最大5,000万円の補助金が交付される「ものづくり・商業・サービス補助金(以下、ものづくり補助金)」の第16次公募の申請受付が2023年8月18日から始まります。ものづくり補助金を運営している中小企業庁は中小企業等に対し「経営革新のための設備投資などに使える補助金です」と呼びかけ、多くの応募を期待しています。
ものづくり補助金は、今回で第16回目の公募となります。そのため、すでに概要をご存知の方も多いのではないでしょうか。しかし、当記事では、あらためてこの補助金を1から解説していきます。
- 目次 -
どのような補助金なのか
詳細を確認する前に、まずはものづくり補助金が要するにどのような制度なのか、その概略を紹介します。中小企業庁は中小企業等に対して、「(この補助金は)経営革新に投資するチャンス」と呼びかけています。ものづくり補助金の対象となる事業は以下のとおりです。
ものづくり補助金の対象事業
- 新商品の試作品の開発
- 新たな生産ラインの導入
- 知的財産を取得して新サービスを立ち上げる
- 専門家や副業・兼業人材を活用する
企業がこれらの補助事業を実施するときには、設備投資などをおこなう必要があります。同補助金では、その経費の一部が補助されます。
ものづくり補助金にはさまざまなコース(枠)があります。申請要件や補助上限などの条件はコースごとに異なっていますが、全体としての補助上限額は750万~5,000万円となっています。
ものづくり補助金の受給には、申請後の審査にパスして採択される必要があります。そののちに補助事業をおこない、経費が認定されれば最大5,000万円が交付されるわけです。ただし経費のすべてが補助されるわけではなく、補助金として交付される額は経費の1/2または2/3です。
参考)https://portal.monodukuri-hojo.jp/about.html
それでは制度の詳細を解説します。
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目的~生産性向上の設備投資などを支援
ものづくり補助金の目的は、生産性向上のための設備投資などをおこなう中小企業や小規模事業者など(以下、中小企業等)の支援です。
中小企業等はこれから数年にわたり、相次いでおこなわれる制度変更に対応していかなければなりません。制度変更には、働き方改革関連や、被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス制度などがあります。
これらの壁を乗り越えるために、中小企業等は、革新的サービスの開発、試作品開発、生産プロセスの改善をおこなう必要があるでしょう。こうした取り組みが、ものづくり補助金の対象になる「設備投資等」であり「補助事業」です。
第16次の日程
ものづくり補助金第16次公募の日程は以下のとおりです。
- 公募開始:2023年7月28日
- 申請受付:2023年8月18日から
- 応募締切:2023年11月7日
- 採択発表:2024年1月中旬(予定)
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補助金に申請できる中小企業等とは
ものづくり補助金に申請できる中小企業等の形態にはいくつか種類があります。その1つが中小企業者(組合関連以外)で、条件は以下のとおりです。
補助金に申請できる中小企業者(組合関連以外):以下の条件に該当する会社または個人
業種 | 資本金 | 常勤従業員数 |
製造業、建設業、運輸業、旅行業 | 3億円 | 300人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 |
サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) | 5,000万円 | 100人 |
小売業 | 5,000万円 | 50人 |
ゴム製品製造業(自動車、航空機用タイヤ、チューブ製造業、工業用ベルト製造業を除く) | 3億円 | 900人 |
ソフトウェア業、情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
そのほかの業種(上記以外) | 3億円 | 300人 |
中小企業者(組合関連以外)以外では、中小企業者(組合・法人関連)、特定事業者の一部、特定非営利活動法人、社会福祉法人がものづくり補助金に申請できる中小企業等に該当しす。
申請要件~どのような条件をクリアしている必要があるのか
ものづくり補助金に申請するには、中小企業等であるだけでなく、申請要件をクリアしなければなりません。
基本要件とは~申請者全員がクリアすべき条件
申請要件には基本要件と枠ごとの要件があるので、まずは基本要件を紹介します。
申請要件のうち基本要件(申請者全員がクリアすべき条件)
