【最大1200万円】意外に活用範囲が広い!事業承継・引継ぎ補助金をやさしく解説

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 竹内 洋一

起業家や事業主が事業承継やM&Aをするときに使える補助金「事業承継・引継ぎ補助金」の2022年度の公募が開始されました。

補助額の上限は600万円、しかも2つの類型を組み合わせて申請できるため最大で1200万円の補助が受けられる補助金ですが、中小企業庁の公式サイトにある公募要領などの情報を中小企業のオーナーが理解して活用していくには少し難解です。

そこで今日は中小企業庁認定M&A支援機関として活躍する竹内 洋一アドバイザーに、むずかしい公式情報をインタビュー形式でやさしく紐解いていただきます。

事業承継・引継ぎ補助金の3つの類型について

ー事業承継・引継ぎ補助金は3つの「類型」に分かれていますが、まずはこの3つの類型の違いについて、教えてください。

竹内アドバイザー:
この補助金は①経営革新類型、②専門家活用類型、③廃業・再チャレンジ類型の3つに分けられていて、それぞれ補助上限額や使える経費が違います。

①経営革新類型

1つめの「経営革新類型」は少しややこしい内容なので整理して説明します。補助上限は600万円で、補助率は2/3です。

経営革新類型は3つの「型」に分かれています。

  • 創業支援型・・・これまで事業主ではなかった人(雇用されて働いていた人)が独立し、M&A(株式譲渡や事業譲渡)などにより、会社を創業する場合に使える。
  • 経営者交代型・・・イメージ的には親子で経営している会社で、親から子へ代表権を移転するようなパターンで使える。
  • M&A型・・・これまで事業を営んでいた事業主が新たに事業拡大のために他の事業を買う場合に使える。

どの型でも引き継いだ経営資源(ヒト、モノ)を使って、新しくイノベ―ティブな事業を始める時(経営革新)に初めて使える補助金です。
私は飲食店経営の経歴が長いので飲食店で例えると、買い取った対面型の飲食店を改装したり機材購入したりしてテイクアウト事業を始める、といったケースで使えます。
実は2017年まで遡って申請できるので、例えば2017年以降に親から代表権を引き継いだ会社があったとして、そこで何かしら経営革新を行えば、「経営者交代型」で申請できます。

②専門家活用類型

専門家活用類型はM&Aをする際に仲介業者に支払う費用の2/3を最大600万円まで補助してくれるというものです。「仲介業者」は次のようなことをやってくれます。

  • 案件の紹介
  • 簡易的なデューデリジェンス
  • 売り手との交渉や質問等のやり取り

仲介業者がいない状態で自力で交渉・売買すると、例えば店舗の賃貸契約に期限付きの条件がついているなど、表面的には見えてこない潜んだリスクを見落とすことがあります。仲介業者は様々な案件を見てきているので、事前に確認しておいた方がいいことなどのアドバイスをしてくれます。

仲介業者に支払う報酬は中小企業庁のM&Aガイドラインで決められており、5億円以下の売買案件だと売買金額の5%以下と目安があります。ただしそこまでの規模のM&Aは中小企業においてはほとんどないと思いますので、多くの仲介業者は最低報酬ラインを、例えば200万円などの金額感で提供しています。

そのほかにかかる費用として、本格的なデューデリジェンスや契約書のリーガルチェックなどは仲介業者とは別の専門家に依頼することがありますので、それらの2/3をこの補助金でまかなえることになります。

③廃業・再チャレンジ類型

これは今回から新しく始まった類型で、M&Aで買い取った事業や設備等のなかで要らないものを捨てる際に最大150万円まで補助されます。例えば「経営革新事業」でイノベーションをするにあたり、不要となった部分を廃棄するためにこの類型で重複申請をすることも可能です。売り手のほうでも活用しやすいと思います。

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類型の重複申請で最大1200万円の補助が可能

事業承継引継ぎ補助金は重複する類型の申請が可能なのも特徴的です。

  • 経営革新&専門家活用
  • 経営革新&廃業・再チャレンジ

の2パターンの組み合わせなら重複申請が可能です。
ー経営革新と専門家活用はそれぞれ補助上限が600万円なので、組み合わせると最大1200万円の補助が受けられるのはインパクトが大きいですね。

それぞれの申請受付等スケジュールは?

