる承継先を探さなければなりません。
「お金をもらいながらM&Aする会社を探す」という言葉の印象ほど簡単なものではなさそうです。
簡単なものではないですが、それでもこれから起業しようという人には、ぜひご検討をおすすめします。
特に、
- 「2~3年後には独立する」と真剣に考えている
- どんな経営をしたいのか、イメージを明確に持っている
という人は、サーチファンド起業にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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サーチファンド起業をすすめる4つの理由
サーチファンドをおすすめする理由をさらにもう少し詳しくご説明します。
1.日本では仕組み化されている
欧米で先行して普及したもともとのサーチファンドでは、最初のプロセスは「投資家を募りファンドを組成する」というものでした。サーチャー自らが投資ファンドを組成しないといけなかったのです。
……できますか?ファンドの組成(笑)。少なくとも私はできません。
プロセスの最初から障壁が高すぎると感じてしまいますよね。
しかしながら2022年の日本では、サーチファンドを利用する際に投資家を訪ね歩くところから始める必要はありません。
2018年以降、国内にサーチファンドを紹介する法人が誕生し始めましたが、彼らがプロセス全般をサポートする「アクセラレーター」としてファンドを運用してくれるのです。
株式会社ジャパン・サーチファンド・アクセラレーター(JaSFA)は2018年、株式会社サーチファンド・ジャパンは2020年に、それぞれ設立されました。
JaSFAは2019年2月に山口フィナンシャルグループと共同でエリア限定の投資ファンドを設立。サーチファンド・ジャパン社も2020年11月に全国を対象とした第1号ファンドをすでに設立しています。
つまり最初のステップである投資ファンドの組成はすでになされていて、案件を待っている状態なのです。あなたはこうした組成済みのファンドにサーチャーとして登録するところから活動を開始できるのです。各投資家にそれぞれがやみくもにアプローチしなくてもいい、はるかに効率のよい体制が用意されているといえます。
2.支援は金銭面以外にも受けられる
小規模M&Aに実際に取り組んだことのある人は、「これだ!」と前のめりになれる理想的な売り案件と出会うことの難しさを実感なさったのではないでしょうか。
M&A起業の意欲が高まる一方で、売り案件が相対的に少ないことは以前より指摘されていました。母数が少ないということは選択肢の幅も自ずと狭まります。私もクライアント企業のM&Aをお手伝いしていますが、待っているだけでは買い手側の要望を満たす案件とはまず出会えません。
では、どのようにサーチすればよいのか。
日常的にM&Aに取組んでいるプロフェッショナルは、売り案件をどのように探しているのか。
といったような、自分一人の活動では解決の難しい問題に対する指導や情報提供も、サーチファンドのサポート内容に含まれます。
もちろんサーチ方法に範囲を限らず、活動中のサーチャーが直面する幅広い課題に対して、専門家の知見や独自ネットワークからの情報などを提供してくれるのです。
私などがサーチファンドを起業の「仕組み」としてご紹介できるのは、彼らアクセラレーターの存在があってこそ、だと言えます。
3.サポートは事業承継までで終わらない
エンジェル投資家が投資先スタートアップ企業の経営者に先輩経営者としてアドバイスすることは珍しくありません。これにはもちろん後進を育成する、応援するといった意図が大きいのですが、もうひとつ投資先企業の業績が上がることが双方の利益になるという構造的な動機もあります。
サーチファンドでも同じです。彼らの収入はコンサルフィーではありません。投資に対するおもなリターンはイグジットを成功させた際のキャピタルゲインです。サーチャーが経営者として承継した企業の価値を首尾よく向上させられるよう、彼らはイグジットまで伴走します。
2021年の日本政策金融公庫の調査では、前年度に起業した人の約75%は自己資金だけで起業しています。「カネを出されると口も出されて面倒くさい」と考える向きもあるでしょう。しかし実際に重要な経営判断に直面し、経営者の孤独を一度味わってしまうと、伴走者のような存在をありがたいと改めて認識することも多いのです。経験豊かな経営者ほど、実はメンターを持っています。
ファンドとは数々の企業の経営改善に携わってきた、ある意味「経営のプロ」です。駆け出しの経営者にとって彼らの助言が得られる環境は大きなメリットだと思います。
4.これからますます注目される
さて、おすすめ理由の1.~3.が確実なメリットだったのに対し、これからご説明するのは何のお約束もできない、あくまでオマケ、余禄です。
今後サーチファンドの認知が高まってくると、詳しいことを知りたい人も増え、さまざまなメディアで取り上げられる機会も増えると予想されます。これはほぼ間違いないでしょう。
このとき、ちょうど事業承継を完了したところの案件があれば、サーチファンド起業の実例として同時に紹介されることが期待できます。経営を始めるタイミングで、会社や事業の情報がメディアによって伝えられることに、どこまで効果があるかは業種やメディアの種類にもよりますが、少なくともデメリットになることはないでしょう。
これが例えばフランチャイズ加盟のような一般的な選択肢として広く普及・浸透してしまった後であれば、メディアが取り上げる機会は減っていきます。ニュースバリューが下がるからです。また、サーチファンド進行中の案件数が増えてしまっても、その中から選ばれる確率がまた減ります。
自分の事業がメディアに紹介される期待は、まだサーチファンドが選択肢として新鮮なうちほど高い、ということです。
繰り返しますが、必ず取材されるという保証のある話ではありません。あくまで可能性について述べているとご理解ください。
以上が、サーチファンドを利用した起業をおすすめする理由です。
いかがでしょうか。興味・関心を持っていただけたでしょうか。
サーチファンド起業のメリットを感じたとすると、次に気になるのは、「では、どうすればサーチャーになれるのか」ということだと思います。
サーチャーになるために必要なものは何か、ということを次回のコラムでお話しします。
筆者が6月1日にサーチファンドを利用した起業についてのオンラインセミナーを実施します>>
執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 池田 孝治氏
(株式会社エストVISION 代表取締役社長)
学生時代からマーケティングを専攻し、大手エンタテイメント企業のマーケティング担当として従事。
事業を創業した際に必要な顧客は集客活動ではなく「相手に貢献したいという思いが連れてくる」を信条として商いの理想を追求し続ける。
業種にとらわれず多数の事業で「ファン作り」のメソッドを提供。
この著者の記事を見る
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