●以下の要件をすべて満たす3~5の事業計画を策定する
- 事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加
- 事業計画期間において、事業場内最低賃金を毎年、地域別最低賃金+30円以上とする
- 事業計画期間において、事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増やす
●補助事業実施期間内に、発注、納入、検収、支払いなどを完了させること
以上の基本要件は、法人や個人を問わず全申請者がクリアすべき条件です。続いて枠ごとの要件を紹介します。
枠ごとの要件
ものづくり補助金にはいくつか種類があり、枠と呼ばれています。中小企業等は対象となる枠を決めて申請することになります。
対象となる枠は、以下の5つです。
- 1)通常枠
- 2)回復型賃上げ・雇用拡大枠
- 3)デジタル枠
- 4)グリーン枠
- 5)グローバル市場開拓枠
また、上記5つの枠に加えて6)大幅賃上げに係る補助上限額引上の特例があります。なお枠ごとに補助上限額などが異なりますが、そちらは後段の「5つの枠の概要と補助金額と補助率」の章で紹介します。
枠ごとの要件は以下のとおりです。6)の特例の要件も以下で紹介します。
枠と特例 | 枠ごとの要件 |
1)通常枠の要件 | 枠ごとの要件なし。基本要件のみ。 |
2)回復型賃上げ・雇用拡大枠の要件 | 以下のすべての要件に該当すること。
|
3)デジタル枠の要件 | 以下のすべての要件に該当すること。
|
4)グリーン枠の要件
エントリー類型、スタンダード類型、アドバンス類型の3つの類型がある |
以下のすべての要件に該当するものであること。
|
5)グローバル市場開拓枠の要件 | 以下のいずれか1つの類型の条件を満たす投資であること。
|
6)大幅賃上げに係る補助上限額引上の特例の要件 | 以下のすべての要件に該当するものであること。
|
5つの枠と1つの特例の関係
1)~5)の5つの枠と6)の大幅賃上げに係る補助上限額引上の特例の関係は、6)の特例の要件を満たすときは補助上限額が引き上げられ、満たさないときは引き上げがなされない、となります。
したがって6)の要件をクリアできなくても、1)~5)のいずれかの申請要件をクリアすれば申請は可能です。
5つの枠の概要と補助金額と補助率と引き上げ
ものづくり補助金は、申請者である中小企業等が5つの枠のなかからひとつを選んで申請をおこないます。枠は「経営革新のための設備投資など」の内容によって異なり、補助金の額も違ってきます。
5つの枠の概要と、枠ごとの補助金の額と補助率、特例の概要は以下のとおりです。
枠と特例 | 概要、補助金の額、補助率 |
1)通常枠の要件 | ●革新的な製品・サービス開発、または生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資などを支援する。
●補助金額
●補助率:原則1/2、小規模企業者、小規模事業者、再生事業者は2/3 |
2)回復型賃上げ・雇用拡大枠の要件 | ●業況が厳しいながら賃上げ・雇用拡大に取り組む事業者がおこなう革新的な製品・サービス開発、または生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資などを支援する。●補助金額
●補助率:2/3 |
3)デジタル枠の要件 | ●DX(デジタルトランスフォーメーション)に資する革新的な製品・サービス開発、またはデジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備・システム投資などを支援する。
●補助金額
●補助率:2/3 |
4)グリーン枠の要件
エントリー類型、スタンダード類型、アドバンス類型の3つの類型がある |
●温室効果ガスの排出削減に資する取組に応じ、温室効果ガスの排出削減に資する革新的な製品・サービス開発、または炭素生産性向上をともなう生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備・システム投資などを支援する。
■補助金額 ●エントリー類型
●スタンダード類型
●アドバンス類型
●補助率:2/3 |
5)グローバル市場開拓枠の要件 | ●海外事業の拡大・強化を目的とした製品・サービス開発、または生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資などを支援する。
①海外直接投資類型、②海外市場開拓(JAPAN ブランド)類型、③インバウンド市場開拓類型、④海外事業者との共同事業類型のいずれかに合致すること。 ●補助金:100万~3,000万円 ●補助率:原則1/2、小規模企業者・小規模事業者は2/3 |
