新型コロナウイルスの感染拡大によって、売上低下など悪影響を受けている事業者が増えています。
そんな中、厚生労働省では事業者の休業手当などの負担を軽減するために雇用調整助成金を給付しています。
雇用調整助成金を受け取れば、会社は従業員の休業手当の負担を減らすことができ、従業員は解雇を免れることができます。
この記事では新型コロナウイルスで困っている事業者に向けて、6月12日に発表された<金額の引き上げ>や<対象期間の延長>などの最新情報をふくめて、雇用調整助成金についての概要をご紹介します。※8/27追記
雇用調整助成金の概要、対象者、申請して受け取る方法についてわかりやすく解説するのでぜひ参考にしてみてください。
- 目次 -
雇用調整助成金とは?
雇用調整助成金とは、景気の悪化などによって事業者が悪影響を受けた場合に従業員に休業手当を支給したり、休業中に教育訓練を行った場合に受け取ることができる助成金です。
事業者が業績において悪影響を受けた場合に、事業者が従業員の解雇を防ぐために行った休業手当の支給などの措置にたいして、助成金を支給しています。
助成金を受給することで、従業員の解雇を防ぐことができます。
今回の雇用調整助成金は、新型コロナウイルスの感染拡大によって業績が悪化した事業者に支給されます。
会社が新型コロナウイルスの影響で従業員に休業手当を支給して会社を休ませた場合などに、負担した費用の一部を雇用調整助成金で補うことができます。
雇用調整助成金が支給される基準
雇用調整助成金が支給される基準は「生産指標」という基準で決まります。
生産指標とは、事業者の売上高や商品の販売量といった事業活動を示す指標です。
行われている事業活動の変動を調べるための指数で、従業員を休業させた年の売上を、前年同月の売上と比べることで求めることができます。
緊急対応期間で生産指標が緩和された
現在は緊急対応期間が設けられたことにより、4月1日から6月30日までの期間では生産指標が大幅に緩和されました。※6月12日に雇用保険法の臨時特例等に関する法律が成立し、期間が9月30日までに延長されました。
今までの生産指標は「3カ月10%以上低下」とされていましたが、緊急対応期間によって現在の生産指標は「1カ月5%以上低下(雇用調整助成金の申請書を労働局に提出した月の前月の売上が5%以上低下)」へと変更され緩和されています。
参照)https://www.mhlw.go.jp/content/000628285.pdf
生産指標の要件を満たしているか調べる方法
生産指標の要件を満たしているかどうか調べる方法についてご説明します。
計画届を提出する日の前の月の売上と前年同月の売上を比べて、売上が5%以上低下していれば、生産指標の要件を満たしているので雇用調整助成金が受け取れます。
たとえば、4月から休業し始めて、5月に4月分と5月分をまとめた計画届を提出する場合には、4月の売上と前年4月の売上を比べるということになります。さらに、要件緩和により、比較するための売上の月について、前月や前々月(上記の例では2月や3月)でも認められることになりました。
事業所を設立してからの年数が1年未満である場合には、計画届を提出する月の前月の売上と2019年12月の売上で比べましょう。
さらに雇用保険適用事業所で通常の比較方法では要件を満たさない場合には、申請書の提出月以前1年間のうち、任意の1か月を比較することも可能となりました。
雇用調整助成金の助成率
雇用調整助成金の助成率は、中小企業が4/5、大企業が2/3です。
従業員の解雇を行わない場合は、助成率は中小企業が9/10、大企業が3/4となります。
中小企業では、一定の条件を満たしている場合に雇用調整助成金の助成率がさらにアップします。
3つの要件を満たしている場合は10割に
以下の3つの要件を満たしている場合には、休業手当全体の助成率が10/10、つまり10割となります。
- 解雇等をせずに雇用を維持している中小企業
- 自治体の要請によって、休業や営業時間の短縮を求められている対事業主であって、これに協力して休業や営業時間の短縮といった対応を行っている
- 以下のいずれかに当たる手当を支払っている・仕事を休んでいる従業員に100%の休業手当を支払っている
・休業手当において、支払率が60%以上で、上限額である15,000円以上を支払っている
要件を満さなくても支払率が60%を超える部分は10割
上記の3つの要件を満たしていない場合であっても、休業手当の支払率が60%を超えている部分の助成率については10割となります。
中小企業が従業員を解雇せずに雇用を維持していて、賃金の60%を超える休業手当を支給している場合には、60%を超える部分にかかる助成率が10割となるのです。
雇用調整助成金でもらえる金額
雇用調整助成金でもらえる金額の確認方法についてご説明します。
前年度に従業員全員に支払った給与の総額から、1人あたりに支払った平均の給与額を計算します。
算出された1人あたりの平均給与額に助成率をかけた金額が、雇用調整助成金でもらえる金額となります。
日額の上限が15,000円に引き上げられました
雇用調整助成金の日額の上限金額が8,330円から1,5000円に引き上げられることが6月12日に決定しました。
さらに、すでに上限8,330円の計算ですでに申請済みの事業主においても、4月1日にさかのぼって上限15,000円で適用となります。労働局・ハローワークのほうで差額を計算してもらえるので、再度申請のし直しは必要ありません。
https://www.mhlw.go.jp/content/11603000/000639422.pdf
5月26日には、勤務先から休業手当をもらえていない人などを対象に、従業員が直接申請して雇用調整助成金を受け取れるという新たな制度を用意すると発表されました。
月額33万円を上限額に、平均賃金の8割が雇用調整助成金として受け取れるとされています。
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000633866.pdf
支給限度日数は?
