中小企業庁が令和3年7月30日、事業再構築補助金の第3次公募を開始しました。申請受付は8月下旬から9月21日までです。
今回はこれまでとの変更点が多く、なかでも大きな変更点が3つあります。情勢を考慮して要件緩和・補助範囲が拡大されたと言える変更内容です。
- 通常枠が従業員数に応じた補助金額に変更、上限額がアップ!
- 類型が4つ→6つに増加。「最低賃金枠」は採択率が優遇
- 売上高減少要件に変更点
とくに注目したいのがもっとも採択率において優遇されるといえる「最低賃金枠」の追加でしょう。
この記事では、第3次公募要領の中身を読み解き、3つの大きな変更点を中心に公募要領を解説します。
- 目次 -
第3次公募の注目ポイント:これまでと大きく変わった3つの変更点
令和3年7月30日、事業再構築補助金の第3次公募の公募要領が公開されました。今回は第2次に比べて変更箇所が大きくあります。とくに大きな変更点を3つ紹介します。
なお公式の発表による3つの変更点は次の通りですのであわせて確認しておきましょう。
①通常枠の補助金額が従業員数に応じた額に変更、上限額が8,000万円にアップ!
通常枠の補助金額がこれまでの6,000万円から従業員数に応じて上限8,000万円にアップしました。しかし従業員数20人以下においては上限4,000万円と引き下げられています。
企業規模に応じた段階が設けられる形となりました。
通常枠の補助金<中小企業者等、中堅企業等ともに>
従業員数 | 補助金額 |
---|---|
20人以下 | 100万円~4,000万円 |
21~50人 | 100万円~6,000万円 |
51人以上 | 100万円~8,000万円 |
②類型が4つ→6つに増加。「最低賃金枠」は採択率が優遇
第2次公募では類型が4つで、かつ「緊急事態宣言特別枠」は第2次公募で最後になると告知されていましたが、第3次においても引き続き、枠が設けられることとなりました。
第3次公募における類型は次の6つです。
- 通常枠
- 大規模賃金引上枠<新設>
- 卒業枠
- グローバルV字回復枠
- 緊急事態宣言特別枠
- 最低賃金枠<新設>
それぞれの補助金額と補助率をまとめると次の通りです。
補助金額 | 補助率 | |
---|---|---|
通常枠 | 中小企業者等、中堅企業等ともに 【従業員数20人以下】100万円~4,000万円 【従業員数21~50人】100万円~6,000万円 【従業員数51人以上】100万円~8,000万円 |
中小企業者等 2/3 (6,000万円を超える部分は1/2) 中堅企業等 1/2 (4,000万円を超える部分は1/3) |
大規模賃金引上枠 <新設> |
中小企業者等、中堅企業等ともに 【従業員数101人以上】8,000万円超~1億円 |
中小企業者等 2/3 (6,000万円を超える部分は1/2) 中堅企業等 1/2 (4,000万円を超える部分は1/3) |
卒業枠 | 中小企業者等:6,000万円超 ~ 1億円 | 中小企業者等 2/3 |
グローバルV字回復枠 | 中堅企業等:8,000万円超 ~ 1億円 | 中堅企業等 1/2 |
緊急事態宣言特別枠 | 中小企業者等、中堅企業等ともに 【従業員数5人以下】 100 万円 ~ 500 万円 【従業員数6〜20 人】100 万円 ~ 1,000 万円 【従業員数21人以上】100万円 ~ 1,500万円 |
中小企業者等 3/4 中堅企業等 2/3 |
最低賃金枠 <新設> |
中小企業者等、中堅企業等ともに 【従業員数5人以下】 100 万円 ~ 500 万円 【従業員数6~20 人】100 万円 ~ 1,000 万円 【従業員数21人以上】100万円 ~ 1,500万円 |
中小企業者等 3/4 中堅企業等 2/3 |
新設された申請枠を中心に説明します。
新設された【大規模賃金引上枠】について
大規模賃金引上枠は中小企業・中堅企業のくくりには関係なく従業員数が101人以上いる事業主が使えます。補助金額は8,000万円超~1億円で、すべての公募回の合計で150社限定の交付です。
- 対象は従業員数が101人以上いる事業主
- 補助金額は8,000万円超~1億円
通常枠と同様の4つの要件①事業再構築要件②売上高等減少要件③認定支援機関要件④付加価値額要件に加え、2つの要件があります。
⑤【賃金引上要件】 補助事業実施期間の終了時点を含む事業年度から 3~5 年の事業計画期間終 了までの間、事業場内最低賃金を年額 45 円以上の水準で引き上げること
⑥【従業員増員要件】補助事業実施期間の終了時点を含む事業年度から3~5年の事業計画期間終了までの間、従業員数を年率平均 1.5%以上(初年度は 1.0%以上)増員させること
賃金をあげ、雇用を拡大するという要件が追加されています。
新設された大注目の【最低賃金枠】について
こちらは緊急事態宣言特別枠と同様の高い補助率が設定されており、かつ【最低賃金枠】は、加点措置を行い、【緊急事態宣言特別枠】に比べて採択率において優遇されると明記されています。従業員数に応じた申請金額上限が設けられています。
補助金額は中小企業者等、中堅企業等ともに
- 【従業員数5人以下】 100 万円 ~ 500 万円
- 【従業員数6~20 人】100 万円 ~ 1,000 万円
- 【従業員数21人以上】100万円 ~ 1,500万円
補助率は
- 中小企業者等 3/4
- 中堅企業等 2/3
通常枠と同様の4つの要件①事業再構築要件②売上高等減少要件⑤認定支援機関要件⑥付加価値額要件に加え、2つの要件があります。
③【最賃売上高等減少要件】以下の(ア)又は(イ)のいずれかの要件を満たすこと
- (ア)2020年4月以降のいずれかの月の売上高が対前年又は前々年の同月比で30%以上減少していること
- (イ)(ア)を満たさない場合には、2020年4月以降のいずれかの月の付加価値額が対前年又は前々年の同月比で45%以上減少していること
④【最低賃金要件】2020年10月から2021年6月までの間で、3か月以上最低賃金+30円以内で雇用している従業員が全従業員数の10%以上いること
③売上高減少要件に変更点
事業再構築補助金の重要な要件である売上高減少要件に変更が加えられました。売上高10%減少要件の対象期間が2020年10月以降から2020年4月以降に拡大されました。
まずはこれまでの公募での要件は次の通りです。
2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の 同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること
