中小企業や小規模事業者など(以下、中小企業等)の設備投資を支援する中小企業庁の「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」(以下、ものづくり補助金)の9次公募が受付中です。
9次公募のスケジュールや特筆事項などを紹介したうえで、ものづくり補助金の概要について解説します。
- 目次 -
ものづくり補助金とは
ものづくり補助金は、中小企業等が革新的サービスや試作品の開発や生産プロセスの改善のために設備投資などを行ったときに、経済的に支援するものです。
中小企業等は今後、働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入などの制度変更に直面するため、国(中小企業庁)が支援するわけです。
補助金の額は、補助の対象となる事業の経費の1/2もしくは2/3で、一般型は最大1,000万円、グローバル展開型は3,000万円となります。
グローバル展開型とは、インバウンドを含む海外事業を拡大、強化を目的とした設備投資などのことで、一般型はグローバル展開型以外の設備投資などになります。
ものづくり補助金の内容については、本稿の後段でさらに詳しく解説しています。
https://portal.monodukuri-hojo.jp/index.html
https://portal.monodukuri-hojo.jp/common/bunsho/ippan/9th/gaiyou_20211111.pdf
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9次公募のスケジュール
ものづくり補助金9次公募のスケジュールは以下のとおりです。
- 公募開始日時:2021年11月11日17時
- 申請開始日:2021年12月1日17時
- 申請締切日:2022年2月8日17時
すでに申請の受付は始まっていて、申請締切日は2月8日です。申請を検討している中小企業等は、準備を急ぐ必要があります。
9次公募の特徴
9次公募で大きな変更はありませんが、注意しておきたい点がいくつかあるので紹介します。
低感染リスク型ビジネス枠は9次公募が最終
ものづくり補助金ではこれまで、一般型のなかに低感染リスク型ビジネス枠という特別枠がありましたが、これは9次公募が最終になります。
低感染リスク型ビジネス枠に該当する補助事業は例えば次のようなものになります。
<低感染リスク型ビジネス枠に該当する補助事業>
- 物理的な対人接触を減らすことができる革新的な製品・サービスの開発
例えば、AIやIoTを活用した遠隔操作や自動制御の機能を有する製品開発やオンラインビジネスへの転換など
- 物理的な対人接触を減らす製品・システムを導入した生産プロセス・サービス提供方法の改善
例えば、ロボットシステムの導入によるプロセス改善、複数の店舗や施設に遠隔でサービスを提供するオペレーションセンターの構築など
- ウィズコロナ、ポストコロナに対応したビジネスモデルへの抜本的な転換に係る設備・システム投資
こういった投資を考えている企業は、9次公募がラストチャンスとなります。
https://portal.monodukuri-hojo.jp/common/bunsho/ippan/9th/reiwakoubo_202111203.pdf
加点項目の維持
加点項目が7次公募から変更され、その内容は9次公募でも維持されています。
加点とは審査が有利になる仕組みで、申請する企業が加点項目に該当していると補助金を獲得しやすくなります。
9次公募で採用されている加点のルールは以下のとおりです。
- 成長性加点:経営革新計画承認書(当該計画の写しを含む)がある
- 政策加点:創業や第2創業の場合、開業届または履歴事項全部証明書がある
- 災害等加点:(連携)事業継続力強化計画認定書(当該計画の写しを含む)がある
- 賃上げ加点:被用者保険の適用拡大の場合、特定適用事業所該当通知書がある
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10次公募で変更される内容:9次申請か10次申請かの検討が必要
中小企業庁は、10次公募で変更する予定の内容をすでに発表しています。
もし自社が、10次公募での変更内容に該当するのであれば、今回の9次で申請するか、次回の10次で申請するか検討することになるでしょう。
変更は5点
10次公募で採用される見通しの内容は以下の5点です。
- 従業員規模に応じた補助上限額の設定
賃上げの原資となる付加価値を創出する事業者を支援するため、従来一律1,000万円としていた通常枠の補助上限額を、従業員の規模に応じて、従業員数21人以上:1,250万円、6~20人:1,000万円、5人以下:750万円に見直す。 - 補助対象事業者の見直し・拡充
補助対象事業者に、資本金10億円未満の特定事業者を追加する。また、企業再生に取り組む事業者を対象に、補助率を2/3に引き上げ手厚く支援する。 - 回復型賃上げ・雇用拡大枠の新設
業況が厳しい事業者に対して、賃上げ・雇用拡大に取り組むための生産性向上を支援する申請類型を新設し、補助率を2/3に引上げ手厚く支援する。 - デジタル枠の新設
DX(デジタル・トランスフォーメーション)に資する革新的な製品・サービスの開発やデジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善などを行う事業者を対象に、補助率を2/3に引き上げた新たな申請類型を創設する。 - グリーン枠の新設
温室効果ガスの排出削減に資する革新的な製品・サービスの開発や炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供方法の改善などを行う事業者を対象に、補助上限額最大2,000万円、補助率2/3の新たな申請類型を創設する。
