中小企業と小規模事業者(以下、中小企業等)がITツールを導入したときにその経費を補助する、中小企業基盤整備機構の「IT導入補助金2022」の受付が、2022年3月31日から始まりました。
業務の効率化に寄与するシステムを導入したり、ネット通販(EC)に進出したりすることは経営基盤を強固にします。この補助金はそれを実行するきっかけになるはずです。
最終締め切りは2022年6月13日ですので、対象になる中小企業等は今すぐ準備に取りかかったほうがよいでしょう。
- 目次 -
IT導入補助金2022の全体像
この補助金には2つの枠と4つの型があります。
4)複数社連携IT導入類型
通常枠 |
1)A類型 |
2)B類型 |
|
デジタル化基盤導入枠
|
3)デジタル化基盤導入類型 |
通常枠には、1)A類型と2)B類型があります。
デジタル化基盤導入枠には3)デジタル化基盤導入類型と4)複数社連携IT導入類型があります。
IT導入補助金を申請するには、自社がどの類型に当てはまるのか確認する必要があります。
通常枠とデジタル化基盤導入枠の違い
- 通常枠:中小企業等が自社の課題やニーズに合ったITツールを導入するときの経費の一部を補助
- デジタル化基盤導入枠:中小企業等が導入する会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフトの経費の一部を補助し、会計・受発注・決済・ECに限定している点がポイント。
デジタル化基盤導入枠のほうがハードルは高いのですが、補助金の額は大きくなっています。補助金の額はあとで紹介します。
1)A類型と2)B類型の違い
https://www.it-hojo.jp/r03/doc/pdf/r3_application_guidelines.pdf
通常枠のA類型とB類型の違いは、賃上げ目標が必須かどうかで、A類型における賃上げ目標は加点項目にすぎませんが、B類型は必須要件です。
そのため、B類型のほうがハードルが高いのですが、その代わり補助金の額が大きくなります。
3)デジタル化基盤導入類型と4)複数社連携IT導入類型の違い
デジタル化基盤導入枠の3)デジタル化基盤導入類型と4)複数社連携IT導入類型の違いは、1社でITツールを導入するか複数社が連携してITツールを導入するかです。
4)の複数社は、サプライチェーンのなかで連携することも可能ですし、商業集積地の複数の中小企業等が連携しても対象になります。
4)のほうが補助金額が大きくなります。
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スケジュール:最終締め切りは6月13日
https://www.it-hojo.jp/schedule/
IT導入補助金2022のスケジュールは少し複雑で、申請と事業実績報告の日程は以下のとおりです。
<申請と事業実績報告のスケジュール>
通常枠(A・B類型) |
交付申請期間 |
2022年3月31日受付開始~終了時期は後日案内予定 |
|
1次締切分 |
締切日 |
5月16日17:00(予定) |
|
交付決定日 |
6月16日17:00(予定) |
||
事業実施期間 |
交付決定日以降~終了時期は後日案内予定 |
||
事業実績報告期間 |
後日案内予定 |
||
2次締切分 |
締切日 |
6月13日17:00(予定) |
|
交付決定日 |
後日案内予定 |
||
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
|
交付申請期間 |
2022年3月31日受付開始~終了時期は後日案内予定 |
|
1次締切分 |
締切日 |
4月20日17:00(予定) |
|
交付決定日 |
5月27日17:00(予定) |
||
事業実施期間 |
交付決定日以降~終了時期は後日案内予定 |
||
事業実績報告期間 |
後日案内予定 |
||
2次締切分 |
締切日 |
5月16日17:00(予定) |
|
交付決定日 |
6月16日17:00(予定) |
||
3次締切分 |
締切日 |
5月30日17:00(予定) |
|
交付決定日 |
6月30日17:00(予定) |
||
4次締切分 |
締切日 |
6月13日17:00(予定) |
|
交付決定日 |
後日案内予定 |
||
デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)は後日案内予定 |
2022年4月2日現在、未定や予定の部分が散見されます。またデジタル化基盤導入枠のうち複数社連携IT導入類型はまだ決まっていません。
デジタル化基盤導入枠は4次まで、通常枠は2次までありますが、両方とも最終締め切りは6月13日です。
