ライドシェア運転手はもうかる?起業できるか検証

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

一般の人がタクシー運転手のように客を有償で運送できるライドシェア(正式名、自家用車活用事業)が2024年4月から始まりました。東京、神奈川、愛知、京都の一部で営業がスタートしています。国土交通省はライドシェアの実施地域を拡大する意向を示しており、これからさらに広がる可能性があります。

そこで、ライドシェア運転手として働いた場合、収入がいくらになるのかシミュレーションしてみました。結論を先に紹介すると、現行のライドシェアは営業時間が限られているため、それだけで大きな収入を得るのはむずかしいかもしれません。しかし起業のきっかけとして、副業として活用することは可能です。

当記事では、ライドシェア運転手として起業できるかどうかや、副業としての魅力についても紹介します。

収入は最大月197,800円?シミュレーションしてみた

日本のライドシェアは、一般の人がタクシー会社に雇用され、自分の車で客を運ぶ形で運営されます。

あくまで目安ですが、ライドシェアの収入は最大で月197,800円になります。シミュレーションは以下の前提条件でおこないました。

シミュレーションの前提条件

  • 時給:1,800円
  • 歩合給:1時間500円
  • 週20時間勤務で月4.3週間勤務
  • 月の収入=(1,800円+500円)/時間×20時間/週×4.3週間/月=197,800円/月

前提条件について解説します。

時給1,800円は、ライドシェアを実施している複数のタクシー会社が提示している平均です。※1

歩合給とは売上に応じて給与が増える給与体系のことです。たとえば「売上金額が1時間3,000円を超えた分の6割」といったように決めます。この前提条件では、時給のほかに歩合給が出るようになっています。歩合給の額は、営業成績(売上金額)やタクシー会社が設定する条件によって大きく変わりますが、ここでは1時間500円として計算しました。

週20時間勤務は、ある大手タクシー会社が定めたものです。

月4.3週間勤務は、1カ月(30日)を1週間(7日)で割った数字が4.285…となることが根拠です。

※1 以下の情報とライドシェアドライバー募集サイトから算出
ライドシェアドライバー募集ページ|日本交通株式会社

月約20万円の評価もガソリン代などに注意

それではライドシェアの収入が最大月約20万円として、この金額を評価してみます。

週20時間勤務は、週5日稼働(週休2日)とすると、1日4時間の勤務になります。つまりライドシェアで働く人は、週休2日で毎日4時間働いて月約20万円の収入を得ることになります。なお、月約20万円が収入となりますが、ここから税金や社会保険料などを引いた額が手取りになります。

1日4時間、週休2日、月20万円」は「悪くない」と感じる人がいるかもしれません。

しかし以下3つの注意点があります。

ガソリン代の負担

ガソリン代はタクシー会社が負担する場合と、ライドシェア運転手の自己負担の場合があるため、求人に応募する前に確認したほうがよいでしょう。

自家用車の消耗コスト

ライドシェアでは運転手が自分の車を使うため、車の消耗コストは自己負担となります。これは手取りを押し下げる効果があるため、ライドシェア運転手の収入を評価するときに注意したいところです。

1時間当たりの売上に注意

上記のシミュレーションでは歩合給を1時間500円に設定しています。前提条件は「売上金額が1時間3,000円を超えた分の6割」なため、1時間500円の歩合給を獲得するには、1時間で約3,833円を売り上げる必要があります。計算式は以下のとおりです。

●歩合給1時間500円≒(3,833円/時間-3,000円/時間)×6割

歩合給は1時間当たりの売上が減れば減額されます。さらに、売上が1時間3,000円を割り込むと歩合給は0円になってしまいます。

直近2年間無事故

千葉県はライドシェア運転手になる条件として、直近2年間で無事故であり、運転免許の停止処分を受けていないことを課しています。

さらに、ライドシェア事業者(タクシー会社)が実施する研修を受けなければなりません。

このルールは千葉県にとどまらず、ほかの都道府県でも適用されていると考えられます。

自家用車活用事業(日本版ライドシェア)について/千葉県

運行時間の制限について

ある大手タクシー会社がライドシェア運転手の勤務時間を「週20時間勤務」としているのは、ライドシェアの制度に以下のような運行時間(営業時間)の制限があるからです。なお、この運行時間は東京都のものであり、他地域の時間はこれとは異なります。

ライドシェアの運行時間(東京都の場合)

  • 月~木曜:午前7時~午前10時台
  • 金曜:午前7時~午前10時台と午後4時~午後7時台
  • 土曜:午前0時~午前4時台と午後4時~午後7時台
  • 日曜:午前10時~午後1時台

国が運行時間に制限を設けた理由は、ライドシェアが通常のタクシーの運行を補完するものと位置づけているためです。つまり、通常のタクシーが不足する時間帯、曜日、地域に限ってライドシェアを認めているのです。

アメリカのライドシェア時給は4,000円?

