【2023年最新】賃上げを支援する3つの補助金と2つの助成金を紹介

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

政府は、企業による賃上げは、持続可能な経済と成長と分配の好循環の実現に欠かせないとしています。また、国は賃上げをする企業を支援するため、さまざまな補助金、助成金を用意しています。

当記事で紹介する補助金・助成金は次の5つです。

  1. 事業再構築補助金
  2. ものづくり補助金
  3. IT導入補助金
  4. 業務改善助成金
  5. キャリアアップ助成金

賃上げは企業の採用における競争力を強化し、成長へと導く効果があります。企業経営者は、これらの補助金・助成金の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

政府が賃上げした企業を支援する狙い

5つの補助金・助成金を紹介する前に、政府がなぜ、賃上げする企業を経済的に支援するのかを解説します。

賃上げはコスト・アップ要因だが企業の成長には欠かせない

賃上げは、従業員の給料を増額することになるため、企業の支出が増えます。そのため、短期的にはコストアップ要因といえるでしょう。しかし、賃上げによって、従業員が退職を思いとどまれば、人手不足対策になります。また、求職者が、賃金を魅力に感じれば、求人に応募する可能性も高まり、人材確保対策になります。

賃上げは、長期的な視点に立てば、自社の成長に欠かせないことといえるでしょう。また、政府も、賃上げはコストではなく未来への投資であると述べています。

参考)分配戦略|首相官邸ホームページ

新たな挑戦を後押しし、付加価値を高めることを支援

政府の考えは、賃上げをおこなった企業を支援する補助金・助成金の制度のなかにも盛り込まれています。

のちほど紹介する事業再構築補助金は、企業の新たな挑戦を後押しして、企業の製品・サービスの付加価値を高めることを支援するための制度です。事業再構築補助金のなかには、大規模賃金引上促進枠があり、大規模な賃上げに取り組む事業者に補助金の額を上乗せするしくみとなっています。

企業が新たな挑戦をしたり、付加価値を高めたりするには、人手が必要でしょう。そして優秀な人を確保するには賃上げが必要です。したがって、新たな挑戦だけでなく、賃上げをおこなう企業に交付する補助金の額を増やす政府の戦略は理にかなっているといえます。

次項から、5つの補助金・助成金の詳細を紹介していきます。

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①事業再構築補助金は「事業再編+賃上げ」した企業を支援

事業再構築補助金の目的は、経済社会の変化に対応するために新市場進出、事業・業種転換、事業再編、国内回帰、規模の拡大といった、中小企業など(以下、中小企業等)の挑戦を支援することで、日本経済の構造転換を促すことにあります。

なお、新市場進出、事業・業種転換、事業再編、国内回帰、規模の拡大などを「事業再構築」と総称しています。したがってこの補助金は、中小企業等の事業再構築を支援するためのものであるといえます。

参考) 事業再構築補助金 公募要領

事業再構築補助金と賃上げの関係

事業再構築補助金と賃上げした企業との関係を紹介します。

この補助金には、成長枠やグリーン成長枠、卒業促進枠などの枠があり、申請者(中小企業等)は自社に適する枠を選んで申請することになります。枠のひとつに大規模賃金引上促進枠があり、成長枠とグリーン成長枠の補助金に上乗せする形で交付される補助金です。つまり、賃金を引き上げただけでは補助の対象とならず「成長枠+大規模賃上げ」または「グリーン成長枠+大規模賃上げ」が成立したときに対象となるわけです。

成長枠の概要

ここからは、賃上げに関わる成長枠とグリーン成長枠に絞って制度の概要を紹介します。先に成長枠について確認していきます。

成長枠の要件は、以下のとおりです。

■成長枠の要件

  • 事業再構築指針に示す事業再構築の定義に該当する事業であること(以下、事業再構築要件)
  • 事業計画について認定経営革新等支援機関の確認を受けていること。補助金額が3,000万円を超える案件は認定経営革新等支援機関および金融機関の確認を受けていること(以下、認定支援機関要件)
  • 補助事業終了後35年で付加価値額の年率平均4.0%以上増加、または従業員一人当たり付加価値額の年率平均4.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること(以下、付加価値額要件)
  • 取り組む事業が、過去から今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属していること(以下、市場拡大要件)
  • 事業終了後35年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること(以下、給与総額増加要件)

グリーン成長枠の概要

グリーン成長枠にはエントリーとスタンダードがあり、それぞれの要件は以下のとおりです。

■グリーン成長枠(エントリー)の要件

  • 事業再構築要件(成長枠と同じ、以下同)
  • 認定支援機関要件
  • 付加価値額要件
  • グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する取り組みであって、その取り組みに関連する1年以上の研究開発・技術開発、または従業員の一定割合以上に対する人材育成をあわせておこなうこと(以下、グリーン成長要件)
  • 給与総額増加要件

