会社設立の資本金はいくらがよい?ちょうどよい金額が今すぐ分かる

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 引地 修一

会社を設立するときには「資本金」が必要となります。現在は、1円からでも会社の設立ができるようになりました。しかし、資本金はその後の設備資金や運転資金の元にもなるため、慎重に決定する必要があります。また、資本金は少なすぎるだけでなく、多い場合にもメリット・デメリットが生じます

この記事では、資本金の中身や金額をいくらにすればよいのか、払い込みの手続きなどについて解説いたします。

これを読めば、あなたが会社設立をするときに資本金をいくらにするといいかが分かるでしょう。

- 目次 -

会社設立における資本金とは

会社の資本金とは、会社を設立するときに必要となる資金であり、いわゆる「元手」です。会社はこの資本金や借入金をもとに、設立後の運転資金や設備資金をねん出することとなります。

資本金が大きいほど、借入額が少なくて済むため、その後の資金繰りが楽になります。また、資本金が大きい会社は対外的に規模の大きな会社、信用力の大きな会社として見られます。

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資本金は最低いくら必要?

会社の設立には最低限の資本金が必要ですがあまり低額の資本金の場合は、デメリットが多いため、ある程度余裕をもった金額とすることをおすすめします。

1円からでも会社設立は可能

旧会社法には、会社設立時における株式会社1,000万円、有限会社300万円の最低資本金制度がありました。現在は新会社法の施行により、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社のいずれについても1円から設立可能となっています。 ただし、有限会社については、新規に設立することはできません。

資本金を低く設定するデメリット

では、資本金は1円にすればよいのでしょうか?あまりに資本金額が少ない場合には、信用力の低い会社と見られるだけでなく、融資を受けることも難しくなります。

たとえば、日本政策金融公庫の新創業融資制度では「創業にかかる経費の1/10以上」の自己資金が必要となるため、資本金額が少ない場合には少額の融資しか利用できません。

また、一部業種の許認可では、決められた額の資金があることが条件となっています。そのため、資本金が少ない場合には、必要となる許認可を取得できないこともあり得ます。

資本金の分布

国税庁の令和2年会社標本調査(第11 法人数の内訳)によれば、単体法人(青色・白色を含む)の資本金の分布は、

  • 100万円以下 約17.8%
  • 100万円超〜200万円以下 約2.7%
  • 200万円超〜500万円以下 約40.8%
  • 500万円超〜1.000万円以下 約25.4%

となっており、全分布の中で200万円超〜500万円以下の資本金の会社がもっとも多くなっています。

参考:令和2年会社標本調査

借入金は資本金として利用できる?

資本金は自分で所有する現金・預金・資産が対象となります。そのため、ほかから借りてきた資金や返済義務のある資金などは、資本金とすることはできません

外国人による会社設立ではいくら必要?

外国人が会社の設立をする場合も日本人による設立の場合と同様、資本金1円以上で会社設立できます。

ただし、外国人が会社の設立をする場合には、「日本人の配偶者等」「定住者」「永住者」「永住者の配偶者等」などの身分または地位に基づく在留資格を取得していることが必要です。それ以外の場合には「経営・管理」の在留資格を取得する必要があります。

会社設立時における資本金の決め方

スムーズに会社を運営していくためには、次のポイントを参考に資本額を決めるとよいでしょう。

初期費用+半年分以上の運転資金を資本金とする

会社の設立をする場合には事業で必要となる設備の費用(設備資金)と、会社の営業をするために必要となる費用(運転資金)が必要となります。設備資金は購入予定の設備の見積もり額を合計した額となります。また、運転資金は営業活動に必要な資金(事務所の保証金や手数料、仕入れ代、家賃、人件費など)の最低34ヶ月分、できれば6ヶ月分を目安に準備すれば安心といえるでしょう。

