中小企業庁のものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(以下、ものづくり補助金)の第10次公募要領が発表されました。2022年3月15日から申請の受付開始です。
第10次公募の公募要領は以下のURLで全文を確認することができます。
https://portal.monodukuri-hojo.jp/common/bunsho/ippan/10th/reiwakoubo_20220216.pdf
大筋では従来どおりですがいくつか変更点があり、第10次公募で最も特徴的な変更は「回復型賃上げ・雇用拡大枠」「デジタル枠」「グリーン枠」の3つの枠が新設されたことです。その代り、第9次公募にあった「低感染リスク型ビジネス枠」がなくなりました。
この記事を読んでいただければ、その他の変更点や従来から引き継がれたルールなど、第10次公募への申請に必要になるすべての情報を入手できます。
- 目次 -
ものづくり補助金の概要「どのような事業が対象になるのか」
ものづくり補助金は、中小企業の経営革新のための補助金で、補助上限額は750万~3000万円、補助率は2/1もしくは3/2となります。
ものづくり補助金に申請する事業者は以下のような経営革新に取り組む必要があります。
- 新商品、試作品の開発
例:避難所向け水循環型シャワーの開発など - 新たな生産方式の導入
例:作業の進捗状況を見える化した生産管理システムの導入など - 新サービスの開発
例:暗号資産の取引システムの構築など - 新しいサービスの提供方法の導入
例:従業員のスキルに応じて顧客をマッチングさせるシステムの導入など
なお、補助上限額や補助率は、申請される枠や型、従業員の人数によって異なります。
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2022年3月15日から応募開始の第10次公募スケジュール
第10次ものづくり補助金の応募期間は2022年3月15日~5月11日となっており、公募の年間スケジュールは以下のようになります。
- 申請受付:3月15日17時から
- 応募締切:5月11日17時
第9次以前に申請して不採択となった事業者も第10次に申請することができます。
なお、ものづくり補助金の事務局は、「第10次締切後も申請受付を継続し、2022年度内に複数回の締切を設け、それまでに応募のあ ったものを審査し、随時採択発表を行います」と説明しています(*)。
これはつまり、第11次以降も公募を実施することを示唆しています。ただし、ものづくり補助金は国の制度なので、国の予算次第で変更する可能性はあります。
*:
https://portal.monodukuri-hojo.jp/common/bunsho/ippan/10th/reiwakoubo_20220216.pdf
ものづくり補助金を受けるための3つの基本要件
ものづくり補助金は、革新的な製品やサービスの開発、生産プロセスやサービス提供方法の改善に必要な設備やシステムに投資する(経営革新を行う)中小企業と小規模事業者を支援するものです。そのため、以下の3つの基本要件を満たした3~5年の事業計画の策定及び実行が必要となります。
- 付加価値額を年3%以上上昇させる
- 給与支給総額を年1.5%以上増額する
- 事業場内最低賃金を地域別最低賃金(時給)より30円以上高い額にする
ただし、新たに追加された3つの枠 (回復型賃上げ・雇用拡大枠、デジタル枠及びグリーン枠)については、基本要件に加えて、別途要件があります。
さらに、未達の場合は以下のペナルティがありますのでご注意ください。
- 申請時点で賃上げ計画を策定していない場合、補助金を全額返還しなければならない
- 事業計画が終了した時点で給与支給総額の目標が未達の場合、補助金の一定額を返還しなければならない
- 毎年度末時点で最低賃金の目標が未達の場合、補助金の一定額を返還しなければならない
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第10次の新たな枠「賃上げ・雇用拡大枠、デジタル枠、グリーン枠」の別途要件とは?
