「事業再構築補助金」の第3回公募が終わり、第4回公募の受付を待つ時期となりました。第1回・第2回で不採択になってしまい、3度目の正直で第3回の結果を待っている方、第3回での申請を目指していたものの、スケジュールに間に合わず、第4回で初申請をされるご予定の方など、いろいろな方がいらっしゃると思います。
そんな方々のために「9社申請して8社が全て通常枠で採択された」実績を持つ筆者が、「事業計画書作成のコツ10個」をお伝えいたします。
- 目次 -
事業計画書作成における10のコツ
(1)「公募要領」及び「事業再構築の指針」を熟読し、徹底理解すること
1つ目のコツは、公募要領等の「徹底理解」です。残念ながら「不採択」だった方に多いのが、「そもそも公募要領や事業再構築の指針をちゃんと読んでいない」点です。例えば、補助対象経費になり得ない人件費や原材料費、車両代を計上していたり、広告宣伝費が大部分の計画であるにもかかわらず、その場合の必須書類である理由書を提出していなかったりなどです。
これらの方々は、厳しい言い方をするならば、「不採択が当然の結果」となります。「はじめの一歩」として、しっかりと熟読するところから始めましょう。
<不採択になりやすい事業計画書の例>
×そもそも要件を満たしていない。必要書類を用意できていない。
×「認定経営革新等支援機関」と一緒に事業計画を策定していない
(2)「事業拡大に繋がる事業資産への相応規模の投資」を行う計画であること
2つ目のコツは、「事業資産(有形・無形)の蓄積させる事業計画とすること」です。不採択となるケースでは、事業資産が蓄積されるとは言えない、例えば「広告宣伝費」が中心となっているケースがあります。当該事業再構築補助金は、「設備投資」に対する補助金制度であるため、利用者が多い「小規模事業者持続化補助金」が販売促進費を主に補助対象とすることと比べて、明確に異なります。
なお、「金型の製作費」を補助対象経費として計上して事業計画書を作成される方が製造業を中心に少なくありませんが、不採択になる可能性が高いです。これは、その金型で作る商品が売れなかった場合、「事業拡大に繋がらない過大な投資」になってしまうからです。金型の製作費を補助対象としたい場合は、「売れ行き好調な外注して製造している商品の内製化目的」は、「汎用性の高い金型」であることに注意すべきでしょう。
<不採択になりやすい事業計画書の例>
×一過性の支出である広告宣伝費等を中心とする投資計画
×事業拡大に繋がるとは言えない特定商品の「金型(工具)」の製造委託費用を中心とする事業計画
(3)「事業計画作成における注意事項」及び「審査項目」については「明確かつ網羅的に記載」すること
3つ目のコツは、「注意事項と審査項目に関する明確かつ網羅的な記載」です。事業計画書に何を書くべきかについては、公募要領に明記されているため、この指示を踏まえていない事業計画書は不採択の可能性が高くなってしまいます。
また、「審査項目」が公開されており、この内容に沿って採点されますので、審査項目をしっかりと抑えていない事業計画書も、残念ながら不採択の可能性が高くなってしまいます。なお、「図・表・グラフ」がある程度求められますが、これらはあくまで「文章での説明をわかりやすく補完するもの」であることに注意が必要です。
「図・表・グラフ」が大半(※半分以上)の計画書は、「説明不足」とされる可能性があります。文章で丁寧に説明し、文章ではわかりにくい部分で「図・表・グラフ」を用いるのであって、あくまで事業計画書の主体は「文章」となります。
当社では、概ね75%(4分の3)程度は「文章でしっかりと説明する」ことを推奨しています。もちろん、文章ばっかりで、「図・表・グラフ」がほとんどなく、何を言っているかわかりにくい計画書も不採択の可能性が高くなるため、文章とのバランスが大事です。
<不採択になりやすい事業計画書の例>
×公募要領における指定記載事項を無視している事業計画
×「図・表・グラフ」が極端に少なく、文字が中心で読みづらい・理解できない計画
×審査項目の一部しか記述されておらず、審査が出来ない計画
(4)「補助事業実施段階での課題と解決方法」及び「事業化段階における課題と解決方法」を明確かつ的確に記載した計画とすること
4つ目のコツは、「課題と解決方法を明確かつ的確に記載すること」です。この「課題」については、「補助事業実施段階」と「事業化段階」に分けて考慮するのがポイントです。「補助事業実施段階での課題がない」ということは、「誰でも容易に取り組めてしまう=模倣困難性が低い=競争力が低い取り組み」ということとなります。
補助事業実施段階においても、難しいなんらかの課題が生じ、その課題を自社の強み等を用いて創意工夫して独自の解決を図ることが出来るからこそ、「補助事業の成果」に競合優位性が生じるわけです。
