事業をされている方の中には、「IT導入補助金を活用してデジタル活用の負担を軽くしたいけど、何からしたらよいのかわからない」という方も多いと思います。
確かにIT導入補助金は内容がわかりにくい部分もありますが、決められた内容をシッカリと守れれば、決して難易度の高い補助金ではありません。
この記事では、IT導入補助金の概要から採択率、手続きの流れといった、申請に欠かせないポイントについて解説します。これを参考にぜひIT導入補助金にチャレンジしてみてください。
- 目次 -
IT導入補助金とは?具体的な制度の内容は?
「IT導入補助金」は、経済産業省が主催する補助金の一つで、中小企業・小規模事業者の方がITツールを導入する際に利用できる制度です。採択率は40〜60%と高いですが、ITツールの導入を支援するIT導入支援事業者と協力して申請するという特徴があります。
公式ホームページ:https://www.it-hojo.jp/
公募要領(2021):
https://www.it-hojo.jp/r02/doc/pdf/r2_application_guidelines_tokubetsuwaku.pdf
備考:https://seisansei.smrj.go.jp/pdf/0103.pdf
IT導入補助金とは
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者の方が自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する際の経費の一部を補助する制度です。
IT導入補助金には、通常枠(A・B類型)と低感染リスク型ビジネス枠(特別枠C・D類型)の2種類があり、それぞれで要件や補助額等が異なります。
通常枠は、主に自社の置かれた環境から強み・弱みを認識、分析し、把握した経営課題や需要に合ったITツールを導入することで、業務効率化・売上アップといった経営力の向上・強化を図ることを目的としています。
これに対し特別枠は、ポストコロナの状況に対応したビジネスモデルへの転換に向けて、労働生産性の向上とともに、業務上での対人接触の機会を低減するような業務形態の非対面化に取り組む中小企業等に対して、通常枠よりも補助率を引き上げて優先的に支援する内容となっています。
各類型の具体的な内容は、以下のとおりとなります。
A類型 | 一定範囲のツールの中から選択した、1 種類以上の業務プロセスを保有するソフトウェアを申請するものであること |
---|---|
B類型 | 一定範囲のツールの中から選択した、4 種類以上の業務プロセスを保有するソフトウェアを申請するものであること |
C類型 | 2種類以上の業務プロセスを保有し、複数のプロセス間で情報連携し、複数プロセスの非対面化や業務の更なる効率化を可能とするもの |
D類型 | 2種類以上の業務プロセスを保有し、テレワーク環境の整備に資するクラウド環境に対応し、複数プロセスの非対面化を可能とするもの |
わかりやすくいえばA・B類型は、「通常の業務にITツールを導入したときの補助金」、C・D類型については「コロナ対応のためのリスク低減ツールまたはテレワークのためのクラウド設備を導入したときの補助金」となります。
なお、補助対象経費となるITツールには、「業務効率化」のために、新たに導入される「ソフトウェア製品」や「クラウドサービス」などの他、導入に関するサポート費用や設定費用なども含まれます。
また、それぞれの主な申請要件としては、次のようなものがあります。
<通常枠>
- 国内で事業を営む法人または個人であること
- 交付申請の直近月において、申請者が営む事業場内の最低賃金が法令上の地域別最低賃金以上であること。
- gBizID プライムを取得していること。
- 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」の「★ 一つ 星」または「★★ 二つ星」いずれかの宣言を行うこと。
- 補助事業を実施することによる労働生産性の伸び率の向上について、1年後の伸び率が3%以上、3年後の伸び率が9%以上及びこれらと同等以上の、数値目標を作成すること
- B、C、D類型を申請の場合には、「給与支給総額を年率平均1.5%以上増加」かつ「地域別最低賃金+30円以上とする賃金水準」の両方の要件を満たす3年の事業計画書を作成すること
- 申請時点で、申請要件を満たす賃金引上げ計画を従業員に表明すること など
今後のスケジュール
IT導入補助金第5次締切分(A〜D類型共通)のスケジュールは、以下のとおりとなります。
- 公募締切 :令和3年12月22日(水) 17:00まで
- 交付決定 : 2022年1月26日(水)
- 事業実施期間 : 交付決定日以降~2022年6月30日(木)
