今年も確定申告の季節がやってきました。個人事業者は、原則的に必ず行う手続きとなります。
今回は、2023年の確定申告についての変更点を紹介したいと思います。しかし今年は比較的大きな変更点が少ないかもしれません。事業者に関係のない変更点は割愛し、かつ2022年からの改正も少しおさらいしたいと思います。
- 目次 -
2023年確定申告の主な変更点
1 雑所得について収支内訳書が必要になる
雑所得については、公的年金なども含まれますが、今回は「業務にかかるもの」に関する雑所得について、前々年度の売上が1,000万円を超えていた場合、業務の収支(収入や必要経費)を収支内訳書に記載することとなりました。
今までは、白色申告で事業所得や不動産所得などの所得についてのみ収支内訳書の添付が義務付けられていましたが、2023年申告分から上記雑所得についても義務付けられます。
「業務にかかるもの」とは、いわゆる事業に近いもので、執筆料、デザイン報酬などの収入、動産や金銭の貸付、一般の人が副収入として行う不用品販売などが挙げられます。
この改正は、事業所得や不動産所得と、「業務にかかるもの」である雑所得について、申告方法を統一することで平等化を図ることができるので、一定の評価ができます。一方で、平等化を図るなら1,000万円ラインというのが少し高すぎるのではないかと個人的に感じます。もちろん申告内容の明確化にも期待ができるようになります。
2 住宅ローン控除の適用期限・借入限度額等の変更
今回の改正では一番大きな改正と言えます。今まで住宅ローン控除の適用については、申告年の年末借入残高の1%を限度として、税額控除ができるという制度でした。しかし、今回の改正から、2022年から2025年までに新築を購入した場合、税額控除が年末借入残高の0.7%と減額となってしまいます。
加えて、住宅ローン控除を受けられる所得要件が3,000万円以下から、2,000万円以下へと下がっています。
- 年末借入残高2,000万円の場合の税額控除
- 1%の場合・・・・・・・20万円
- 0.7%の場合・・・・・14万円
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控除率の改正については、政策的理由が考えられますが、従来、住宅ローン控除は控除率の変更や、控除率の選択制の導入など、変更が多い印象があります。経済政策として必要と判断される点もある程度いたしかたない部分もありますが、変更が多いことは、税負担の公平性という観点からは決して望ましいとは言えないと考えることもできます。
3 その他の変更点
その他、居住用財産の買い替えの特例の省エネ要件の変更や、社会保険料控除と小規模企業共済掛金等控除について電子データ化が可能となった、マイナンバーを利用した申告が便利になった、確定申告書Aが廃止になったなどの改正があります。今回は詳細を割愛します。
なお、昨年までは確定申告期限につき、4月15日までのコロナ延長がありましたが、今年は原則通り3月15日が期限の予定です。
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2022年申告の主な改正をおさらい
次に、2022年の改正で、今年も大きく影響する内容を簡単におさらいしてみましょう。
ふるさと納税が簡単に
近年のますますのふるさと納税者の増加を考慮して、申告手続きが2022年から簡素化されました。
従来は地方自治体が発行する寄付金受領証明書の添付が必要でしたが、ふるさと納税サイトからダウンロードできる「寄付金控除に関する証明書」で足りるようになっております。
印鑑の押印が不要に
日本の印鑑文化の縮小の影響を鑑みて、確定申告についても、従来申告書第一表の氏名欄の右側や、青色申告決算書、収支内訳書の氏名欄右側に押印欄がありましたが、2022年申告より無くなり、押印なしで申告できるようになっています。
改正に思うこと
今回確定申告の改正についてふれました。事業者の皆さんは間違いのない申告を期待いたします。
一方で、個人の確定申告については細かい改正が多すぎるように感じます。本来、各納税者が自分で計算して申告する申告納税制度は民主主義の重要な制度であります。しかしながら、申告方法の複雑化や、改正の増加は納税者自身で適正に申告をする妨げにもなってしまいます。各人が正確な計算において申告するためにも、税務署側の事務作業の効率化のためにも、より簡易的な確定申告制度の実現を個人的に期待するものです。
不明なことがありましたら、ドリームゲートの無料メール相談よりご相談ください。
執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 加賀谷豪(税理士、ファイナンシャルプランナー)
税理士加賀谷豪事務所
1981年 北海道札幌市生まれ
同志社大学卒業後、税理士事務所業界経験12年の内、起業者の税務顧問をメインとして携わる中で、より起業支援に特化した研修、勉強会などのサービス提供を目的として、平成26年に株式会社ピクシスを設立。マーケティング戦略・ネット集客に係るプランニングにより、売上のビジョンを明確化するという目的と、それによる充実した事業計画を作成活用することで、融資対策につながるご提案を目的とした起業者向け勉強会を継続的に行っている。平成28年に税理士登録とともに、税理士法人アクシオンを設立
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