消費税免税などの恩恵を受けたい場合は1,000万円以下・未満とする

法人でも一定の売上がある場合には消費税が課税されます。しかし、以下の要件を満たすことで、免除を受けることができます。

① 資本金が1,000万円未満の会社 → 無条件に1年目が免除

② 上の条件に加えて次のいずれかの条件も満たすことで2年目も免除

  • 特定期間における課税売上高が1,000万円を超えない場合
  • 特定期間における従業員に支払った給与などの合計額が1,000万円以下の場合

なお、特定期間とは原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後6か月の期間を指します。また、法人には住民税が課されますが、住民税は所得割と均等割から構成されます。このうち均等割は、以下のように従業員数や資本金額により、課税される額が異なります。

<従業員50人以下の場合>

  • 資本金1,000万円以下の会社 7万円
  • 資本金1,000万円超1億円以下の会社 18万円

つまり、消費税の免除を受け、かつ住民税を安くするためには、9,999,999円以下の資本金の会社を設立すればよいことになります。このように消費税と法人住民税とでは、免税、減税になる金額の範囲が異なるため、混同しないように注意が必要です。

許認可の要件を満たす金額以上とする

建設業など特定の業種の許認可を取得するには、一定額以上の自己資金や基準資産額などが必要となります。

  • 500万円以上 一般建設業、有料職業紹介事業
  • 700万円以上 第2種旅行業
  • 2,000万円以上 一般労働者派遣事業
  • 3,000万円以上 第1種旅行業
  • 4,000万円以上 特定建設業(うち資本金は2,000万円以上)

要件となる金額は資本金のみで満たす必要はありませんが、許認可の申請をするまでにこの額の資本金を用意しておくと安心できるでしょう。

資本準備金の計上で税負担を軽減できる

出資を受けた額をすべて資本金にする必要はなく、2分の1を超えない部分は資本準備金とすることができます。(会社法 445条第2項)資本準備金とは、会社の設立時や新株の発行時に払い込まれた金額のうち、資本金として計上しないお金のことです。

なお、資本準備金を計上する主なメリットは以下のとおりです。

消費税の免除に利用できる

上述のように資本金を1,000万円未満とすることで消費税の免除を受けることができます。

税制の優遇が利用できる

中小法人(資本金の金額が1億円以下の会社)には中小企業税制が適用されるため、年800万円以下の所得については法人税率が23.2%から15%に軽減されます。

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資本金の払込方法・時期

株式会社の場合であれば、発起人は、一定の事項を定めた定款を作成後、その定款について公証人による認証を受け、設立時発行株式を1株以上引き受けます。その後、発起人はその引き受けた株式につき、その出資に係る金銭の全額を払い込み、または金銭以外の財産の給付(現物出資)をします。最後に設立登記申請書に必要書類を添付して、管轄の法務局へ提出します。

1.発起人の個人口座を準備し、資本金を入金する

発起人の個人口座を準備し、そこへ資本金を入金します。      

ネット銀行は利用できる?

会社を設立する場合、発起人の口座に資本金を振り込み、その通帳の写しを法務局に提出する必要があります。しかし、現在はネット銀行の口座であっても、取引履歴をダウンロードし、そのうちの銀行名や資本金の振込金額、口座名義人などが記載された部分を印刷することで、本来の通帳の写しの代わりにできます

発起人が複数いる場合の手続きは?

発起人が複数いる場合は、次のいずれかの方法で手続きをおこないます。

  • 代表者(発起人総代)を決めて、各発起人がその者の口座に払い込む
  • 発起人が各自の口座に払い込みをし、全員分の通帳の写しを合綴して提出する

2.通帳の中身をコピーする

払い込みが完了したら、その入金がされた通帳をコピーします。
この際には、通帳の表紙、表紙をめくった裏側と入金がされた部分をコピーすることが必要です。
 

3.払込証明書を作成する   

会社の代表取締役により、払い込みが完了したことを証明する払込証明書を作成します。ただし、「募集設立」による会社設立の場合には、金融機関が発行する「払込金保管証明書」が必要となるため、手続きがより煩雑となります。

4.払込証明書と通帳コピーをひとつにまとめる

払込証明書と通帳のコピーを一緒にホチキスで止めます。なお、この際には各用紙のページの境目に代表取締役の印鑑を押します。

払込時期はいつ?

