わたしはもともとITに強い税理士・会計士で、取引先と紙のやり取りはほぼありません。中には最初の契約書が紙で、ほかはすべて電子媒体でのやり取りの取引先もたくさんあります。そして契約書すら電子署名になりつつあります。
会計事務所を経営する上で、コロナの影響によりテレワーク化が進んで直接人と会う機会が少なくなってきました。東京23区内にいてもそのような状況です。不要不急の打ち合わせや外出がいまだに控えられていて、今後もその状況が長期化する見込みがある中、どのようなツールを使うと便利なのかは読者の方にも経営上、そして事務処理で役立つと思いますので、まとめてご紹介したいと思います。
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会計ソフトはクラウド系が便利なワケ
最近はクラウド系の会計ソフトが増えてきました。freee・MFクラウド会計・弥生会計などが主なところで、自分の好みや税理士が対応しているソフトという条件を満たせばどれを選んでも良いかと思います。
クラウド系会計ソフトは従来型スタンドアローンの会計ソフトと比較して、どのように楽になったのか、じっさいに導入している取引先に聞いてみました。
主な声は「会計事務所との質問のやり取りが楽になった」ということです。クラウド上にあるデータに同時にアクセスし、同じ画面をみながら操作をするので、お互いの意思疎通がよりスムーズになったという声です。
今は銀行の入出金データやクレジットカードの利用履歴もクラウド会計ソフトがAPIで自動的に取り込んでくれるので、銀行取引をイチから会計ソフトに入力する必要がありません。もっといえば、電気ガス水道・携帯電話料金が毎月銀行口座から引き落としになっている場合、会計ソフトの設定で、人間の目を触れずに記帳することが可能な時代になりました。
これは会計ソフトの取引登録ルールをあらかじめ設定しておき、特定の単語が入っていれば自動的に勘定科目を設定し、記帳するものです。
また多角的に経営分析できるのもクラウド会計ソフトの強みです。たとえば売上のさまざまな情報を会計ソフトに入力できるので、従業員別・店舗別・地域別・商品別といった多角的に経営分析をすることが可能になります。
このように事務効率化だけではなく、経営効率化にもつながるのがクラウド会計ソフトの良いところです。
もちろんクラウド会計ソフトにむかない会社もあります。従来、紙資料が多い企業は、紙資料をエクセルなどでデータ化する作業がまず必要で、そのためクラウド会計ソフトの恩恵を受けることが少ないです。また汎用性がない販売管理ソフトを利用している場合もあまりオススメしません。理由は、入金されたことの確認を販売管理ソフトとクラウド会計ソフトの両方で管理する必要があるためです。このように二度手間になる可能性がある経理業務フローの場合は、オススメできない場合が多いのです。
デメリットは最近のクラウド会計ソフトの料金が値上がりしつつあり、年間3万円程度はみておく必要があるという点でしょう。年間負担するコストの価値を感じられるかどうかが導入するかどうかの分かれ目ではないでしょうか。
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情報共有のツール~クラウド型ストレージサービスの活用
取引先や社内でのファイル共有はクラウド型のストレージサービスがおすすめです。
グーグルドライブやドロップボックスというものがあり、どちらも一定容量までは無料で利用でき、重いファイルの受け渡しに重宝しています。
メール添付でファイルを送信すると、誤送信の場合は取消ができず送信先に届いてしまいますが、クラウド型ストレージサービスの場合は、ネット上に置いたファイルを削除することで誤ったファイルを送信しようとしても、取り返しがつきます(ただし、削除する前に相手がダウンロードしてしまえば、相手の手元に残ってしまいます)。
デメリットとしては、障害時にはなにもできなくなってしまいます。また重いファイルだとネットにあるので受信と送信に時間がかかります。そのため重いファイルを頻繁に利用する業種、たとえば動画を高画質で利用するといったニーズには向かないです。
またセキュリティが気になる人もいるでしょう。グーグルドライブの場合、一般公開、一部ユーザー限定、リンクを知っている人のみアクセス可能など、ニーズに合わせた設定が可能です。個人的には紙でも紛失リスクがあるので、データでもセキュリティリスクは同様と考えています。
コミュニケーションツールはチャットワークがおすすめ
コミュニケーションツールといえば従来は電話やメールがほとんどでしたが、いまやフェイスブックのメッセンジャーやLINEでやり取りをすることも増えてきました。
私はその中でもチャットワークを推奨しています。理由はメールよりも拡張性と利便性が高いからです。
いろんなメリットがあり便利と感じる主な2点は(1)誤送信の防止(2)チャットログが容易にさかのぼれることでしょう。
(1)の誤送信の防止は、宛先不要で送信できる点です。またグループを使えばCcの送信漏れも回避できます。(2)のチャットログは会話が紐付く点です。メールだと返信するたびに履歴が増えていき、何がいま問題・論点なのかが分からなくなるときがあります。この点、チャットワークは現時点のコミュニケーションの流れが追いやすくなっていて、過去履歴も容易にたどれます。クラウド型ストレージサービスの箇所でも書きましたが、チャットワークもメールの添付ファイル誤送信といった事故がなくります。
ただし手軽なツールなので、ディープなコミュニケーションをとりたい人には向かないと思います。
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打合せはオンライン会議ツールで
オンライン会議ツールはzoomが有名で、ciscoやマイクロソフトTeams、グーグルmeetなどもあります。利点は電話とちがってお互いの顔がみえるので、リアルな対面での打ち合わせにより近いコミュニケーションが可能になることです。また画面共有することもできるので、視覚で認識が共有でき、理解が深まります。
ただしずっと画面をみるのは集中力を使い、疲れます。また交感神経優位になり、夜に眠りが浅くなる可能性が高まります(実際、私は眠れなくなりました)
まとめ:ITツール活用のリスクはゼロではないが、リターンも大きい
ITを活用するとリスクはどうなのか?という質問を受けることがあります。たしかにリスクはゼロにはできません。こちらは効率化とリスクのバランスをどのように考えるかだと思っています。紙なら絶対に安全かというとそうではありません。今の時代はスマホで簡単に資料を撮影し、外部に持ち出すこともできます。大企業で個人情報を取り扱う部署では、スマホなどの情報端末の執務室持ち込みを禁止しているところもあります。
またウイルス対策も欠かせません。アンチウイルスソフトの導入はもちろんのこと、場合によっては、VPNなど安全な経路でのネットワーク接続を構築する必要があるでしょう。
そして労務リスクもあります。テレワークが進むと自宅で会社の資料を持ち出すことはできなくもありません(スマホで画面撮影など)。これは従業員のモラルの問題もあるかと思います。
いずれにしろ、新しいことを始める、従来と違うことを始めるに抵抗があるのも事実です。やってみたら思いのほか便利だったという声が多数の一方で、急激な職場環境変化についていけないケースもあるようです。リスクとリターン、さらに自社の環境を考えてITの効率化を進めると良いかと思います。
執筆者プロフィール:
李 顕史(り けんじ) / 李総合会計事務所
大企業の監査の経験を基にした知識の豊富さと、実行支援まで行う実行力の高さがウリの李アドバイザー。多くの相談対応の経験と非常に接しやすい人柄で、様々な経営相談にご対応いただけます。
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