また、「事業化段階の課題」についても、明確に記載する必要があります。いわば、「これが解決できないと事業化できない」という部分です。これを明確に抽出しつつ、これに対して的確に対処できる解決方法を当て込むことで、採択に繋がる事業計画となります。この部分の検討が弱い、またはされていない事業計画では、不採択の可能性が高くなってしまいます。
<不採択になりやすい事業計画書の例>
×そもそも課題が明確になっていない(記載すらされていない)
×課題に対して、解決方法が妥当ではない(客観的に効果的な解決とは思えない)
×解決方法が実施体制等から困難である(技術的能力不足など)
(5)「SWOT分析」の結果を踏まえている事業計画になっていること
5つ目のコツは、「SWOT分析の結果を踏まえている事業計画になっていること」です。事業計画書の前半部分(1~3ページあたり)で、「SWOT分析」を記載しますが、その記載内容を全く踏まえていない事業計画となってしまうと、事業計画書全体もまとまりがないものとなってしまい、客観的にも有効な事業投資であることの説明ができません。
そもそも自社の強みや弱みを分析しておらず、機会や脅威についても分析していない事業計画では、不採択の可能性が著しく高くなるでしょう。分析し、その結果を事業計画書に記載することは最低条件としつつ、その「結果を踏まえた事業計画」にすることも重要なポイントです。
<不採択になりやすい事業計画書の例>
×強み・弱み等の分析がされていない計画
×分析結果を無視している計画
(6)「金融機関からのの資金調達が十分に見込める」計画になっていること
6つ目のコツは、「金融機関からの資金調達可能性」です。これは、「採択されても資金調達の見込みが付かずに、交付申請前や交付決定後に補助事業の実施を辞退せざるを得ない」という好ましくないケースが過去に散見されたためです。経済産業省としては、予算の適切な執行が求められているところ、「採択したのに辞退されること」を嫌います。そうならないように、「ちゃんと資金調達計画が問題ない計画・事業者」であることが重要な審査ポイントとなっています。
なお、「資金調達が十分に見込めない計画」とは、
- ①売上高や営業利益と比較して過剰な投資
- ②自己資本比率が低い
- ③流動比率が低い(キャッシュフローが悪い)
- ④既に借り入れ残高が多額となっている(借入依存度が高い)
- ⑤債務超過又は2期連続で営業損失が発生している
- ⑥過去10年以内に「リスケ」をしている(金融事故の発生履歴=いわゆるブラックリストに掲載)
- ⑦自己資金の割合10%以下(理想は3分の1程度)
等があります。
<不採択になりやすい事業計画書の例>
×財務内容からして調達困難と思われる資金調達計画
×借入金の返済原資について、営業利益で十分に返済できない計画
(7)補助金交付申請額に対して、「増加する付加価値額が妥当」な計画であること
7つ目のコツは、いわゆる「補助金対効果が高い事業計画とすること」です。
経済産業省が所管する事業再構築補助金は、「補助金を交付することでの経済効果」を考えて予算が設計されています。つまり、「補助金を出しても、将来的に税収や雇用創出で返ってくる」ことを狙っているわけです。だからこそ、「付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)」という指標で目標値が定められているわけです。
この「補助金対効果」が低い事業計画は、経済産業省としては補助金交付のメリットが少なく、不採択の可能性が高くなってしまいます。なお、事業計画上の付加価値額を高めようとすると、その分、算出根拠の説明のハードルは上がることとなります。そのため、むやみに数字だけを上げても、それはそれで不採択の可能性は高くなりますので、小手先の対策は無意味です。その点は注意しましょう。
対策は、「しっかりと効果が出る事業計画が出来るまで、何度も練り直して、自信のある事業計画を策定する」ことに尽きます。
<不採択になりやすい事業計画書の例>
×補助金交付申請額よりも付加価値額の増加額が下回っている計画
×「3~5年間」での効果が弱く、付加価値額の増加に長期的な期間が必要な計画
(8)「市場ニーズが客観的に明らかであることを十分に説明した計画」になっていること
8つ目のコツは、「市場ニーズが見込まれるかどうかの説明が十分に記載された事業計画」です。そもそも「市場ニーズの有無について検証していない事業」では、不採択の可能性が高くなります。
例えば、「A商品」の新規開発を行うための設備投資を行う補助事業計画で申請する場合に、「A商品」について市場が求めているかどうかの検証がされている必要があります。ただ単に「検証した」ということを説明するだけではなく、「検証した結果、明らかであること」をしっかりと説明する必要があります。