払込時期については、以前は定款作成日後と厳格に運用されていましたが、現在は、以下のとおり、その払い込み前であっても差し支えないものとされています。

預金通帳の写し又は取引明細表その他払込取扱機関が作成した書面に記載された払込みの時期については、定款の作成日又は発起人全員の同意があったことを証する書面に記載されているその同意があった日後に払込みがあった場合はもとより、その前に払込みがあった場合であっても、発起人又は設立時取締役の口座に払い込まれているなど当該設立に際して出資されたものと認められるものであれば、差し支えない。

※ 株式会社の発起設立の登記の申請書に添付すべき会社法第34条第1項の規定による払込みがあったことを証する書面の払込みの時期について(通知)」(令和4613日付け法務省民商第286号法務省民事局商事課長通知)

資本金の払い込みに関するポイント

資本金の払い込みに関しては、以下のポイントに留意する必要があります。

資本金を入金した個人名義口座は、その後は個人用として自由に使えるの?

会社設立の払い込みのために新たな通帳をつくる必要はありません。また、払い込み後もそのまま個人用通帳として利用できます。

払い込み後、会社名義の口座に全額を移す必要はあるの?

会社設立後は、原則的に、資本金全額を会社名義の口座へ移します。ただし、会社設立が完了する前に設立手続きの中で発生する費用を使うことは可能です。その場合にはその時点の残高を法人口座へ移す形でも問題ありません。たとえば、本来、500万円の資本金があったが、登記申請前にテナント費用として200万円を支払っている場合は、300万円を会社口座に移せば問題ないことになります。

資本金を入金したときの仕訳

資本金を入金した場合の仕訳は、以下のとおりとなります。また、いずれも金額の単位は円となります。

<設立時>

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
現金預金 1.000,000 資本金 1.000,000 資本金の払い込み

<増資時>

株式100株を1株あたり3,000円で発行することとなり、払込期日までに全額の払い込みを受けた。

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
別段預金 300,000 新株式申込証拠金 300,000 増資の払い込み

払込日を迎えたため資本金に振り替えた。

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
新株式申込証拠金 300,000 資本金 300,000  
現金預金 300,000 別段預金 300,000  

 

資本金を見せ金とすることは可能?

資本金は自己の資金や財産を出資しておこなう行為ですが、中には「ほかから借りてきた資金」を資本金として登記をするケースがあります。このようなお金を「見せ金」といいます。見せ金をした場合は刑事罰の対象となるほか、会社法上の責任を問われることとなります。

見せ金は違法

見せ金で会社設立をした場合には、虚偽の資本金額で会社設立登記をおこなうことになります。登記事項証明書は公正証書の一部のため、虚偽の資本金額での登記は「公正証書原本不実記載等罪」に問われ、5年以下の懲役または50万円以下の罰金を科せられるおそれがあります。また、見せ金をした発起人は、会社法上の履行責任を負うことにもなります。(会社法第52条の2)

見せ金が違法となった判例

見せ金については、1963126日の最高裁判所でも、以下のように違法である旨の判決が出ています。

当初から真実の株式払込として会社資金を確保する意図なく、一時的借入金を以て単に払込の外形を整え、株式会社成立の手続後直ちに右払込金を払い戻してこれを借入先に返済した場合は、商法1771項に違反し有効な株式払込がなされたものとはいえない。

最高裁判所判例集( 昭和38126日)                               https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=53696 

見せ金で会社設立するリスク

見せ金の資本金で会社設立をした場合には、以下のようなリスクを負います。

公正証書原本不実記載等罪として刑事罰の対象となるほか、会社法上の違法行為となる

見せ金による会社設立は、上記のとおり違法行為となるため、注意が必要です。 

融資が受けられなくなる

金融機関が融資をする際には、その過程で必ず資本金のチェックをおこないます。具体的には、資本金の元となった通帳やそのほかの資料の原本を提出させ、資本金との相違はないか、出どころに問題がないかを確認します。

そのため、資本金が見せ金だった場合には、すぐに実体のないことが判明します。このような場合には、当然その融資申込みは否決されることになるでしょう。また、場合によってはそのときの申込みだけでなく、後の融資も否決されることになりかねません。