登録申請のスケジュール
上記のスケジュールはいわば「本申請」のものですが、IT導入補助金2022には、「IT導入支援事業者」と「ITツール」の2つの登録を申請しなければならず、そのスケジュールは以下のとおりです。
IT導入支援事業者の登録申請 |
登録申請 |
2022年3月31日受付開始~終了時期は後日案内予定 |
採択決定 |
通知をもってお知らせ |
|
ITツール(ソフトウエア、サービス等)の登録申請 |
募集期間 |
2022年3月31日受付開始~終了時期は後日案内予定 |
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この補助金を特徴づけるIT導入支援事業者とITツールとは
IT導入支援事業者とITツールは、この補助金制度を特徴づけるものとなっていて、他の補助金ではあまりみかけない仕組みです。
中小企業等(申請者、補助事業者)がIT導入補助金の申請をするには、IT導入支援事業者という組織から、ITツールの説明、導入、運用方法の相談やサポートを受けなければなりません。また、IT導入支援事業者は、申請や手続きの支援もします。
補助事業者が導入するITツールは、このIT導入支援事業者から購入します。ITツールは「補助事業者の労働生産性向上に資するソフトウェア・オプション・役務の総称」と定義されていて、具体的には次のものになります。
- ソフトウェア
- 機能拡張
- データ連携ツール
- セキュリティ
- 導入コンサルティング
- 導入設定・マニュアル作成・導入研修
- 保守サポート
「ITツール」と聞くとソフトウェアそのものやシステムそのもの、アプリそのものなどを連想すると思いますが、それだけでなく、導入コンサルティングやマニュアル作成といった役務も含まれます。
ソフトウェアは次の業務に使うものが対象になります。
- 顧客対応
- 販売支援
- 決済
- 債権債務
- 資金回収管理
- 調達
- 供給
- 在庫
- 物流
- 会計
- 財務
- 経営
- 総務
- 人事
- 給与
- 労務
- 教育訓練
- 法務
- 情報システム
- 業種固有プロセス
- 汎用・自動化・分析ツール
企業の仕事のうちIT化システム化できる業務はすべて対象になるイメージです。
通常枠(A・B類型)について
https://www.it-hojo.jp/r03/doc/pdf/r3_application_guidelines.pdf
ここまでの説明で、IT導入補助金2022の全体像がつかめたと思いますのでさらに詳細に説明します。通常枠(A・B類型)は、あとで紹介するデジタル化基盤導入枠よりハードルが低く補助金の額が小さいので、デジタル化基盤導入枠に該当しない場合にこちらを選ぶ、という選択をしたほうがよいでしょう。
補助金の額とA類型とB類型の違い、賃上げ目標とは
A類型とB類型の違いと、それぞれの補助金の額(下限と上限)は以下のとおりです。
類型 |
補助金の額(下限と上限) |
賃上げ目標 |
A |
30万~150万円未満 |
加点項目 |
B |
150万~450万円以下 |
必須要件 |
補助率はAもBも経費の1/2です。補助金の額が高いB類型のほうが魅力的に感じるかもしれませんが、賃上げ目標が必須になっています。
賃上げ目標の内容は以下のとおりです。
<賃上げ目標とは>
給与支給総額(非常勤を含む全従業員と役員に支払った給料、賃金、賞与、役員報酬など)を年率平均1.5%以上増加
賃上げ目標が未達になると、支給した補助金の全部の返還を求めることがあります。
デジタル化基盤導入枠について
https://www.it-hojo.jp/r03/doc/pdf/r3_application_guidelines_digitalwaku.pdf
デジタル化基盤導入枠には、デジタル化基盤導入類型と複数社連携IT導入類型がありますが、ベースとなっているのは前者です。
そして中小企業等がデジタル化基盤導入類型に該当するなら、こちらのほうが通常枠より有利になるので、こちらで申請したほうがよいでしょう。
もし導入するITツールが会計、受発注、決済、ECに関するものであれば、デジタル化基盤導入枠の対象になります。
補助対象の経費
補助対象となる経費は以下のとおりです。
ソフトウェア、オプション、役務
IT導入支援事業者が提供し、あらかじめ事務局に登録されたソフトウェア、オプション、役務の導入費用。
なお、月額や年額で使用料金を支払うサブスクリプションなどの製品や役務は、最大2年分の費用が補助対象となります。
ハードウェア
補助対象経費となるソフトウェアの導入とあわせて購入する場合に限り、下記ハードウェアの購入費用も補助対象経費になります。