なお、市場ニーズの検証として最も効果的なのは、「クラウドファンディングでの資金調達実績」です。ハードルは高いですが、消費者が求めていることが事前に確認できるため、事業再構築補助金のことはさておいても、有益な取り組みとなります。
<不採択になりやすい事業計画書の例>
×市場ニーズが「見込まれない」計画
×市場ニーズがそもそも「未検証」である計画
(9)コロナ禍の長期化を前提に、「外出自粛等の影響を極力回避できる事業計画」であること
9つ目のコツは、「コロナ禍長期化の影響を回避している事業計画であること」です。そもそも事業再構築補助金の制度趣旨は、「新しい経済社会の構造の変化」を捉え、事業を「再構築」するものだからです。従来の事業内容と同じことをしている、飲食店が単純にこれまでと同じ店舗内飲食を前提とする2店舗目を出すなど、コロナ禍において事業が成り立たなくなるような事業計画では不採択の可能性が高くなります。
「事業再構築補助金」の制度趣旨をしっかりと理解したうえで、事業計画を策定しましょう。
<不採択になりやすい事業計画書の例>
×コロナ禍の終息(収束)を前提としている計画
×経済社会の変化を全く考慮していない計画
(10)「付加価値額等の算出の根拠」及び「実現への道筋」について、明確かつ客観的・合理的な説明が出来る収支計画とすること
最後となる10個目のコツは、「付加価値額等の算出の根拠及び実現への道筋に関する明確かつ客観的・合理的な説明がされていること」です。事業計画書の後半部分では、「3~5年間」の「収支計画」を立てる必要がありますが、ここに記載する数字の根拠を、ていねいに説明する必要があります。
過大な計画ほど、実現(目標達成)のためのハードルは厳しく評価されます。なお、実現への道筋については、主に「集客活動(販売促進活動)」について、しっかりと記載する必要があります。「KPI・KGIの設定」は有効です。仮に補助事業の成果が得られたとしても、売上獲得に繋がらなくては、投資計画としては失敗になってしまいます。損益計算書のトップラインである「売上高」が獲得できなければ、「営業利益」獲得に繋がらず、「付加価値額の増加」という事業再構築補助金の趣旨・目的を達成することができません。
「収支計画」について、なぜそうなるのかをしっかりと、明確に、「具体的な行動計画が見える形」で記載することが、採択されるための重要なポイントとなります。
<不採択になりやすい事業計画書の例>
×明らかに楽観的で、根拠のない収支計画
×そもそも算出根拠を明記していない収支計画
×実現への道筋が妥当とは思えない収支計画(実現が可能とは思えない事業化段階の取組)
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より効率的・効果的に事業計画書を作成するコツ
前述したとおり、上記10個のコツを掴んだ事業計画書が作成できれば、採択率が30%前半と厳しい「通常枠」においても、採択される期待値を上げることが可能です。但し、経営者の皆様は日ごろから忙しく、まとまった時間をじっくり取れるという方は少ないでしょう。そのため、「効率的」かつ「効果的に」事業計画書を作成する必要性のある方が大多数ではないでしょうか。この点、「効率的に」事業計画書を作成する方法の一つとして、「事業再構築補助金専用の事業計画書のひな形を活用する」方法があります。上記10個のコツを踏まえた「ひな形」を以下リンク先にて用意しておりますので、是非ご活用ください。
https://note.com/everest_note/n/ndcbb7ca8fed1
また、「効率的かつ効果的に」事業計画書の作成をするには、認定経営革新等支援機関の指導を得ながら「丸1日集中して事業計画書を作成するセミナーに参加」という方法もお勧めです。以下は、私が講師を担当する1日完結型の事業計画書作成集中ワーク型セミナーです。
https://profile.dreamgate.gr.jp/consul/pro/everest/seminar_view/
以上、第4回以降の公募回にて皆様の計画が採択され、早期に事業の成功へと結びつくことを心よりお祈り申し上げます。
筆者noteより引用
執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 野村 篤司(のむら あつし) /(行政書士法人エベレスト)
行政書士法人エベレスト代表社員・株式会社エベレストコンサルティング(認定経営革新等支援機関)代表取締役。2016年からものづくり補助金等支援を開始し、5年以上の支援実績。「行政書士」であるため、関連する「先端設備等導入計画認定申請」等も対応可能です。
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