これは第3次公募からは次のように変わりました。
(a)2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ 以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少しており、(b)2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高 が、コロナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して 5%以上減少していること
さらにグローバルV字回復枠以外は売上高に代えて付加価値額を用いることも可能です。
(a´) 2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計付加価値額が、コロナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計付加価値額と比較して15% 以上減少しており、(b´)2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の 合計付加価値額が、コロナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計付加 価値額と比較して7.5%以上減少していること
また、以前の要件を満たしている場合にはその資料のみを提出するのでも良い、と記載があります。
※2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前 (2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少して いる場合には、(a)を満たすことが分かる資料のみを提出してください。(売上高の代わりに付加価値額を用いる場合も同様です。)
表で整理すると、こちらのようになります。※クリックで拡大します
【事業再構築補助金】不採択理由から見る、第3回に向けた提出書類の注意点より引用
第3次公募の注目ポイント:その他
ここまででお伝えした大きな変更点の他にも細かな注目ポイントはいくつかあります。
要件を満たさない申請は締切前に再提出が可能に
申請期限ギリギリのものはおそらくダメだということですが、仮に申請内容において形式的な不備があった場合は事務局から通知があり、再提出が可能ということです。
申請期限に余裕を持って申請完了されたもののうち、形式的な不備等により、申請要件を満たさなかった事業者に対しては、申請締切り前にその旨を通知し、再度申請することを可能とします。具体的な日程については別途事務局HPを通じてお知らせいたします。
※9/2追記:差し戻しのスケジュールが発表されました。(以下公式より抜粋)
9月10日(金)23:59までに受け付けた申請に関しては、事務局で添付書類等の確認を行います。不備が確認された場合には、原則として9月16日(木)までに、申請者に対して差戻しのご連絡をさせて頂きます。なお、添付書類等に不備が確認されなかった申請に関しては、ご連絡はいたしません。
事前着手制度に対する特例を継続
これまでの公募では見直す予定であると明記されていた「事前着手制度」ですが、従来通りの特例が継続されました。
令和3年2月15日以降に購入契約(発注)等を行った事業 に要する経費も補助対象経費とする特例を、第3回公募においても継続します。第4回以降の取扱いについては、今後の状況等を踏まえて判断のうえ、取り扱いを変更する場合には事前にお知らせします。
新規性要件の見直し
本補助金を活用し、新たに取り組む事業の「新規性」の判定においては「過去に製造等した実績がない」を「コロナ前に製造等した実績がない」に改められることになりました。
累計8万人が利用!質問に答えるだけで「事業計画書・数値計画書」が完成
⇒事業計画書作成ツールを無料で利用してみる
- 日本政策金融公庫の創業計画書も作成でき、融資申請に利用できる。
- 業種別にあなたの事業計画の安全率を判定
- ブラウザに一時保存可能。すべて無料!
第3次公募のスケジュールは?
第3次公募のスケジュールは次の通りです。
- 公募開始:令和3年7月30日(金)
- 申請受付:令和3年8月30日
- 応募締切:令和3年9月21日(火)18:00
- 結果発表:令和3年11月中旬~下旬頃
第4次公募以降のスケジュールはどうなる?
中小企業庁はこの補助金を「今年度中に5回ほど行う」と公表していますが、残り2回の公募時期については公表されていません。
なお、令和3年度行政事業レビューによると、1.4兆円の予算は「無理に使い切る予定はない」ということですので、補助金の給付に値する計画でないなら予算が余っていても不採択にするということでしょう。
しかし一方で7月29日の報道にによると、菅首相が30兆円規模の追加経済対策を指示したということですので、中小企業支援に追加予算がある可能性も十分あります。
累計8万人が利用!質問に答えるだけで「事業計画書・数値計画書」が完成
⇒事業計画書作成ツールを無料で利用してみる
- 日本政策金融公庫の創業計画書も作成でき、融資申請に利用できる。
- 業種別にあなたの事業計画の安全率を判定
- ブラウザに一時保存可能。すべて無料!
認定支援機関をさがすなら
事業再構築補助金は認定支援機関(認定経営革新等支援機関)と一緒に事業計画書を作成するという要件があり、申請のときには「認定支援機関確認書」を提出しなければなりません。
「認定支援機関確認書」の発行だけに対応している認定支援機関も実際にはいますが、要件内で定められているのは事業計画書を一緒に作成することです。
ものづくり補助金データポータルによると、ものづくり補助金においては15%の成功報酬を支払ってサポートを受けた者がもっとも採択率が高く、支援を受けなかった者と比較するとその採択率の差は約21%もあります。
これは事業再構築補助金においても同様であると考えていいでしょう。
ドリームゲートには採択率が高く経験豊富な認定支援機関が専門家として登録しており、事業再構築補助金のサポートを積極的にしています。あなたにぴったりの支援者をみつけてください。
執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局
ドリームゲートは経済産業省の後援を受けて2003年4月に発足した日本最大級の起業支援プラットフォームです。
運営:株式会社プロジェクトニッポン
Facebook | Twitter