ものづくり補助金には従来から「一般型」と「グローバル展開型」があります。第10次公募からは「一般型」の中に新たに3つの枠が追加されます。これらの枠を利用するためにはそれぞれ異なる要件を確認する必要があります。
ものづくり補助金の申請者は「型」と「枠」を選ぶ必要があります。
「型」と「枠」によって、申請要件、補助金の額、補助率が異なるので、申請者は「自社の型または枠」を選ぶ必要があります。
補助金額 |
補助率 |
||
---|---|---|---|
一般型 |
通常枠 |
●従業員数5人以下: ●6人~20人: ●21人以上: |
●原則1/2 ●小規模企業者、小規模事業者、再生事業者は2/3 |
回復型 |
2/3
|
||
デジタル枠 |
|||
グリーン枠 |
●従業員数 5人以下: ●6人~20人: ●21人以上: |
||
グローバル展開型 |
1,000万~3,000万円 |
●原則1/2 ●小規模企業者、小規模事業者は2/3 |
一般型・回復型賃上げ・雇用拡大枠(新設)
業況が厳しいながら賃上げ・雇用拡大に取り組む事業者に対して、補助率や補助上限額の優
遇により積極的に行われる支援です。こちらの申請には基本要件に加えて以下の要件も満たす必要があります。
<申請要件>
- 前年度の事業年度の課税所得がゼロであること
- 常時使用する従業員がいること
- 補助事業を完了した事業年度の翌年度の3月末時点において、その時点での給与支給総額、事業場内最低賃金の増加目標を達成すること
一般型・デジタル枠(新設)
DX(デジタルトランスフォーメーション)における革新的な製品やサービスの開発、デジタル技術を活用した生産プロセスやサービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備やシステムへの投資などを支援するもので、以下の追加要件も満たす必要があります。
<申請要件>
- 経済産業省が公開するDX推進指標を活用して、DX推進に向けた現状や課題に対する認識を共有する等の自己診断を実施するとともに、自己診断結果を応募締切日までに情報処理推進機構に対して提出していること
- 情報処理推進機構が実施するセキュリティ・アクションの「1つ星(★)」または「2つ星(★★)」のいずれかの宣言を行っていること
一般型・グリーン枠(新設)
温室効果ガスの排出削減における革新的な製品やサービスの開発、炭素生産性向上をともなう生産プロセスやサービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備やシステムへの投資などを支援するもので、以下の追加要件も満たす必要があります。
また、この枠は従業員数にもよりますがその他の一般型に比べて補助金の上限額が大きくなっています。
<申請要件>
- 3~5年の事業計画期間内で、事業場単位での炭素生産性を年率平均1%以上増加する事業であること
- これまでに自社で実施してきた温室効果ガス排出削減の取組の有無を示すこと。「有」の場合はその具体的な取組内容を示す
グローバル展開型(従来)
海外事業の拡大と強化を目的とした革新的な製品やサービスの開発、生産プロセスやサービス提供方法の改善に必要な設備やシステムへの投資などを支援するもので、以下のような特徴や追加要件があります。
<特徴>
- 海外旅費も補助対象に。(補助金の上限額3000万円)
- 実施期間は一般型よりも長い12か月
<申請要件>
●海外事業は次のいずれかに合致すること
- 海外直接投資
- 海外市場開拓
- インバウンド市場開拓
- 海外事業者との共同事業
第10次新たなルールにおける3つのポイント
第10次公募から対象事業者や補助額に変更がありますので、従来までの相違点を3つのポイントに分けて紹介します。
従業員数に応じた補助金額が設定され、上限額が上がった
第9次公募までは、従業員数の違いによって上限額が変わることはありませんでしたが、第10次公募では、一般型に、従業員数が多いほど上限額が増える仕組みを導入しました。
<第10次公募一般型の「通常枠」「回復型賃上げ・雇用拡大枠」「デジタル枠」の上限額>
- 従業員数5人以下:750万円
- 6人~20人:1,000万円
- 21人以上:1,250万円
第9次の通常枠の上限は1,000万円でした。したがって第10次では、従業員数5人以下の事業者の上限額が減り、21人以上の事業者の上限額が増えたことになります。
<第10次公募一般型の「グリーン枠」の上限額>
- 従業員数5人以下:1,000万円
- 6人~20人:1,500万円
- 21人以上 :2,000万円
特定事業者の一部が対象事業者になった
第10次公募では、特定事業者のうち、資本金の額または出資金の総額が10億円未満の事業者も申請できるようになりました。
特定事業者は以下のとおりです。
- 常勤従業員数500人以下の製造業、建設業、運輸業
- 常勤従業員数400人以下の卸売業
- 常勤従業員数300人以下のサービス業、小売業(ただし、ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業は除く)
- 常勤従業員数500人以下のその他の業種
-
条件をクリアした生活衛生同業組合、生活衛生同業小組合、生活衛生同業組合連合会、酒造組合、酒造組合連合会、酒造組合中央会、内航海運組合、内航海運組合連合会、技術研究組合
通常枠に再生事業者が申請できるようになった
第10次公募では、再生事業者が、通常枠で申請できるようになりました。
ものづくり補助金の対象になる再生事業者とは、中小企業再生支援協議会などから支援を受け、応募申請時において以下のいずれかに該当して いる事業者です(*)
- 再生計画などを策定中の事業者
- 再生計画などを策定済で、かつ応募締切日からさかのぼって3年以内(2019年5月12日以降) に再生計画などが成立した事業者
*:
https://portal.monodukuri-hojo.jp/common/bunsho/ippan/common/besshi4_saiseijigyousha.pdf