6)大幅賃上げに係る補助上限額引上の特例の要件 | ●各申請枠の上限からの引き上げ額
|
6)大幅賃上げに係る補助上限額引上の特例は、「各申請枠の上限額+引き上げ額」というしくみになっています。
すべての申請枠のなかで最も高額なのは4)グリーン枠におけるアドバンス類型の従業員21人以上の4,000万円です。これに特例の最大1,000万円が加わった計5,000万円が、ものづくり補助金の最大支給額となります。
何を補助するのか~対象経費を紹介
ものづくり補助金は、審査にパスした申請者(中小企業等、補助金交付候補者)が補助事業をおこない、その経費を支援する形で補助金を交付するしくみになっています。
補助する経費の内容が決まっているので紹介します。
■補助金の対象になる経費
機械装置・システム構築費 | 機械、装置、工具、器具、測定工具、検査工具、電子計算機、デジタル複合機、ソフトウェア、情報システムの購入などの経費 |
技術導入費 | 知的財産権の導入などの経費 |
専門家経費 | 学識経験者、兼業・副業者、フリーランスによる専門家技術指導や助言、コンサルティングなどの経費 |
運搬費 | 運搬、宅配、郵送などの経費 |
クラウドサービス利用費 | クラウドサービスやWebプラットフォームの利用などの経費 |
原材料費 | 試作品の開発に必要な原材料の購入などの経費 |
外注費 | 新製品、新サービスの開発に必要な加工や設計、デザイン、検査の外注などの経費 |
知的財産権等関連経費 | 新製品、新サービスの事業化に当たって必要となる特許の取得に要する弁理士への依頼などの経費 |
海外旅費
(グローバル市場開拓枠のみ) |
海外渡航や宿泊などの経費 |
通訳・翻訳費
(グローバル市場開拓枠の海外市場開拓のみ) |
通訳、翻訳などの経費 |
広告宣伝・販売促進費
(グローバル市場開拓枠の海外市場開拓のみ) |
製品・サービスの海外展開に必要な広告、パンフレット、動画、写真、媒体掲載、展示会出展、ブランディング、プロモーションなどの経費 |
申請時に必要になる書類
申請時に必要となる書類のうち、注意が必要なものを紹介します。
■事業計画書
計10ページ以内で作成し、補助事業の具体的な取り組み内容、将来の展望、付加価値額の算定根拠などを盛り込む必要があります。
■決算書など
貸借対照表、損益計算書、製造原価報告書、販売管理費明細、個別注記表などが必要です。
■グリーン枠のみ、炭素生産性向上計画と温室効果ガス排出削減の取り組み状況が必要です。
■大幅な賃上げをおこなう事業者のみ、その計画書が必要です。
■グローバル市場開拓枠のみ、海外事業の準備状況を示す書類が必要です。
第16次の流れ~後払いに注意を
ものづくり補助金第16次公募の流れはこれまでと同様、以下のとおりです。
■中小企業等が中小企業基盤整備機構に対して申請をおこなう
●電子申請で申請する:GビズIDを取得→電子申請システムにログイン→事業計画書を入力→送信
↓
■中小企業基盤整備機構が申請内容を審査する
●審査をパスすると申請者は補助金交付候補者になる
↓
■中小企業基盤整備機構が補助金交付候補者になった申請者に採択したことを通知する(不採択の申請者にも通知する)
↓
■補助金交付候補者(中小企業等)が中小企業基盤整備機構に交付申請をおこなう
●交付が決定するが、まだ交付されるわけではない
↓
■補助金交付候補者が補助事業を実施して完了させる
●中間検査を受ける
↓
■補助金交付候補者が中小企業基盤整備機構に、補助事業実施と実績を報告する
↓
■中小企業基盤整備機構が補助金交付候補者に確定検査をおこない、補助金の交付額が確定する
↓
■補助金交付候補者が中小企業基盤整備機構に、補助金を請求する
↓
■中小企業基盤整備機構が補助金交付候補者に、補助金を支払う
補助金の支払いは、補助金交付候補者(中小企業等)が補助事業を実施したあとになる点に注意してください。つまり「後払い」になります。
ものづくり補助金の相談はドリームゲートへ
中小企業等が「経営革新のための設備投資等」を計画していたら、ものづくり補助金の対象になるかもしれません。補助金額は最大5,000万円にもなるので、十分検討に値するはずです。
ものづくり補助金に関心がある企業はぜひ、ドリームゲートに登録している専門家にご相談ください。豊富な知識を持つ専門家から、さまざまなアドバイスが受けられます。なお、初回のメール相談は無料です。
執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局
ドリームゲートは経済産業省の後援を受けて2003年4月に発足した日本最大級の起業支援プラットフォームです。
運営:株式会社プロジェクトニッポン
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