産業雇用安定助成金とは ピンチでも雇用し続ける企業を支援

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

企業が労働者の雇用を維持するために在籍型出向をおこなったとき、厚生労働省の産業雇用安定助成金の対象になるかもしれません。在籍型出向とは、労働者を出向先事業所に出向させるものの、引き続き出向元事業主と雇用関係を保つ形態のことです。出向者が出向元事業所に戻ることを前提としています。

産業雇用安定助成金には、次の3種類があります。

  1. 雇用維持支援コース
  2. スキルアップ支援コース
  3. 事業再構築支援コース

3は在籍型出向には関係しないので注意してください。

この記事では3つのコースの概要や要件などを解説します。

 

3つのコースは別物と考えて 

3つのコースは、さまざまな事情がありながらも雇用を継続する事業主を助成する点が共通しています。しかし、3コースに共通する要素は制度趣旨のみで、そのほかについては以下のような違いがあります。

  • 在籍型出向に関する制度(スキルアップ支援コース)
  • 新型コロナ対策の制度(事業再構築支援コース)
  • 在籍型出向および新型コロナ対策の制度(雇用維持支援コース)

このような性質があるため、申請を検討している事業主は3つのコースは別の制度と考えて、その内容を比較検討したほうがよいでしょう。以下、コースごとに助成内容や要件、受給までの流れなどを解説します。

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1  雇用維持支援コース 

雇用維持支援コースは、新型コロナの影響で事業を一時的に縮小した事業主の支援を目的としています。事業主が在籍型出向のしくみを使って、雇用を維持したときに、その賃金や経費の一部を助成する制度です。。助成の対象は原則として、出向元事業主と、出向先事業主の双方になりますが、一部例外があります。

助成の内容と助成額

雇用維持支援コースの助成には、次の3つがあります。

  1. 出向初期経費助成
  2. 出向運営経費助成
  3. 出向復帰後訓練助成

(1)出向初期経費助成は、出向前に必要な措置に対して以下の額を助成します。また、出向先事業主は1年度当たり500人が上限です。 

対象※ 出向元事業主、出向先事業主
助成金 1人10万円
加算額 1人5万円

※企業グループ内出向は対象外

「出向前に必要な措置」は主に次のような措置があげられます

  • 就業規則や出向契約書の整備費用
  • 出向に際してあらかじめおこなう教育訓練
  • 出向者を受け入れるための機器や備品の整備(出向先のみ)

出向元事業主または出向先事業主が次の条件を満たした場合には、助成額が加算されます。

  • 雇用過剰業種の企業や生産量要件が一定程度悪化した企業からの送り出し(出向元事業主)
  • 異業種からの受け入れ(出向先事業主)

(2)出向運営経費助成は、賃金、教育訓練、労務管理について調整したときの経費を助成します。 

対象 出向元事業主、出向先事業主
上限額 出向元事業主と出向先事業主の合計が11日あたり12,000
助成率 ●出向元事業主が労働者の解雇などをおこなっていない

中小企業910、中小企業以外34

●出向元事業主が労働者の解雇などをおこなっている

中小企業45、中小企業以外23

●企業グループ内出向の場合

中小企業23、中小企業以外12

(3)出向復帰後訓練助成は、出向から復帰した労働者に対し、出向先事業所で獲得したスキルや経験をブラッシュアップする訓練をおこなったときに、訓練に関する経費と訓練期間中の賃金の一部を助成します。

対象 出向元事業主のみ
経費助成 実費(上限30万円)
賃金助成 11時間あたり900円(上限600時間)

 助成対象になる訓練は、復帰3カ月以内の開始や、6カ月以内の期間などの要件があります。

助成金を受けるための要件

 助成を受けるための要件は以下のとおりです。

  • 新型コロナで事業を一時的に縮小した事業主が、雇用維持を目的とした出向を実施すること
  • 出向終了後は元の事業所に戻って働くこと
  • 出向元事業主と出向先事業主が資本的、経済的、組織的に独立していること(例外規定あり)
  • 出向先事業所で別の人を離職させるなど、玉突き出向を行っていないこと

受給するまでの流れ

助成金を受給するまでの流れを紹介します。

ステップ1:出向の計画を立てる

出向の具体的な内容の計画を立てます。

ステップ2:計画届の提出

出向計画の内容について、出向元事業主が計画届を都道府県労働局に提出します。

ステップ3:出向を実施する

計画届に基づいて出向を実施します。

ステップ4:支給申請

出向の実績に基づいて、出向元事業主が助成金の支給申請をおこないます。

ステップ5:審査と支給決定

都道府県労働局が支給申請の内容に基づいて、出向元事業主と出向先事業主のそれぞれを審査します。審査に合格すれば支給が決定します。

ステップ6:助成金の振り込み

支給決定された額が出向元事業主と出向先事業主それぞれに振り込まれます。

申請の注意点

申請の注意点は以下のとおりです。

  • 出向する労働者に対して、出向前に本人の同意を得て、労働条件を明示する必要があります
  • 出向元事業主と出向先事業主は、出向契約を締結する必要があります

 