事業計画の何をみられてる?ものづくり補助金制度の審査項目と加点
どのような観点で審査されるのかを、技術面や事業化面、政策面などにおける審査項目と加点項目にわけて紹介していきます。
審査項目を意識した事業計画を立てる
ものづくり補助金事務局は、どのような観点で審査するのかを公表しています(*)。
審査項目は3つで、グリーン枠のみ1つ追加になって4つになります。
*:「ものづくり補助金」が劇的進化! (monodukuri-hojo.jp)
- 審査項目1:技術面
・取組内容の革新性
・課題や目標の明確さ
・課題の解決方法の優位性
・技術的能力
-
審査項目2:事業化面
・事業実施体制
・市場ニーズの有無
・事業化までのスケジュールの妥当性
・補助事業としての費用対効果
-
審査項目3:政策面
・地域経済への波及効果
・ニッチトップとなる潜在性
・事業連係性
・イノベーション性
・事業環境の変化に対応する投資内容
グリーン枠については、上記の3つに加えて、以下の項目が審査されます。
-
炭素生産性向上の取り組みの妥当性
・温室効果ガス削減などに対して有効な投資
・設備投資効果の妥当性
・継続的な取組実施
加点を取得できると審査が有利になる審査には加点の仕組みがあります。以下の条件にあてはまらなくても申請はできますが、あてはまる場合は加点されて審査が有利になります。
-
成長性加点
有効な期間の経営革新計画の承認を取得した事業者
-
政策加点
・創業・第二創業後間もない事業者(5年以内)
・パートナーシップ構築宣言を行っている事業者
・再生事業者
・(デジタル枠のみ)デジタル技術の活用及びDX推進の取組状況
-
災害等加点
有効な期間の事業継続力強化計画の認定を取得した事業者
-
賃上げ加点など
・事業計画期間において、給与支給総額を年率平均2%以上増加させ、かつ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+60円以上の水準にする計画を有し、事務局に誓約書を提出している事業者
・事業計画期間において、給与支給総額を年率平均3%以上増加させ、かつ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+90円以上の水準にする計画を有し、事務局に誓約書を提出している事業者
・被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業・小規模事業者等が制度改革に先立ち任意適用に取り組む
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補助される経費の種類を紹介
ものづくり補助金は、実際に使った経費を補助します。補助される経費の種類は以下のとおりです。
-
機械装置·システム構築費
①機械・装置、工具・器具の購入、製作、借用に要する経費
②専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築、借用に要する経費
③改良・修繕又は据付けに要する経費
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運搬費
運搬料、宅配·郵送料などの経費
-
技術導入費
知的財産権などを導入する経費
-
知的財産権等関連経費
特許権などの知的財産権の取得に要する弁理士の手続代行費用など
-
外注費
新製品·サービスの開発に必要な加工や設計、デザイン、検査などの一部を外注するときの経費
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専門家経費
本事業遂行のために依頼した専門家に支払う経費
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クラウドサービス利用費
クラウドサービスの利用に関する経費
-
原材料費
試作品の開発に必要な原材料や副資材を購入する経費
-
グローバル展開型のみ
海外旅費
申請に必要な書類申請に必要な書類は以下のとおりです。
全申請者が必要
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事業計画書 |
---|---|
賃金引上げの誓約書 |
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決算書など |
|
従業員数を確認できる資料 |
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労働者名簿 |
|
再生事業者のみ必要 |
再生事業者に関係する確認書 |
回復型賃上げ·雇用拡大枠のみ必要 |
雇用拡大枠のみ:課税所得の状況を示す確定申告書類 |
グリーン枠のみ必要 |
炭素生産性向上計画と温室効果ガス排出削減の取り組み状況 |
グローバル展開型のみ必要 |
海外事業の準備状況を示す書類 |
加点の仕組みを使う場合のみ必要 |
加点に必要な書類 |
事業計画の作成に自信がない方は専門家に相談を
ものづくり補助金には2つのハードルがあります。
- 申請要件に合致しているか確かめる
- 事業計画をつくる
この補助金の申請要件は複雑です。そのためまずは、自社がその要件に合致するのかどうか確認しなければなりません。そして事業計画づくりは盛り込まなければならないことが多く、その作成は苦労するはずです。
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執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局 月見里
ドリームゲートは経済産業省の後援を受けて2003年4月に発足した日本最大級の起業支援プラットフォームです。
運営:株式会社プロジェクトニッポン
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