学習塾の開業を考えている方へ。開業資金の目安や効果的な集客方法、成功するためのポイントを詳しく解説します。学習塾の運営に必要な準備を知り、安定した経営を目指しましょう。初心者でも分かりやすく解説します。
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学習塾の経営は難しい?全体の約3割が赤字
引用:東京商工リサーチの「学習塾の約3割が赤字 約20社の大手塾が市場の66.2%をおさえる」
学習塾東京商工リサーチ(TSR)が全国の主な学習塾396社を対象に行った業績調査によると、売上高は5,431億円(前期比1.0%増)と微増したものの、利益は297億円(同3.9%減)と減少しました。少子化の進行や受験制度の多様化、個別指導やオンライン授業の台頭により、学習塾の経営は年々難しくなっています。その中で、AIを活用した高度な教育プログラムや、独自の強みを打ち出した運営が求められ、今後の成長には柔軟な経営戦略がカギとなります。
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算数特化型塾や総合型選抜(旧・AO入試)対策塾のような新しい市場も
学習塾の多様化が進み、特定の分野に特化した学習塾が注目されています。例えば、算数特化型塾は計算力や論理的思考を伸ばすことに特化しており、難関中学受験を目指す家庭に人気があります。また、総合型選抜入試(旧・AO入試)対策塾は、大学入試の新しい形態に対応し、面接対策や小論文指導を中心としたカリキュラムを提供しています。これらの特化型塾は、一般的な学習塾との差別化がしやすく、ターゲットを明確にできるため、独自の市場を築きやすいのが特徴です。開業を考える際には、地域のニーズを把握し、専門性を活かした学習塾の形態を検討するのも一つの戦略となります。
学習塾の開業方法別のメリット・デメリット
学習塾の開業にはテナント型の開業、自宅の一室での開業、フランチャイズでの開業、オンライン塾と4つの手法に分けることができます。それぞれのメリットデメリットは以下の通りです。
開業方法 | メリット | デメリット |
テナント型開業 | 立地によっては高い集客効果が期待できる 店舗のブランド力を高めやすい |
家賃や内装費が高額 集客が安定するまでの運転資金が必要 |
自宅開業 | 初期費用を抑えられる | 集客が難しい 住居物件の規約に注意が必要 |
フランチャイズ | ブランド力を活用できる 運営ノウハウの提供を受けられる |
加盟金やロイヤリティが必要 自由度が制約される |
オンライン塾 | 初期費用を大幅に抑えられる 設備投資の必要がない 場所の制約がない |
集客にはSNSやWeb広告 といった専門性の高い施策 が必要になる |
テナント型の開業
テナント型とは、ビルの一室などを借りて、一から開業する方法のことを指します。駅近や商業施設の近くに位置することで、多くの生徒を集めやすくなります。しかし、初期費用として物件取得費や内装費が高額になる点や、家賃の負担が継続する点が課題となります。
物件取得費や内装費を少しでも抑えたい方は、居抜き物件で元の内装をいじらないでも利用できる物件を根気よく探すことがおすすめです。
自宅での開業
自宅の一室を活用して学習塾を開業する方法は、初期費用を抑えられる点が大きなメリットです。特に、テナント型と比べて家賃や内装工事費を削減できるため、低リスクでスタートしやすいのが特徴です。
しかし、一般的な賃貸の住居用物件では、事業用としての使用が制限されている場合がほとんどであるため、大家さんに許可をもらいにいくか「SOHO(Small Office Home Office)」と言われるような物件を契約する必要があります。
フランチャイズでの開業
個人で学習塾を開業する場合、初めは無名のため知名度を上げて生徒を集める必要がありますが、知名度のあるフランチャイズを利用すれば、生徒が集まりやすいので初心者でも経営しやすいのがメリットです。特に学習塾は入塾の決定権を生徒の親が握っている場合がほとんどであるため知名度は学習塾を選ぶ上での安心材料になります。
またフランチャイズの場合、他の学習塾オーナーと情報交換ができるのがメリットです。有益な情報を入手したり、悩みを相談したりすることができるため、経営が初めてでも仲間がいれば心強い部分も多いでしょう。
代表的なフランチャイズ
- 東進衛星予備校
- 個別学習のセルモ
- 武田塾
オンライン塾での開業
オンライン塾は、インターネットを活用して遠隔で指導を行う開業スタイルです。ZoomやGoogle Meetを利用したライブ授業や、録画コンテンツを配信する形態が主流です。初期費用が低く、全国の生徒をターゲットにできるメリットがありますが、集客にはSNS運用やSEO対策などのデジタルマーケティングが不可欠です。また、生徒とのコミュニケーションが対面より難しく、学習効果を高めるための工夫が求められます。
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開業資金や運転資金はどれくらい必要?
学習塾を開業する際、必要な費用には物件取得費、内装費、設備投資費用、広告費などが含まれます。自宅の一部を活用する場合は比較的低コストで始められますが、テナントを借りて本格的に運営する場合は、最低でも200万円以上の資金が必要になることが一般的です。
開業にかかる費用資金は?
学習塾の開業資金は、開業形態や規模によって異なりますが、おおよそ以下の費用が必要になります。
- 物件取得費(テナント型):敷金・礼金を含め100万〜300万円
- 内装費(黒板・机・椅子の設置等):50万〜150万円
- 教材費・設備費(パソコン・プリンターなど):20万〜50万円
- 広告費(チラシ、Webサイト作成費):10万〜20万円
- その他(開業届、事務用品など):10万円前後
テナントを借りる場合、開業資金は最低でも300万円以上必要になります。一方で、自宅開業やオンライン塾の場合は初期費用を抑えることが可能です。
開業に必要な運転資金は?
