それってパワハラ発言!?知らずに使っている声掛けリストと言い換え法

この記事はに専門家 によって監修されました。

パワハラをしてしまった経営者にご自身のパワハラ発言について、なぜその言葉を言ってしまったのかヒアリングをすると・・・

「良かれと思っていったことです」「鼓舞しようと思って伝えたのに・・・」「私の若いころは普通に使っていた言葉ですよ」

などと言われます。「パワハラをするぞ!」と思って経営をしている人はいません。つまり、無自覚に良かれと思ってやっていることがパワハラになることがあるのです。そのため、今回は、悪気なくついうっかり使っているパワハラ発言を取り上げ、どのように言い換えるとよいのか具体的に考えていきたいと思います。「うっかり使いがちだ!」と気づいた方は、今日から言い換え例を参考にしてください。

なお、今までの2回の記事で、経営者にとってなぜパワハラを防止する必要があるのか、叱る時の注意ポイントはなにかタイプ別にどんなパワハラに気を付けないといけないのかをご紹介してきました。これまでも、経営者がパワハラ対策として必要なことを書かせてもらいましたので、よろしければご覧ください。

知らずに使っている「うっかりパワハラ発言」6つの例

悪気なくうっかり使ってしまいがちな「うっかりパワハラ発言」を6つ例に挙げてみました。ご自身の心理的背景を認識したうえで、改善例のように言い換えてみましょう。

うっかりパワハラ発言①「もうやらなくていい」

失敗した部下に対して「もう仕事を任せられない。いいよ、何にもやらなくて」と仕事を与えない状態が続いた。

パワハラ発言者の心理的背景

大事なお客さまに迷惑をかけると信頼関係にひびが割れる、事業が立ち行かなくなるという心理が働くことがあります。ただし、業務を一切任せないようなことになると、過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)に該当してしまう可能性があります。

こう言い換えよう⇒

「この仕事はお客さまに〇〇という影響を与えてしまうので、ミスしてはいけない仕事です。2日間かけていいのでマニュアルをもう一度読み直してほしい」

「必要な知識は△と△だから覚えるように。わからないところがあったら、今週中に相談して。覚えたらまた取り組んでほしい」

うっかりパワハラ発言②「徹夜して終わらせろ」

サボらずやっているが、仕事が終わらない部下に対して「これが終わらないなら、徹夜だからな。乗り切ったら力つくから!」と言って激励した。

パワハラ発言者の心理的背景

仕事は当然納期までに終わらせるべきという価値観や、自らが過去に徹夜をして乗り越えたときに達成感を味わったという経験があるのかもしれません。ただし、終わらないということは、社長の指示が良くなかった可能性もあります。計画段階で問題があった可能性もあります。一人の部下に責任を負わせて、帰らせないという対応は、過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)に該当してしまう可能性があります。

こう言い換えよう⇒

「このままだと納期までに終わらない気がする。いまどんな状況?」と進捗や遅れている原因を確認しましょう。その上で、「では、一人でやっても△までは確実に終わりそうだね。皆で協力すれば、納期には間に合いそうだね」と伝えて行いましょう。もし担当者に課題がある場合には、納品後、課題について話し合いましょう。

うっかりパワハラ発言③「女性はやらなくていい」

女性(Cさん)にB社との交渉事は厳しい場面になるので、女性にやらせるのはかわいそうだね。やらないでいいよ」と言って担当から外す。

パワハラ発言者の心理的背景

自らのジェンダーバイアス(偏見)を自覚しないと、配慮したつもりでハラスメント発言をしてしまいます。性別により差別することは、セクハラに該当します。また、本来役割として担っている仕事を不適切な理由で外してしまう場合、過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)に該当してしまう可能性があります。

こう言い換えよう⇒

「今までのB社とのやり取りを考えると、今回の交渉は厳しい場面になることが予想される。事前に対応を打合せしておこう」

「(Cさんの現在のスキルだと今回の仕事を任せるのは難しい場合)Cさんに~や~のスキルが身についた時にはやってもらいたいと思っている。今回は~や~が必要なので、他の人にやってもらいます」と未来に期待を込めて具体的に説明しましょう。

うっかりパワハラ発言④「弱音をはくな」

顔色の悪い部下から「(取引先の)D社の担当者からプレッシャーが凄くて今回の仕事をやっていく自信がないです」と言われた際に、「そんなことで弱音吐くなんて根性ねぇやつだなぁ···」と言って突っぱねた。

パワハラ発言者の心理的背景

気合や根性、「やる気出せ」のような叱咤激励を受けてきた方が言いがちです。性格等に言及し続ける叱咤激励は、精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)に該当してしまう可能性があります。また、顔色が悪いのに体調を確認しないまま放置してしまい病気になった場合には、労災等のリスクも発生します。

顔色が明らかに悪い等の、「いつもと違う」に気づいたら要注意です。メンタルヘルス不調の可能性があります。そのため、体調を確認してください。

もしメンタルヘルス不調の場合は、考えること自体が辛いので、体調を整えることを優先します。また、D社からのプレッシャーについて具体的に確認が必要です。もし取引先からパワハラを受けているようでしたら、先方に協力を依頼し、適切な改善を求めましょう。