設備資金や運転資金がないため、会社の営業ができない

見せ金により設立をした場合には、会社設立が完了した後にその資金を借主に返還しなければなりません。したがって、会社には設備資金や運転資金の元となる資金がなくなるため、その後の営業をすることができなくなります。

資本金の増資・減資とは

資本金は設立時に出資するだけでなく、その後これを増やしたり、減らしたりすることができ、前者を「増資」、後者を「減資」といいます。

増資とは

増資とは、株式を発行して資本金額を増加させる手続きをいい、有償増資と無償増資の2種類の方法があります。なお、代表者から会社への貸付金を資本金に振替えることができますが、これは有償増資の一種となります。

メリット

返済不要で資金調達できる

融資の場合は借入金を返済しなければなりませんが、増資であれば返済が不要であるため、資金繰りの改善に役立ちます。

財務体質の強化に役立つ

増資により返済不要で利用できる資金が増えるため、会社の財務体質が改善されます。また、金融機関がおこなう財務分析においても、多くの項目でポイントが改善されます。

信用力が向上する

一般的に資本金の額が大きいほど、規模が大きい会社、経営が安定している会社として評価されるため、社会的な信用や金融機関からの信用が向上します。

デメリット  

経営に影響が生じる可能性がある

新株を発行した場合には、経営者以外の持ち株数が増え、相対的に経営者の持ち株比率が低下します。そのため、発行する新株の数しだいでは、その後、重要な決議をとおすことができなくなる可能性があります。

配当金の負担が増える

会社は業績のよいときには株主に対して配当金を支払いますが、増資により社外株主が増えた場合、その分配当金支払いの負担が増えてしまいます。

手続きの費用がかかる

新株を発行する場合には、取締役会や株主総会による決議が必要となるためそのコストが生じます。また、増資は登記をしなければ対外的な効力が生じません。増資登記をする際には、増加する資本金の額の1,000分の7(最低3万円)の登録免許税や司法書士への手数料が必要となります。   

減資とは

増資とは、資本金の額を減少させることをいい、おもに「株主への財産の払い戻し」を目的としておこなわれますが、節税や事業再建のためにおこなわれることもあります。

メリット

余剰資金を生み出すことができる(有償減資)

たとえば、3億円の資本金を2億円に減資をすることで1億円の余剰資金をつくり出すことができるため、これを配当などの支払いに充てることができます。

財務内容を改善できる(無償減資)

無償減資をすることで、財務内容を改善することができます。たとえば、資本額6億円(欠損額1億円)の会社の場合、1億円の減資をすることで、資本金が5億円の欠損金のない会社とすることができるため、財務内容の改善に役立ちます。

デメリット

会社財産が減少する(有償増資)

有償増資をおこなった場合には、会社の財産が減少するため、その分経営に充てる資産が減少することとなります。

会社の信用力が低下する(無償増資の場合)

前述したように資本金の大きさは、会社の信用力の大きさとして見られることから、減資により資本金を減少した場合には、投資家や金融機関からの信用低下につながります。

まとめ

会社の資本金は設立後の会社の財産的基盤となるものです。したがって、少ない場合にはその後の経営に支障をきたしますが、金額が大きすぎると消費税や住民税に影響が生じる場合があります。また、会社設立時の資本金の払い込み手続きについては、厳格な登記上の要件があるため、これに沿っておこなう必要があります。

なお、ドリームゲートでは税理士、司法書士、行政書士など税務や会社設立手続きに精通した専門家が多数登録しており、無料で起業に関するあらゆる相談をすることができます。また、検索をすることで相談内容にあった専門家を探すことも可能です。「資本金をいくらにすればよいのか」、「手続きがわからない」といった場合には、ぜひ、一度ドリームゲートの専門家にご相談ください。

執筆者プロフィール:引地
修一/Ichigo(一期)行政書士事務所

創業者と経営者の資金調達から事業再生、記事取材までを幅広くサポート。
保有資格:行政書士、事業再生士補、事業再生アドバイザー、宅地建物取引士、古物商

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