海外におけるライドシェア運転手の収入情報は国内にそれほど多く存在するわけではありません。しかし、日本貿易振興機構(ジェトロ)が2022年に発表したレポート「米NY市、タクシー運賃の23%引き上げを了承、配車サービスも料金引き上げへ」に次のような記述がありました。

「今回の料金引き上げ対象にはウーバーやリフトといった配車サービスも含まれ、1マイル(約1.6キロ)当たり約24%引き上げられる。たとえば30分または7.5マイルの利用の場合、引き上げ後の最低料金は27.15ドルとなり、現在よりも少なくとも2.5ドル高くなる」

30分の運賃が27.15ドルなので、単純計算すると1時間の運賃は54.3ドルとなります。1ドル150円とすると、54.3ドルは8,145円になります。この金額は運賃のため、もしウーバー運転手の取り分が50%なら時給約4,072円、30%でも約2,443円となります。

【無料で完成】事業計画書作成ツール
累計8万人が利用!質問に答えるだけで「事業計画書・数値計画書」が完成
⇒事業計画書作成ツールを無料で利用してみる

  • 日本政策金融公庫の創業計画書も作成でき、融資申請に利用できる。
  • 業種別にあなたの事業計画の安全率を判定
  • ブラウザに一時保存可能。すべて無料
⇒事業計画書作成ツールを無料で利用してみる

起業はむずかしい?

ライドシェア運転手だけで起業することは「難しそう」といえそうです。もちろんライドシェア事業もビジネスのため、起業の可能性がまったくないわけではありませんが、次のような壁があります。

  • タクシー会社の管理下でライドシェア事業をおこなわなければならない
  • 通常のタクシーが不足する分の運送サービスを供給する事業
  • 「公共の福祉のためやむを得ない場合」に限定されたサービス

ライドシェア事業の担い手はタクシー会社のため、ライドシェア運転手だけでこの事業をはじめることはできません。これが最も高い壁となるでしょう。「ライドシェア運転手ビジネス」は可能かもしれませんが、ビジネスモデルを構築するのはかんたんではなさそうです。

さらに政府は、ライドシェア事業の適用地域を広げる意向を示しており、事業拡大を目指しているようです。しかし「通常のタクシーが不足したときの限定サービス」というスタンスを崩していません。つまり、ライドシェア事業は補完的な要素が強いため「起業は難しそう」と考えられるわけです。

ウーバーは規制緩和を歓迎

アメリカのライドシェア大手のウーバーテクノロジーズは、日本でライドシェアが始まったことについて「日本政府の規制緩和を歓迎する」と述べており、ビジネスチャンスとみています。そのため「起業の可能性はゼロではない」ともいえるわけです。

副業としての魅力

ライドシェアで起業することは難しくても、副業としての魅力は十分ありそうです。

実質時給は2,300円?

最大収入のシミュレーションで、「時給:1,800円、歩合給:1時間500円」と設定しました。この歩合給を実現できれば実質的な時給は2,300円となり、これは平均時給が高い東京でも魅力的なアルバイトといえます。なお、東京都の最低賃金は現在、時給1,113円です。

2種を取得しなくてもよい

また、通常のタクシーを運転するには営業用の2種免許が必要になりますが、ライドシェア運転手は自家用車用の運転免許で仕事ができます。2種免許を取得するコストがかからないことも、ライドシェア副業の魅力を高めています。

研修が充実、「流し」も不要

タクシー会社はライドシェア運転手希望者に、10時間以上の研修をおこなうため安心して実務に就くことができます。さらにライドシェア運転手はスマホアプリで配車の指示が来るため、自分で街中を走行しながら客を探す「流し」をする必要はありません。支払いもアプリで完結するため、現金を持ち歩く必要もありません。

客を乗せたあとも、ナビゲーションアプリにしたがって走ればよいため、通常のタクシー運転手のように地域の道路を熟知していなくても務まります。もちろんライドシェア運転手も、客からはタクシー運転手と同じサービスを期待されるため、道を知っておいたほうがよいことはいうまでもありません。

【無料で完成】事業計画書作成ツール
累計8万人が利用!質問に答えるだけで「事業計画書・数値計画書」が完成
⇒事業計画書作成ツールを無料で利用してみる

  • 日本政策金融公庫の創業計画書も作成でき、融資申請に利用できる。
  • 業種別にあなたの事業計画の安全率を判定
  • ブラウザに一時保存可能。すべて無料
⇒事業計画書作成ツールを無料で利用してみる

ライドシェアに挑戦するときの注意点

ライドシェアの仕事に就くときの注意点を紹介します。

働ける時刻と時間が制限される

ライドシェアの仕事は、現在のところ、働ける時刻と時間が制限されています。そのため副業としてライドシェアをおこなう場合、ライドシェア運転手として働く時刻に合わせてスケジュールを組むことになるでしょう。本業に取り組む時刻を変更することが必要になるかもしれません。