こう言い換えよう⇒

「顔色悪いけど、体調はどう?(食事や睡眠がとれているか確認しましょう)眠れないことが続いているんだね。D社には他の人が対応するので、安心して」と伝え、仕事の状況を確認しましょう。もし部下の対応に課題があったとしたら、体調が戻った際に指導しましょう。

うっかりパワハラ発言⑤「プライベートに立ち入る」

職場の懇親会でFさんのスマホにある写真を勝手に見て「Fさんこんな趣味あるんだぁ。上司として部下の事は知っておかないとな(笑)」と言った。

パワハラ発言者の心理的背景

盛り上げよう、交流を深めたいという心理がつい行き過ぎることがあります。「信頼関係を構築するためにはプライベートなこともオープンであるべき」という価値観が強いと起こり得ます。特に、お酒の席では要注意です。本人が話をしていないのに、私的なことに介入する場合、個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)に該当する可能性があります。

こう言い換えよう⇒

交流を深めたいのであれば、自己開示をしながら相手に質問しましょう。

「私の趣味は、釣りなんだけれども、Fさんの趣味は?」

自己開示を先にしてくれると話しやすい心理になります。プライベートなことを聞いたからといって、すぐにパワハラになるということではありません。ただし、本人が話したくないのに、強要する、勝手に私物を覗くこと等はやめましょう。

うっかりパワハラ発言⑥「センスない」

業界経験があるJさんを中途社員として採用。社長が担当していた複数の企業を引き継ぐことになったが、引継ぎ内容に分からない点が多々あったため、度々Jさんが質問した。社長は「業界の経験あるんでしょ。それぐらい自分で何とかしてよ。こんなことまで私に聞いてくるなんてセンスないんじゃないの」と言って具体的な説明をしなかった。

パワハラ発言者の心理的背景

期待の裏返しから攻撃的な心理が働くことがあります。事業が軌道に乗ったタイミングで、社長一人では抱えきれず、即戦力が欲しくなると思います。しかし、業界経験があるとはいえ、会社によって文化が違い、企業規模によって仕組みや制度も違います。「普通はわかるよね」「業界経験があるならできて当り前だよね」という価値観が出てしまいがちです。

また、変えられないことを指導・注意してはいけません。例えば、性格・人格・性別・人種等です。「センスない」と言うことは精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)に当たる可能性があります。

こう言い換えよう⇒

Jさんは「会社に迷惑をかけたくない」「社長から引き継ぐのであるから、遜色ない対応をしたい」等の心理が働いているかもしれません。そのような心理を理解した上で、「引継ぎ内容に不安があるんだね。各企業のどんな情報がほしいか教えてほしい。Jさんを信頼しているので、引継ぎが終わった後はやりたいようにやって構わないよ」と伝えましょう。

もしくは「私は専門知識がそこまで強くないので正直深く理解できていない状態だったかもしれない」と素直に自分の気持ちを伝えることによって、Jさんも本音で話ができるようになります。

【無料で完成】事業計画書作成ツール
累計8万人が利用!質問に答えるだけで「事業計画書・数値計画書」が完成
⇒事業計画書作成ツールを無料で利用してみる

  • 日本政策金融公庫の創業計画書も作成でき、融資申請に利用できる。
  • 業種別にあなたの事業計画の安全率を判定
  • ブラウザに一時保存可能。すべて無料
⇒事業計画書作成ツールを無料で利用してみる

経営者のパワハラ対策は「継続」がポイント

ここまで、うっかり言ってしまうパワハラ発言とその要因、言い換えポイントについてみてきました。

「もしかしたら当てはまるかもしれない」と思った経営者の方は安心です。なぜなら、気づきによって自覚できたからです。自覚できれば無自覚に発することはなくなるでしょう。パワハラは人間関係の中で発生します。事業継続中は人間関係がなくなることはありません。また事業の成功のキーポイントの一つは「人」だと思います。そのため、パワハラ対策は継続的に取り組む必要があります。

よく経営者の方から「宮本さん、私の発言ってギリパワハラではないですよね?」と聞かれます。私は「社長、ギリギリを狙わないでください」と伝えています。パワハラかどうかという基準は、人間関係において最低のラインです。つまり、そのラインを下回らないからと言って、より良い関係であるとは言えません。健康的で建設的な関係を構築することが、生産性を高め事業を成功に導くのではないでしょうか。

パワハラ対策・職場の人間関係について困ったこと、気になること等があれば、何なりとご相談ください。

執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 宮本 剛志(みやもと つよし)

(株)メンタル・リンク代表取締役。公認心理師、産業カウンセラーとして心理学をベースにしたハラスメント対策のコンサルティングを行っている宮本アドバイザー。事業を成功に導くための社員とのコミュニケーションを経営者に伝えています。深い知識と経験に加え、温厚なお人柄で経営者に寄り添ってサポートしてくれます。著書:こんなの理不尽!怒る上司のトリセツ(時事通信社)・「怒り」とうまくつき合うーアンガーマネジメント入門(SMBC経営懇話会)

プロフィール | 無料オンライン相談受付中

この著者の記事を見る

起業、経営ノウハウが詰まったツールのすべてが、
ここにあります。

無料で始める