雇用調整助成金によって助成を受けることができる支給限度日数についてです。
従来は1年間で100日、3年間で150日までとされています。
現在は上記の日数だけでなく、緊急対応期間として2020年4月1日から9月30日までの期間も追加されています。
緊急対応期間は上記の支給限度日数とは別枠で、さらに追加で助成を受けることができます。
支給限度日数の確認方法
支給限度日数を算出して確認する方法についてご説明します。
休業した従業員が1人でもいた日を1日としてカウントするわけではありません。
たとえば、対象となる従業員が10人いる会社で、6人が5日ずつ休業した場合は以下のようになります。
30日÷対象となる従業員10人=3日
この場合支給限度日数は3日となります。
雇用調整助成金の対象となる事業主
雇用調整助成金をもらえる対象となるのは、新型コロナウイルスの感染拡大によって影響を受けた会社・個人事業主で、全業種が対象です。
たとえば、以下のような理由で休業などを行った事業者は雇用調整助成金の対象となります。
- 行政から営業を自粛するよう要請を受け、自主的に休業を行ったことによって売上が低下した
- 緊急事態宣言などによって国民が外出を控えたによって、来客が減った
- 従業員が新型コロナウイルスにかかり自主的に会社を閉鎖したので、売上が低下した
- 取引先の売上が低下した。新型コロナウイルスの影響を受けたことによって、受注する案件が減り、売上が低下した
- 新型コロナウイルスの風評被害によって客の減少で、来客が減った
雇用調整助成金の対象となる従業員
通常は雇用保険に6カ月以上加入している従業員が雇用調整助成金の対象となります。
しかし今回の新型コロナウイルスへの対応では特例として対象者を拡大していて、加入している期間が6カ月未満である場合や、保険に加入していない人であっても適用されます。
そのため新入社員、契約社員、派遣社員、パート、アルバイトの従業員が休業した場合であっても、雇用調整助成金の対象となるのです。
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雇用調整助成金の手続きをする方法
雇用調整助成金の手続きをする方法についてご説明します。
雇用調整助成金を申請できる期間
今回の雇用調整助成金の緊急対応期間は、2020年4月1日から9月30日までとされています。※8/27追記・雇用調整助成金の特例措置が12月末まで延長されることが発表されました。
雇用調整助成金の申請は通常1カ月ごとに行うことになっていますが、緊急対応期間では数カ月分をまとめて申請することもできます。
雇用調整助成金のオンライン申請は受付停止中※再開しました
雇用調整助成金はオンラインでの申請が可能でしたが、現在はシステムの不具合によって受付が停止されていて利用できません。(※6/15日現在)
8/27追記・8/25より申請の受付が再開されました。こちらから申請が可能です。
https://kochokin.hellowork.mhlw.go.jp/prweb/shinsei/
現在可能な雇用調整助成金の申請方法
オンライン以外の現在可能な申請方法についてご説明します。
申請に必要な種類を入手し、郵送もしくは持参して提出することで申請できます。
申請に必要な種類は、厚生労働省のホームページからダウンロードでき、日本各地の都道府県労働局、労働基準監督署、ハローワークなどでも配布されています。
申請書類を用意したら、郵送もしくは最寄りの助成金センターやハローワークに提出しましょう。
現在新型コロナウィルスの影響で持参の場合はかなりの時間を要します。可能な限り郵送での書類提出をしましょう。多少の書類不備であれば、電話での修正や追加での郵送で対応することができます。
申請に必要な種類は、厚生労働省のホームページからダウンロードして入手できます。
申請に必要な書類
雇用調整助成金を申請するのに必要な必要書類は小規模事業主(従業員数が約20人以下)と小規模事業主以外で異なります。
雇用調整助成金の申請に必要な書類
書類名 | 備考 | |
様式特第6号 | 支給要件確認申立書・役員等一覧 | 計画届に役員名簿を添付した場合、別紙の役員等一覧は不要 |
様式特第9号または12号 | 休業・教育訓練実績一覧表 | 自動計算機能付き様式 |
様式特第8号または11号 | 助成額算定書 | 自動計算機能付き様式 |
様式特第7号または10号 | (休業等)支給申請書 | 自動計算機能付き様式 ※所得税徴収高計算書を用いる場合は 当該計算書を添付 |
様式特第4号 | 雇用調整事業所の事業活動の状況に関する申出書 | 【添付書類】 生産指標の低下が確認できる書類 「売上」等がわかる既存書類の写しも可 (売上簿、営業収入簿、会計システムの帳簿、客数のデータ、客室等の稼働率など) |
休業協定書 | 労働組合等との確約書等でも代替可 | 【添付書類】 (労働組合がある場合)組合員名簿 (労働組合がない場合)労働者代表選任書※ ※実績一覧表(様式特第9号又は12号)の署名または記名・押印があれば省略可 |
事業所の規模を確認する書類 | 既存の労働者名簿及び役員名簿で可 ※中小企業の人数要件を見たしている場合、資本額を示す書類は不要 |
引用:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html
雇用調整助成金の必要書類は以下のURLからダウンロードできます。
雇用調整助成金の必要書類(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyouchouseijoseikin_20200410_forms.html
雇用調整助成金の申請の流れ
現在の特別措置が実施されている雇用調整助成金の申請の流れは以下のようになっています。
①労使協定
休業などの計画を立て、労使協定を締結します。
②休業などの実施
計画に基づいて休業などを実施します。
③支給申請
休業などを実施した実績に基づいて、雇用調整助成金の支給を申請します。
まとめ
新型コロナウイルスの感染拡大によって多くの事業者は売上低下などの悪影響を受けています。
雇用調整助成金によって、会社は従業員の休業手当などの負担がなくなり、従業員の解雇防ぐことにもつながります。
新型コロナウイルスのせいで困っている事業者は、負担を軽減して事業を継続させるために積極的に雇用調整助成金を利用しましょう。
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