ーそれぞれの申請受付スケジュールを教えていただけますか。

専門家活用類型と廃業・再チャレンジ類型の1回目は5月末の申請締切ですが、今年度は4回の公募がある予定だと言われています。経営革新型のスケジュールは現時点では開示されていません。今から準備を進めたら、2回目の公募で申請できると思います。

補助対象経費が思いの外広いのが特徴

ーこの補助金ではどのような経費が補助対象となりますか?

経営革新類型だと新しい事業の人件費や賃借料が補助対象経費として申請できるところがポイントです。これは補助金では珍しいのではないでしょうか。似たような補助金で事業再構築補助金がありますが、あちらは設備投資などの資産性のあるものに経費を使える補助金ですが、賃借料や社内人件費は申請できません。

また、仲介業者などの専門家費用を経費にしたい場合は専門家活用類型を選ぶ必要があります。

ーでは、どのような経費を使うかによって類型を選ぶと分かりやすいのでしょうか。

そういう考え方もありますが、私はまずは専門家活用類型を申請して事業を買い取って、そこからイノベーションして経営改善するために経営革新類型を申請するというのが良いんじゃないかと考えています。

M&A案件はどのように探すといいか?

ーではじっさいにM&A案件を探すときは、どのように探すといいのでしょうか?

たとえばBATONZなど、事業承継・M&A案件の売買プラットフォームを使って自分で案件を探すのもいいですが、私がお勧めしているのはBATONZなどに登録している私のようなアドバイザーに相談を持ち掛ける方法です。

例えば賃貸物件を探すとき、1件ずつ大家さんと交渉したりはせず、不動産屋さんを通して探して契約したほうが幅広い物件から探せて効率的だし、不動産屋さんからアドバイスを受けたりもできますよね。そんなイメージです。

事業承継やM&Aを利用した起業のメリット

ードリームゲートはこれから創業しようという方が多いですが、新規でゼロイチから創業するのに比較してM&Aを利用して起業するメリットはズバリなんでしょうか。

例えばお店を新規で開くとき、1000万円前後のまとまった初期投資がかかります。もちろん皆さん創業時には様々なシミュレーションをするとは思いますが、初期投資を回収できるほどのお客が実際に来るのか、やってみないとわからないという側面があります。

事業承継やM&Aだと、どのぐらいのお客が来ているかなどの売上規模の目途が分かった状態で始められ、さらに自分のアイデア・やり方をプラスして改善することで利益を伸ばすことも可能です。ゼロイチから始めるより、リスクのすくない起業方法ではないでしょうか。

ー実際にはどのような案件が多いのでしょうか。

案外多いのがオーナーが引退したいのに承継する相手がいない、というような案件です。高齢化社会になり後継者問題が社会的に浮き彫りになっている中、政府もこのような補助金を提供することで事業承継を推し進めています。

また、事業のオーナーが現金化したくて売却するケースもあります。こういうのは利益が既に出ている案件だったりもするので、積極的に検討していいでしょう。

中にはあまり利益が出ておらず事業がうまくいっていないので売りに出されているという案件もあります。こういうケースが必ずしもハズレかというと、そうでもありません。例えば立地が好条件なら業種を変えるなどして、買い手の手腕次第で黒字化することも可能なのです。

まずは専門家に相談を

ーいずれにしても自力で進めるより、経験のある方と相談しながら進める方が良さそうですね。

事業承継やM&Aに慣れている事業主はそう多くありません。補助金を活用するのはもちろんのこと、その後の事業が発展していくには知見のある人のアドバイスを受けるのが確実です。

私の得意分野である飲食店はもちろん、それ以外の業種も数多く経験してきているので、一度ご相談ください。

執筆者プロフィール:竹内 洋一/株式会社G-upDNA

地方銀行出身で、飲食店の事業譲渡を受け起業して高収益店舗へ改善、3店舗まで拡大した経験をもとに現在はM&Aアドバイザーとして活躍されています。特に飲食を中心に、幅広い経験をお持ちです。「通称:なんでも屋」とおっしゃる通り、どんな悩みにもしっかりサポートしてくれる頼もしい存在です。

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