以下は第1回~第10回公募で補助金交付候補者として採択されているまたは、交

付決定を受けている場合の要件です。

  • すでに事業再構築補助金で取り組んでいる、または取り組む予定の補助事業とは異なる事業内容であること(以下、別事業要件)
  • 既存の事業再構築をおこないながら新たに取り組む事業再構築をおこなうだけの体制や資金力があること(以下、能力評価要件)

■グリーン成長枠(スタンダード)の要件

  • 事業再構築要件(エントリーと同じ、以下同)
  • 認定支援機関要件
  • 付加価値額要件のうち年率平均は「5.0%以上増加」となる
  • グリーン成長要件
  • 給与総額増加要件

以下は第1回~第10回公募で補助金交付候補者として採択されているまたは、交

付決定を受けている場合の要件です。

  • 別事業要件
  • 能力評価要件

大規模賃金引上促進枠の概要

成長枠、またはグリーン成長枠に申請した申請者が以下の要件に該当するとき、大規模賃金引上促進枠にも該当することになります。その場合には、補助金の上限額が増額されます。

■大規模賃金引上促進枠の要件

  • 要件1:成長枠、またはグリーン成長枠に申請する事業者であること
  • 要件2:成長枠、またはグリーン成長枠の補助事業終了後35年の間、事業場内最低賃金を年額45円以上の水準で引き上げること
  • 要件3:成長枠、またはグリーン成長枠の補助事業終了後35年の間、従業員数を年率平均1.5%以上増員させること

要件2によって、賃上げの上昇幅が決められています。そして要件3によって、増員も必要となります。したがって、賃上げをしただけでは要件を満たさず、従業員数も増やさなければ大規模賃金引上促進枠には該当しません。

補助金の上限額と補助率

成長枠とグリーン成長枠の補助金の上限額と、大規模賃金引上促進枠による増額分は以下のとおりです。

■成長枠の額と補助率

従業員数

20人以下:100 2,000万円

21~50人:100 4,000万円

51100人:100 5,000万円

101人以上:100 7,000万円

●補助率(原則)

中小企業者等:12

中堅企業者等:13

■グリーン成長枠(エントリー)の額と補助率

●中小企業者等

従業員数

20人以下:100 4,000万円

2150人:100 6,000万円

51人以上:100 8,000万円

●中堅企業等:100 1億円

■補助率(原則)

●中小企業者等:12

●中堅企業者等:13

■グリーン成長枠(スタンダード)の額と補助率

中小企業者等:100 1億円

中堅企業者等:100 1.5億円

■補助率(原則)

●中小企業者等:12

●中堅企業者等:13

■大規模賃金引上促進枠の額(上乗せ額)と補助率

100万~3,000万円

■補助率

●中小企業者等:12

●中堅企業者等:13

賃上げに関するルール

大規模賃金引上促進枠は、成長枠、またはグリーン成長枠の事業計画の内容を前提にしています。そのため、事業計画が変更となった場合や、実施困難になった場合は、大規模賃金引上促進枠の補助金交付が取り消されることがあります。

②ものづくり補助金は生産性向上策を支援

ものづくり補助金の正式名称は、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金といいます。

その名のとおり、ものづくり補助金の目的は、中小企業や小規模事業者など(以下、中小企業等)が今後取り組む、革新的サービス開発、試作品開発、生産プロセスの改善、生産性向上のための設備投資などを支援することです。

参考)ものづくり補助金公募要領

ものづくり補助金と賃上げの関係

政府がものづくり補助金を設けたのは、中小企業等がこれから複数年にわたって相次いで制度変更などの困難に直面するからです。予定される制度変更などは、中小企業等にとって大きな課題となり、解決するには生産性の向上などが欠かせないというわけです。

この「制度変更など」は、具体的には働き方改革や被用者保険の適用拡大、インボイス導入、そして賃上げを指します。政府は賃上げも中小企業等の課題になりうると考えているわけです。つまり賃上げは避けてとおれないといえるでしょう。

賃上げの条件が含まれているのは、ものづくり補助金の基礎要件です。そして、基礎要件の賃上げ要件を上回る賃上げをした場合、大幅賃上げとして、補助金の上限額が引き上げられます。

制度の概要

ものづくり補助金の制度の概要をみていきましょう。

基礎要件と枠ごとの要件をクリアする必要がある

ものづくり補助金の基礎要件は、以下のとおりです。

■基礎要件

以下の要件をすべて満たす35年の事業計画を策定すること。

  • 事業計画期間において、給与支給総額を原則、年率平均1.5%以上増加
  • 事業計画期間において、事業場内最低賃金を毎年、地域別最低賃金+30円以上の水準とする
  • 事業計画期間において、事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加

ものづくり補助金には複数の枠があり、申請者(中小企業等)は自社に合う枠を選んで申請することになります。しかし、上記の基礎要件はすべての枠で必要になります。したがって、申請時には「基礎要件+枠ごとの要件」の2つを満たさなければなりません。