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/2021/hosei/mono.pdf
ものづくり補助金のさらに詳しい内容
ものづくり補助金の概要は冒頭で紹介しましたが、ここではさらに詳しくこの制度を紹介します。
ここで紹介する内容はもちろん、9次公募でも採用されています。
補助金の額:一般型とグローバル展開型で異なる
補助金の額を紹介します。
ものづくり補助金の申請では、一般型での申請とグローバル展開型での申請にわかれます。両者は補助金の額も補助率も異なります。
一般型 | グローバル展開型 | |
---|---|---|
概要 | 中小企業等が行う革新的な製品・サービス開発、または、生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資などを支援 | 中小企業等が海外事業の拡大・強化を目的とした革新的な製品・サービス開発、または、生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資などを支援。
①海外直接投資、②海外市場開拓、③インバウンド市場開拓、④海外事業者との共同事業、のいずれかに合致するもの |
補助金額 | 100万~1,000万円 | 1,000万~3,000万円 |
補助率 | [通常枠] 中小企業1/2、小規模企業者・小規模事業者 2/3
[低感染リスク型ビジネス枠特別枠] 2/3 |
中小企業1/2
小規模企業者・小規模事業者2/3 |
設備投資 | 単価50万円(税抜き)以上の設備投資が必要 | 単価50万円(税抜き)以上の設備投資が必要 |
補助対象経費 | [通常枠] 機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費
[低感染リスク型ビジネス枠] 上記に加えて、広告宣伝費・販売促進費 |
機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費、海外旅費 |
https://portal.monodukuri-hojo.jp/common/bunsho/ippan/7th/reiwakoubo_210616.pdf
補助対象の事業と経費
ものづくり補助金の対象となる事業は、例えば次のとおりです。
<対象事業>
- 新商品や試作品の開発
例えば、避難所向け水循環型シャワーの開発
- 新たな生産方式の導入
例えば、作業進捗を見える化する生産管理システムの導入
- 新サービスの開発
例えば、仮想通貨の取引システムの構築
- 新たな提供方式の導入
例えば、従業員のスキルに応じて顧客をマッチングするシステムの導入
ものづくり補助金は、上記のような事業を行い、そこで使われた経費を補助するものです。
ものづくり補助金の対象となる経費は次のようなものになります。
<対象経費>
- 機械装置・システム構築費
①機械・装置、工具・器具の購入、製作、借用に要する経費
②専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築、借用に要する経費
③改良・修繕または据え付けに要する経費
- 運搬費
運搬料、宅配・郵送料
- 技術導入費
知的財産権などの導入に要する経費
- 知的財産権等関連経費
特許権の知的財産権の取得に要する弁理士の手続代行費用など
- 外注費
新製品・サービスの開発に必要な加工や設計、デザイン、検査の一部を外注、請負、委託する場合などの経費
- 専門家経費
本事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費
- クラウドサービス利用費
クラウドサービスの利用に関する経費
- 原材料費
試作品の開発に必要な原材料及び副資材の購入に要する経費
- グローバル展開型では、海外旅費も対象になる
- 低感染リスク型ビジネス枠では、広告宣伝・販売促進費も対象になる
https://portal.monodukuri-hojo.jp/common/bunsho/ippan/9th/gaiyou_20211111.pdf
必要な書類
ものづくり補助金の申請時に必要になる書類は以下のとおりです。
- 事業計画書
具体的な取組内容、将来の展望、数値目標などを記載。様式は自由だが、A4で10ページ程度
- 賃金引上げ計画の表明書
直近の最低賃金と給与支給総額を明記し、それを引き上げる計画に従業員が合意していることがわかる書面
- 決算書など
直近2年間の貸借対照表・損益計算書など
- 加点に必要な資料(任意)
・成長性加点:経営革新計画承認書
・政策加点:開業届または履歴事項全部証明書(創業または第2創業の場合)
・災害等加点:(連携)事業継続力強化計画認定書
・賃上げ加点:従業員一覧(小規模事業者以外の場合)
・特定適用事業所該当通知書(被用者保険の適用拡大を行う場合)
https://portal.monodukuri-hojo.jp/common/bunsho/ippan/9th/gaiyou_20211111.pdf
まとめ
ものづくり補助金は、革新的なビジネスに取り組もうとしている企業にとって、重要な事業資金になるはずです。対象になる企業は確実に獲得したいものです。
必要書類の用意には時間がかかるので、早めに準備するようにしましょう。
執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局 月見里
ドリームゲートは経済産業省の後援を受けて2003年4月に発足した日本最大級の起業支援プラットフォームです。
運営:株式会社プロジェクトニッポン
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