2  スキルアップ支援コース

スキルアップ支援コースは、労働者のスキルアップを在籍型出向によりおこなった出向元事業主の支援を目的としています。復帰した際の賃金を出向前と比較して5%以上上昇させた場合に、当該事業主が負担した出向中の賃金の一部を助成します。

助成の内容と助成額

助成の内容と助成額などは以下のとおりです。

対象※ 出向元事業主
助成額 以下のいずれか低い額に助成率をかけた額(最長1年)

●出向労働者の出向中の賃金のうち出向元が負担する額            

●出向労働者の出向前の賃金の12の額

助成率 中小企業23、中小企業以外12
上限額 118,355円まで

1事業所1年度あたり1,000万円まで

企業グループ内出向の場合は対象外 

助成金を受けるための要件

助成を受けるための要件は以下のとおりです。

  • 労働者のスキルアップを目的として実施する出向であること
  • 出向期間終了後は元の事業所に戻って働くことを前提とすること
  • 労働者の出向復帰後6カ月間の各月の賃金を出向前賃金と比較していずれも5%以上上昇させること

受給するまでの流れ

助成金を受給するまでの流れを紹介します。

ステップ1:出向の計画を立てる

出向の具体的な内容の計画を立てます。

ステップ2:計画届の提出

出向計画の内容について、出向元事業主が計画届を都道府県労働局に提出します。

ステップ3:出向を実施する

計画届に基づいて出向を実施します。

ステップ4:出向復帰労働者の賃上げ

出向復帰後の労働者の賃金を出向前賃金と比較して5%以上上昇させます。

ステップ4:支給申請

出向の実績に基づいて、出向元事業主が助成金の支給申請をおこないます。

ステップ5:審査と支給決定

都道府県労働局は支給申請の内容に基づいて審査します。審査に合格すれば支給が決定します。

ステップ6:助成金の振り込み

支給決定された額が振り込まれます。

申請の注意点

申請の注意点は以下のとおりです。

  • 出向する労働者に対して、出向前に本人の同意を得て、労働条件を明示する必要があります
  • 出向元事業主と出向先事業主は、出向契約を締結する必要があります

 

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3  事業再構築支援コース(2023年4月新設)

 事業再構築支援コースは、新型コロナによって事業を一時的に縮小した事業主の事業再構築にともなう新規人材雇用の支援を目的としています。本コースには、2023年4月1日以降に中小企業庁の事業再構築補助金の交付決定を受けていること、といった特殊な要件があります。

助成の内容と助成額

助成の内容と助成額などは以下のとおりです。

助成額 ●中小企業

1人あたり280万円(140万円×2期)

●中小企業以外

1人あたり200万円(100万円×2期)

助成対象期間 1

助成金を受けるための要件

助成を受けるために必要となる事業主の要件は次のとおりです。

  • 202341日以降に中小企業庁の事業再構築補助金の交付決定を受けていること
  • 次の要件すべてに合致する労働者を雇用する
  • 雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として雇い入れること
  • 期間の定めのない労働契約を締結する労働者(パートタイム労働者は除く)として雇い入れること
  • 事業再構築補助金の補助事業実施期間の初日から当該期間の末日までに雇い入れること

受給するまでの流れ

受給までの流れを紹介します。

ステップ1:事業再構築補助金の交付決定を受ける

本コースの受給には、事業再構築補助金の交付決定を受けることが必要です。 

ステップ2:対象となる労働者を雇い入れる

対象となる労働者は、事業再構築補助金の事業に携わる必要があります。

ステップ3:支給申請をおこなう

都道府県労働局またはハローワークに支給申請書を提出します。 

ステップ4:調査と確認

都道府県労働局が支給申請の内容を調査・確認します。 

ステップ5:支給の決定

都道府県労働局は調査・確認の内容を基に支給の決定をおこないます。

ステップ6:助成金の振り込み

事業主指定の金融機関口座に振り込まれます。

申請の注意点

本補助金は、事業主だけでなく対象となる労働者についても、要件があるため注意が必要です。労働者は、年間350万円以上の賃金が支払われたうえで、次のいずれかの要件を満たすことが必要となります。

  • 専門的な知識や技術が必要となる企画・立案、指導(教育訓練など)の業務に従事する者
  • 部下を指揮および監督する業務に従事する者で、係長相当職以上の者

また、労働者は事業再構築補助金の交付決定を受けた事業に関する業務に就く者でなければなりません。

産業雇用安定助成金と雇用調整助成金の違い

産業雇用安定助成金と似た制度に雇用調整助成金があります。雇用調整助成金は、労働者を一時的に休業などさせた場合に、要件を満たせば支給される助成金です。このふたつの助成金は併給できませんが、雇用調整助成金を受給したあとに、産業雇用安定助成金の対象になることは可能です。

産業雇用安定助成金の相談はドリームゲートへ

産業雇用安定助成金は、労働者を安定的に雇用し続けた事業主などに支給されます。3つのコースがあり、複雑な制度であるため、受給には専門家の助力も視野に入れたほうがよいでしょう。

ドリームゲートには、助成金に強い専門家が多数在籍しています。初回メール相談は無料なため、ぜひお気軽にご利用ください。

執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局

ドリームゲートは経済産業省の後援を受けて2003年4月に発足した日本最大級の起業支援プラットフォームです。
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