※ 通常枠・低感染リスク型ビジネス枠ともに5次が最終締切予定
IT対象補助金の対象ツールを検索する方法
IT導入補助金は、補助事業者に対するITツールの説明、導入、運用方法の相談等のサポートなどを行う事業者(IT導入支援事業者)と補助事業者が共同して申請する必要があります。ただし、身近に適切なIT導入支援事業者がいない場合には、以下のツールを使用してIT導入支援事業者を検索することができます。
IT導入支援事業者・ITツール検索
https://portal.it-hojo.jp/r2/search/?_ga=2.52048041.1471598138.1638729114-1313316543.1628057526
「補助事業者」と「ITベンダー・サービス事業者」が協力して申請
IT導入補助金は他の補助金と異なり、「補助事業者」と「ITベンダー・サービス事業者」(IT導入支援事業者)が共同で事業計画を立てることが原則です。
ビジネスプランの骨子については補助事業者側が、システムの選定などのIT知識がいる部分はベンダー側が担当するのが基本となります。しかし、自分で何をしたいのかが明確でないと、導入ツールと業務との間にミスマッチが起こる原因となります。
そのため、取組みをするにあたっては、次のようなことに注意する必要があります。
・ 業者から自分のやりたいことに合致したご提案をもらい、システムの導入を決定する
・ はじめに補助対象となるものと対象外となるものを明確にしておく
・ 十分に経営課題や事業の強み・弱みを考えておく
参考:
https://mirasapo-plus.go.jp/hint/8410/
https://mirasapo-plus.go.jp/hint/11341/
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IT導入補助金の申請枠と採択率・採択結果
IT導入補助金の申請枠や採択率等については、以下のとおりとなります。
なお、本補助金の申請をするにあたってはA〜D類型のいずれに該当するかの判断が難しい場合がありますが、そのような場合には以下の「類型判別チャート」を利用すると、どれに該当するかがわかり便利です。
出典:
https://www.it-hojo.jp/r02/doc/pdf/r2_application_guidelines_tokubetsuwaku.pdf
現在、IT導入補助金は第3次分までが採択されていますが、これまでのA・B類型の申請数や採択率については以下のとおりとなっています。
A類型
申請数 | 交付決定数 | 採択率 | |
---|---|---|---|
1次締切分 | 2,373 | 1,317 | 55.5% |
2次締切分 | 4,542 | 2,507 | 55.2% |
3次締切分 | 2,840 | 1,648 | 58.0% |
このデータによると、A類型の採択率は55〜58%と、申請数の増減に関係なく高い水準で推移していることがわかります。
B類型
申請数 | 交付決定数 | 採択率 | |
---|---|---|---|
1次締切分 | 92 | 48 | 52.2% |
2次締切分 | 157 | 53 | 33.8% |
3次締切分 | 83 | 36 | 43.4% |
B類型においてはA累計よりも申請数が少なく、また、実施回によって採択率にも大きなバラツキがあることがわかります。
C・D類型における申請数や採択率については、以下のとおりとなっています。
C類型
申請数 | 交付決定数 | 採択率 | |
---|---|---|---|
1次締切分 | 3,249 | 1,908 | 58.7% |
2次締切分 | 9,664 | 5,869 | 60.7% |
3次締切分 | 7,622 | 4,656 | 61.1% |
D類型
申請数 | 交付決定数 | 採択率 | |
---|---|---|---|
1次締切分 | 797 | 444 | 55.7% |
2次締切分 | 1,696 | 1,036 | 61.1% |
3次締切分 | 1,273 | 782 | 61.4% |
C・D類型については、両類型を通して55〜61%と高い水準となっており、ほぼ60%に近い採択率となっています。
各採択状況のデータはこちらから:
https://www.it-hojo.jp/applicant/grant_decision.html
IT導入補助金の申請の流れ
IT導入補助金の申請は、すべて電子申告で行われるためネット上だけで完結できます。ただし、交付決定の連絡が届く前に発注・契約・支払い等を行った場合は、補助金の交付を受けることができなくなるためご注意ください。
出典:https://www.it-hojo.jp/procedure/
1.IT導入支援事業者の選定と、ITツールの選択