開業後の運営に必要な資金として、以下のランニングコストが発生します。
- 家賃(テナント型):月5万〜20万円
- 光熱費・通信費:月1万〜3万円
- 講師の人件費(アルバイト講師を雇う場合):月10万〜30万円
- 広告宣伝費(SNS広告、チラシ印刷費):月5万円前後
開業後すぐに生徒が集まるとは限らないため、最低でも6ヶ月分の運転資金を確保しておくことが理想的です。
資金調達の方法は?創業時に利用できる制度を解説
新しく開業する際は、年齢や開業する地域によって補助金や創業時しか受けることができない融資を受けることができます。
まずは事業に使える自己資金がいくらか把握
開業のための資金調達方法として、日本政策金融公庫の「新規開業資金」や銀行のビジネスローンがあります。特に日本政策金融公庫の融資は無担保・無保証で借りられる場合もあり、開業資金が少ない場合でも活用しやすい制度です。
融資制度の利用
学習塾の開業資金は、日本政策金融公庫の「新規開業資金」や、地方銀行のビジネスローンを活用することで調達可能です。公庫の融資は無担保・無保証で借りられる場合(*1)もあるため、開業してから最初の入金まで時間がかかる学習塾ビジネスを開業するには必要な制度です。
しかし、融資を受けるためには一定の自己資金が求められるケースが多く、申請から入金まで時間がかかるケースもあります。
(*1)新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方は原則として無担保無保証での借入が可能です。
新規開業資金の概要
- 融資対象:新たに事業を始める人(事業開始後おおむね7年以内の人)
- 金利:条件により異なるが低金利
- 融資上限額:最大7,200万円(うち運転資金4,800万円)
- 返済期限:設備資金は20年以内、運転資金は10年以内
引用:日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」のページから引用
新創業融資制度の審査では、綿密な事業計画書の提出が求められます。特に、収支計画やターゲット市場の明確化、競合分析などをしっかりと行い、説得力のある計画を作成することが重要です。開業後の具体的な運営計画や、収益を上げるための戦略がしっかりと示されていないと、融資の審査に通過するのは難しくなります。そのため、事業計画書の作成には時間をかけ、専門家に相談するなどの対策を講じることをおすすめします。
開業から数年の期間で受けられる補助金
学習塾の開業には、以下の補助金が利用できる場合があります。
創業補助金 | 各自治体や商工会議所が実施している補助金で、 設備投資や人件費の一部を補助を受けることが可能です。 ※名称は自治体により異なります |
IT導入補助金 | オンライン予約システムや決済システム導入時、Webサイト作成時などに補助が可能です。ただし、開業してから1期を経過しないと申請する際に必要な書類を準備できないため、開業してから1年度目の決算を終えてない事業者は申請できません。これらの補助金は申請に時間がかかるため、開業前に早めに情報収集を行うことが重要です。 |
補助金の情報は毎年変わるため「開業場所+補助金+創業」や「商工会+地域+融資」で検索し、最新の情報を確認しましょう。
学習塾の集客方法を解説
学習塾の集客で創業初期から効果が期待できる施策は3つあります。
まずは周辺地域にポスティングやビラ配りからスタート
開業初期の段階では、地域密着型の宣伝が効果的です。ポスティングやビラ配りを行い、近隣の家庭に直接アピールしましょう。特にビラ配りは、親子揃って学校近くを歩く機会が多い学期末に渡すと効果的です。
また、学習塾の近くの商店街やスーパーの掲示板を活用するのも有効です。地域の学校行事やお祭りなどの地域イベントに合わせたタイミングで配布すると、認知度が高まりやすくなります。配布するビラには、初回無料体験や割引キャンペーンなどの特典を明記し、問い合わせを促す工夫をしましょう。口コミが広がることで、安定した集客につながります。
WebサイトやSNSを使った情報発信
近年では、WebサイトやSNSを活用した集客が重要です。
- Webサイト:学習塾の特徴や料金プラン、講師の紹介を掲載
- SNS(Instagram・X・Facebook):授業の様子や生徒の成果を発信
- Googleビジネスプロフィール登録:口コミを集め、検索流入を増やす
といった具合にそれぞれのプラットホームの特徴と目的にに合わせて発信内容を変えることで安心感を与えられます。
WebサイトやSNSは効果が出るまで時間がかかる他、パソコンを使い慣れていない方には少し難易度が高いのでドリームゲートに登録している専門家や先輩起業家の方に相談しながら進めることをおすすめします。
生徒が増えてきたら友達紹介制度も
既存の生徒に紹介特典を提供することで、新規生徒の獲得が期待できます。例えば「紹介で入塾すると1ヶ月無料」などの特典を設定すると効果的です。
さらに、紹介する生徒だけでなく、紹介された側にも特典を付与することで、双方にメリットを与え、紹介制度の利用率を高めることができます。また、SNSを活用して「紹介キャンペーン」を定期的に告知するのも有効です。特に、口コミが重要な学習塾業界では、生徒や保護者の評判が広がることで新規入塾者が増え、経営の安定化につながります。
学習塾の開業には綿密な計画を
学習塾の開業は、事業計画・集客方法・運営方針を明確にすることが成功のカギとなります。
- 開業形態の選択:テナント、自宅、フランチャイズ、オンライン塾から最適な方法を選択
- 事業計画:開業資金と運転資金を確保
- 集客戦略:地域密着型マーケティングとWeb活用の両軸で生徒を獲得
学習塾は社会的意義のあるビジネスであり、生徒の成績向上や教育支援を通じて地域に貢献できます。事前準備をしっかりと行い、成功する学習塾経営を目指しましょう。