さらに働ける時間が限られているため、もっと働いて稼ぎたいと思ってもできない場合があります。

交通事故リスクは通常のタクシー運転手より高くなる可能性がある

ライドシェア運転手の運転スキルは、通常のタクシー運転手のそれより低いことが想定されます。ところが客を乗せて目的地まで車を走らせるリスクは、ライドシェア運転手も通常のタクシー運転手も同じです。

したがって交通事故リスクは、ライドシェア運転手のほうが、通常のタクシー運転手より高くなる可能性があります。

これからライドシェア運転手をはじめようという人は、タクシー会社に事故を起こしたときの対処について確認したほうがよいでしょう。

ライドシェアはどのような制度なのか

日本のライドシェア制度について解説します。

タクシー会社の管理下にあり、タクシー不足を補完する制度

国土交通省はライドシェア事業(自家用車活用事業)を次のように定義しています。

「タクシー会社の管理のもとで地域の自家用車や一般ドライバーによって有償で運送サービスを提供することを可能にする制度」

ライドシェア事業の目的は、タクシー事業者が運送主体となって、地域の自家用車やドライバーを活用し、不足するタクシー分の運送サービスを供給することにあります。

つまり、新しいビジネスを起こそうとしたり、タクシー業界にイノベーションをもたらそうとしたりしてライドシェア事業をはじめたわけではない、ということです。

報道発表資料:自家用車活用事業の制度を創設し、今後の方針を公表します。
– 国土交通省

4つの地域でスタートして拡大へ

2024年4月のライドシェアのスタート時点では、次の4地域でのみ実施されました。

  • 特別区・武三交通圏(東京都の23区、武蔵野市、三鷹市)
  • 京浜交通圏(神奈川県横浜市、川崎市、横須賀市、三浦市)
  • 名古屋交通圏(名古屋市、津島市、瀬戸市、尾張旭市、豊明市、日進市、清須市、愛西市、北名古屋市、弥富市、あま市、長久手市、東郷町、豊山町、大治町、蟹江町、飛島村)
  • 京都市域交通圏(京都市(旧京北町を除く)、向日市、長岡京市、宇治市、八幡市、城陽市、京田辺市、木津川市、乙訓郡、久世郡、綴喜郡、相楽郡)

国土交通省はさらに、札幌、仙台、埼玉、千葉、大阪、神戸、広島、福岡の8地域で不足車両数を算出する、としています。つまり、この8地域のすべて、または一部でライドシェア事業が許可される可能性があるわけです。

自家用車活用事業の制度を創設し、今後の方針を公表します。

ライドシェアの今後

一般の人が有償で車で人を運ぶことは「白タク」と呼ばれる違法行為になります。しかし、ライドシェア事業はその違法性をなくしたものです。つまり、ライドシェア事業は規制緩和の一種になります。

国がライドシェア事業を容認した背景には、タクシー運転手不足があります。しかし、政府のなかでも意見がわかれています。ある大臣は前向きにとらえているが、別の大臣は全面解禁に慎重である、という報道もあるようです。

経済界でも似た動きがあり、ある経済団体は「利用者の利便性向上と両立した日本版ライドシェアを実現すべきである」として積極的に進めるべきとの考えを取っています。その一方で、タクシー業界の労働組合からは反対の声があがっているようです。この労組は、ライドシェアは「利用者の安全、既存の地域公共交通への影響、ドライバーのワーキングプア化などに関し重大な懸念がある」と述べています。さらにこの労組は「タクシー不足といわれる状況が解消しだい、早急に当該制度を終了すべきである」とまで述べています。

海外では、ライドシェアを解禁したことでライドシェア運転手が増え、低所得運転手(ワーキングプア)が増えたり、運賃の安さ競争になって既存のタクシー会社の経営を圧迫したり、運行管理や車両整備が不十分なケースが報告されていたりします。

このような事情があることから、日本のライドシェアは拡大するにしても慎重に進んでいくものとみられています。

起業・副業のアイデアは専門家に相談

ライドシェアに限らず、時流にのったビジネスで起業したい、副業したいとお考えの方は、そのアイデアについて専門家に相談してみることをお勧めします。

ドリームゲートでは約200名の起業の専門家が起業家のお悩みやギモンに相談する窓口をもうけています。まずは無料メール相談を利用して、起業・副業のアイデアについて相談してみませんか。

執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局

ドリームゲートは経済産業省の後援を受けて2003年4月に発足した日本最大級の起業支援プラットフォームです。
運営:株式会社プロジェクトニッポン
Facebook | Twitter

起業、経営ノウハウが詰まったツールのすべてが、
ここにあります。

無料で始める