本事業に関するホームページや公募要領を確認し、補助事業についての理解ができたら、IT導入支援事業者とITツールの選定を行います。
2.「gBizIDプライム」アカウントの取得と、「SECURITY ACTION」の実施
次に「gBizIDプライム」アカウントの取得と、「SECURITY ACTION」の宣言の手続きを行います。
gBizIDプライム
「gBizIDプライム」とは、経済産業省及び中小企業庁が実施する、複数の行政サービスを1つのアカウントにより利用することのできる認証システムで、無料で取得することができます。IT補助金の申請をするためには、事前にこのアカウント(ID、パスワード等)を取得しておく必要があります。
なお、gBizIDプライムアカウントID発行には、1~2週間ほどかかるため早めの準備をおすすめします。
参考:https://gbiz-id.go.jp/top/
SECURITY ACTION
「SECURITY ACTION」とは、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する中小企業自らが情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度です。「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」の実践をベースに「★ 一つ星」と「★★ 二つ星」の2つの段階があり、IT導入補助金を申請するにはいずれかへの取組みを宣言する必要があります。
なお、宣言のための具体的な手続きは、「使用規約の確認」→「申込フォームへの入力」→「申し込みの完了」→「ロゴマークのダウンロード」という流れとなります。
参考:https://www.ipa.go.jp/security/security-action/it-hojo.html
(自己宣言サイト)https://security-shien.ipa.go.jp/security/index.html
3.交付申請
IT導入支援事業者との間で商談を進め、交付申請の事業計画を策定します。事業計画書の作成や申請は、申請者だけでなく、IT導入支援事業者と共同して行います。(ただし、交付申請は、申請者が提出)
事業計画書作成後の手続きの流れは、以下のとおりとなります。
- IT導入支援事業者から『申請マイページ』の招待を受け、代表者氏名等の申請者基本情報を入力する。
- 交付申請に必要となる情報入力・書類添付を行う。
- IT導入支援事業者にて、導入するITツール情報、事業計画値を入力する。
- 『申請マイページ』上で入力内容の最終確認後、申請に対する宣誓を行い事務局へ提出する。
交付申請後、外部審査委員会において審査を行い、「交付決定」となった申請者に対して、事務局より「交付決定通知」を行います。この交付決定により申請者は「補助事業者」となり、補助事業を開始することができます。
4.補助事業の実施
補助事業に関するITツールの発注・契約・支払いなどを行います。ただし、事業を実施する際には、必ず契約を最初に行ってください。契約前に「納品」・「支払い」を行った場合、補助金の交付を受けることができません。
5.事業実績報告と、補助金交付手続き
事業実施後は、事務局に「事業実施報告」を提出します。事務局では、この内容にもとづき確定検査を行い、事業が適切に実施されたことが認められた場合には、補助事業者に承認を依頼します。
補助事業者がこの承認をすると事務局は補助事業者へ「補助金額確定の通知」を行い、補助金を交付します。
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まとめ
「IT導入補助金」は、中小企業や小規模事業者等が自社の課題解決のために必要となるITツールを導入する経費の一部を補助する制度で、通常枠(A・B類型)と低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D類型)の2種類があります。また、IT導入支援事業者と共同で事業計画書の作成や申請をしなければならないという特徴があります。そのため、業者の選定や申請手続きの進め方などについて不安やお悩みがあるときには、まずは補助金の専門家に相談しましょう。
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執筆者プロフィール:引地 修一/Ichigo(一期)行政書士事務所
創業者と経営者の資金調達から事業再生、記事取材までを幅広くサポート。
保有資格:行政書士、事業再生士補、事業再生アドバイザー、宅地建物取引士、古物商
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