令和3年6月18日に事業再構築補助金の第1回公募の採択結果が発表されました。
採択率としては36.06%(緊急事態宣言特別枠、通常枠、卒業枠、グローバルV字回復枠を合わせて)となりました。補助金で複数回の公募がある場合には第1回の採択率が高く、以降は採択率が減少していく傾向がよく見られるため、補助金の専門家の中には予想していたよりも低い採択率だったという声も聞きます。
次回以降の申請では、採択結果を踏まえた、より高いクオリティの事業計画が多くなることが予想され、より狭き門となる可能性も考えられます。そのため、今回の記事では第1回の公募結果とどういった場合が採択NGになったのかを解説しますので、自身の事業計画の見直しに役立ててください。
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【事業再構築補助金】第1回公募の採択結果
事業再構築補助金事務局の発表によると、第1回公募では、申請22,231者のうち、8,016者の採択(採択率36.06%)の採択結果となりました。
6月16日に発表された「緊急事態宣言特別枠」は5,181者(要件を満たした申請件数4,326者)の応募のうち、2,866件(申請に対して55.32%)が採択されました。また、6月18日に発表された「通常枠、卒業枠、グローバルV字回復枠」については、17,050者(要件を満たした申請件数14,913者)の応募のうち、5,150者(申請に対して30.21%)が採択されました。
【事業再構築補助金】業種別の応募件数・採択件数
幅広い業種で応募・採択が見受けられますが、特に製造業、宿泊業、飲食サービス業の採択が目立つ結果となりました。コロナ禍で特に売上に大きく影響を受けた業種の採択率の高さが見受けられます。
【事業再構築補助金】応募金額・採択金額
事業再構築補助金は補助金額が最大1億円の補助金ではありますが、採択結果を見ると、100万~1,500万円が全体の46%を占め、4,500万以上も30%弱であることから、幅広く採択されていることが分かります。
【事業再構築補助金】審査委員の所見、コメントが確認できる
他の補助金では不採択になってもなぜ自身が不採択になったのかを確認することはできません。しかし、今回の事業再構築補助金に関しては、不採択になった事業者に向けて、審査委員の所見、コメントが確認できるようになっています。そのため、第1回公募では不採択だった事業者の方で、再度申請を検討されている場合、まず確認するようにしましょう。
※ものづくり補助金も不採択時に審査員の所見が確認できます。
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【事業再構築補助金】採択されなかった3つのNGケース
第1回公募に申請した事例を交えて、どういった場合に採択NGになるのかをケース別に解説します。
事例1・日本料理店が宅配弁当屋さんへの業態転換
地方都市の中心エリアで30年以上の営業実績があり、食べログでも評価が高く、メディアでもたびたび取り上げられたことがある高級日本料理店。郊外の住宅地にて低価格の宅配弁当屋さんへの業態転換を行うべく、事業再構築補助金の申請を行いましたが、不採択となりました。
主な不採択理由としては下記の2つです。
- 既存事業とのシナジーがない
- 金融機関からの資金調達が不明瞭
不採択理由①既存事業とのシナジーがない
事業再構築補助金は思い切った事業再構築を支援する補助金ではありますが、既存事業と補助事業が相互に作用し、今まで以上の価値を生み出すことが期待されています。このケースでは既存店舗の強みや利益構造を活かした展開とは言えないと判断されました。
今回の事業再構築補助金では今までに行ったことがない事業であることが求められていますが、既存事業の強みを生かした事業計画である必要があります。既存事業と補助事業があまりにかけ離れていると、実現可能性が低いと判断され、採択NGの要因となってしまいます。
不採択理由②金融機関からの資金調達が不明瞭
補助金は基本的に後払いのため、補助事業にかかる費用は先に事業者が支払わなければなりません。そのため、自己資金もしくは融資などでの資金手当が求められます。自己資金であれば、決算書上で確認できるでしょう。
しかし、これから融資で資金調達する場合、金融機関の審査があるため、必ずしも確実に資金調達できるとは限りません。採択されても資金を確保できず、補助事業を行うことができないことも想定されます。
例えば、決算書上で金融機関との融資取引が確認できない場合、事業計画上で金融機関から融資を受けると記載しても、資金調達に疑問が生じるでしょう。
事例2・アプリ開発会社が別サービスのシステム構築を行う事業転換
事業会社に向けたアプリ開発をしていた会社が、別サービスのシステム構築を行う事業転換を図るべく、事業再構築補助金の申請を行いましたが、不採択でした。
主な不採択理由としては下記の2つです。
- 過去に行っていた事業と類似点がある
- 事業再構築をする必要性・緊急性がない
不採択理由①過去に行っていた事業と類似点がある
前述の通り、事業再構築補助金では思い切った事業再構築を行う必要があります。既存事業の延長線上の事業ではなく、事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業であることが求められています。
不採択理由②事業再構築をする必要性・緊急性がない
事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、売上が減少していることが要件のひとつです。例えば飲食業の場合、緊急事態宣言等で時短営業を求められ、さらに酒類の提供ができなくなったことで売上に大きく影響し、事業再構築の必要性や緊急性に対して納得ができると思います。
今回のアプリ開発会社では新型コロナウイルス感染症が直接的に売上減少につながったと判断されず、採択NGのひとつの要因となりました。
事例3・美容サロンを運営している会社が簡易宿泊所への業種転換
美容サロンを運営していた会社が、簡易宿泊所事業への転換するにあたって、事業再構築補助金の申請を行いましたが、結果としては不採択でした。
主な不採択理由としては下記の2つです。
- 売上が立つか未知数
- ニーズが明確化されていない
不採択理由①売上が立つか未知数
運営している美容サロンを閉鎖する予定であり、既存事業とのシナジー効果が認められず、集客に関しても不明瞭であるため、売上計画に疑問があるとして採択NGの要因となりました。既存事業の場所と補助事業を行う場所が離れている場合、新たな客層にアプローチしなければなりません。そのため、集客計画についてはより明確にする必要があります。
不採択理由②ニーズが明確化されていない
他社との差別化として提供する予定のサービスに対して、市場ニーズが明確に検証できているとはいえないとの指摘を受けました。まだ世間的にあまり認知がされていないサービスに関しては、競合他社との差別化としては大いに期待されるところですが、需要ニーズがあるのかをしっかりと見極める必要があります。
また「先端的なデジタル技術の活用」も求められています。例えばですが、新型コロナウイルス対策として非対面チェックインを取り入れているホテルも増えていますので、そういったシステムを導入するなどが挙げられます。
まとめ
事業再構築補助金で採択されるためには、公募要領にある要件を満たし、審査項目(加点項目も合わせて)を理解することが前提です。そして、今回紹介した事例を参考に、どういった場合に採択されないのかをしっかりと確認したうえで、自身の事業計画作成に生かしましょう。
なお、当社株式会社SoLaboも認定経営革新等支援機関として登録しており、事業再構築補助金のご相談を承っておりますので、お気軽にご相談ください。
執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 村野 智範
(むらの とものり) /株式会社SoLabo
資金調達支援を専門に取り扱う株式会社SoLabo(ソラボ)にて2,400件以上の融資実績を基に経営者の資金調達をサポート。
トップコンサルタントとして毎月30件以上の資金調達支援を実施。これまでに400件以上の経営者をサポートして参りました。創業者からベテラン経営者まで、事業をどう続けていくのか、中長期を視野に入れたアドバイスをいたします。
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