- PC・タブレット・プリンター・スキャナー及びそれらの複合機器(IT導入支援事業者が提供するハードウェアの購入費用)
- POS レジ・モバイル POS レジ・券売機(IT導入支援事業者が提供し、あらかじめ事務局に登録されたハードウェアの購入費用)
補助額と補助率(デジタル化基盤導入類型)
デジタル化基盤導入枠のデジタル化基盤導入類型の補助金の額と補助率は以下のとおりです。
補助率 |
2/3~3/4以内 |
|
補助金の額(下限と上限) |
ソフトウェア購入費と導入関連費 |
5万~350万円以下 |
パソコン、タブレットなど |
下限なし~10万円 |
|
レジ、券売機など |
下限なし~20万円 |
補助額と特徴(複数社連携IT導入類型)
https://www.it-hojo.jp/r03/doc/pdf/r3_application_guidelines_digitalwaku_fukusu.pdf
複数社連携IT導入類型はデジタル化基盤導入類型がベースとなっているので、ここでは複数社連携IT導入類型だけにみられる特徴を紹介します。
補助額は3,000万円超も
複数社連携IT導入類型の最大の特徴は補助金の上限額が3,000万円以上になることです。
複数社連携IT導入類型の最大の特徴は補助金の上限額が3,000万円以上になることです。
<補助金の上限額>
3,000万円に下記の1)2)と、事務費、専門家費を加えた金額
1)デジタル化基盤導入類型と同じもの
2)1)以外の経費、上限は50万円
額の大きさもさることながら、複数社連携IT導入類型では、デジタル化基盤導入類型や通常枠では補助対象となっていない事務費や専門家費も対象になります。
複数社連携、補助事業グループとは
複数社連携IT導入類型で申請するには、複数の中小企業等が連携してITツールを導入する必要があります。複数社は、サプライチェーンのなかでつくっても、商業集積地のなかでつくってもかまいません。
複数社のことを参画事業者といい、そのなかから事務執行管理や申請の取りまとめをする代表事業者を選びます。代表事業者と参画事業者を合わせて補助事業グループといい、補助事業グループは10社以上でなければなりません。
相談から申請、補助金の支給までの流れ
https://www.it-hojo.jp/r03/doc/pdf/r3_application_guidelines.pdf
https://www.it-hojo.jp/r03/doc/pdf/r3_application_guidelines_digitalwaku.pdf
IT導入補助金は相談から始まり、補助金を受け取って、報告をして完了します。
始まりから完了までの流れを紹介します。
なお、この流れは通常枠もデジタル化基盤導入枠も同じです。
1:中小企業等(申請者であり補助事業者)がIT導入支援事業者に相談する
↓
2:中小企業等がIT導入支援事業者から購入するITツールを選ぶ
・商談、見積もり依頼などを含む
↓
3:申請に必要な書類を作成して補助金事務局に申請する
・申請書類は中小企業等とIT導入支援事業者が協力して作成する
・補助金の公式サイトでの登録などを含む
↓
4:補助金事務局が補助金の交付を決定する
・ただし、この段階ではまだ補助金は入金されない
↓
5:中小企業等がIT導入支援事業者にITツールの代金を支払い、実際に導入する
↓
6:中小企業等とIT導入支援事業者が協力して事業実績報告を作成して、補助金事務局に提出する
↓
7:補助金事務局が補助金の額を確定して交付する(入金する)
↓
8:IT導入支援事業者は中小企業等に、ITツールのアフターフォローをする
↓
9:事業実施効果報告を作成して補助金事務局に提出して完了
ITツールの代金を支払って導入してから補助金が入ってくる流れになっている点に注意してください。
分からないことは専門家に相談を
自社のIT化やDX化を本格化させたい中小企業等の経営者には、このIT導入補助金2022はとても頼りになります。
しかし制度が複雑であったり準備書類が多かったり、自社で採択されるにはそれなりにハードルは高めです。ドリームゲートにはIT補助金に詳しい専門家がいますので、是非ご相談ください。
執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局 月見里
ドリームゲートは経済産業省の後援を受けて2003年4月に発足した日本最大級の起業支援プラットフォームです。
運営:株式会社プロジェクトニッポン
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