枠の紹介

ものづくり補助金には、次の枠が存在します。

  • 通常枠:基本的な枠
  • 回復型賃上げ・雇用拡大枠:業況がきびしいながら賃上げ・雇用拡大に取り組む中小企業等を支援
  • デジタル枠:デジタルトランスフォーメーション(DX)に投資する中小企業等を支援
  • グリーン枠:温室効果ガス排出削減に投資する中小企業等を支援
  • グローバル市場開拓枠:海外事業を拡大・強化する中小企業等を支援

大幅賃上げに係る補助上限額引上の特例

上記の枠の要件を満たしたうえで、大幅賃上げに係る補助上限額引上の特例要件も満たすと、補助金の上限額が引き上げられます。

特例の要件は以下のとおりです。

■大幅賃上げに係る補助上限額引上の特例の要件

以下のすべての要件に該当すること。

  • 事業計画期間において、基本要件である給与支給総額を年率平均1.5%以上増加に加え、さらに年率平均4.5%以上(合計で年率平均6%以上)増加とすること
  • 事業計画期間において、基本要件である地域別最低賃金+30円以上の水準とすることに加え、事業場内最低賃金を毎年、年額+45円以上増額すること
  • 申請時に、上記2点の達成に向けた具体的かつ詳細な事業計画「大幅な賃上げに取り組むための事業計画」を提出すること

補助金の上限額と補助率

枠ごとにおける補助金の上限額と補助率を紹介します。

・通常枠

従業員数

5人以下:100万~750万円

620人:100万~1,000万円

21人以上:100万~1,250万円

補助率:原則12

・回復型賃上げ・雇用拡大枠

従業員数

5人以下:100万~750万円

620人:100万~1,000万円

21人以上:100万~1,250万円

補助率:23

・デジタル枠

従業員数

5人以下:100万~750万円

620人:100万~1,000万円

21人以上:100万~1,250万円

補助率:23

・グリーン枠

エントリー類型

従業員数

5人以下:100万~750万円

620人:100万~1,000万円

21人以上:100万~1,250万円

スタンダード類型

従業員数

5人以下:750万~1,000万円

620人:1,000万~1,500万円

21人以上:1,250万~2,000万円

アドバンス類型

従業員数

5人以下:1,000万~2,000万円

620人:1,500万~3,000万円

21人以上:2,000万~4,000万円

補助率:すべて23

・グローバル市場開拓枠

100万~3,000万円

補助率:原則12

続いて大幅賃上げに係る補助上限額引上の特例の上乗せ額(引き上げ額)を紹介します。

・大幅賃上げに係る補助上限額引上の特例の引き上げ額

従業員数

5人以下:最大100万円引き上げ

620人:最大250万円

21人以上:最大1,000万円

賃上げに関するルール

大幅賃上げに係る補助上限額引上の特例は、賃上げ要件を厳しくすることで補助金の額を増やすしくみです。そのため、実際の経営のなかで、賃上げ要件を満たさなくなった場合には、交付された補助金のうち特例による増加分を返還することになります。

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③IT導入補助金は自社のDXを支援

IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者など(以下、中小企業等)が生産性の向上を目指して業務効率化やDXITツールの導入を図ったときに支援します。IT導入補助金は中諸企業等のDXIT化を支援するものですが、要件のなかに賃上げが含まれています。

参考)IT導入補助金とは

IT導入補助金と賃上げの関係

IT導入補助金の目的は、中小企業等が今後直面する制度変更に、DXIT化で対応する際に、それを支援することにあります。ここで想定している制度変更とは、働き方改革、被用者保険の拡大、インボイスの導入、そして賃上げです。

賃上げだけに着目すると、この補助金は、賃上げという課題に対処するためDXIT化をおこなう中小企業等を支援するもの、ということができます。そのため、IT導入補助金の要件には賃上げが含まれています。また、要件の内容よりも充実した賃上げをおこなった場合、審査時に加点され優遇措置を受けることが可能です。

制度の概要

IT導入補助金には、次の5つの枠が存在します。

・通常枠

自社の課題に合ったITツールを導入して業務効率化と売上アップを図る中小企業等を支援する。A類型とB類型がある。

・セキュリティ対策推進枠

サイバー攻撃などのサイバー・インシデントが引き起こすリスクの低減を図る中小企業等を支援する。

・デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)

会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフトを導入して生産性向上を図る中小企業等を支援する。

・デジタル化基盤導入枠(商流一括インボイス対応類型)

インボイス制度に対応した受発注システムを導入する中小企業等を支援する。

・デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)

業務上つながりのあるサプライチェーンや、特定の商圏で事業を営む商業集積地に属する複数の中小企業等が連携してITツールを導入し、生産性の向上を図るときに支援する。

この5つの枠のうち通常枠には賃上げ要件があり、その内容は以下のとおりです。

・通常枠の賃上げ要件

B類型に申請する場合、以下の要件を満たす必要があります。

    • 事業計画期間内に給与支給総額を年率平均1.5%以上増やす
    • 事業内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にする

なお、セキュリティ対策推進枠、デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)、デジタル化基盤導入枠(商流一括インボイス対応類型)の3枠については、賃上げが要件に含まれていません。しかし、賃上げをおこなうと加点を受けることが可能です。また、デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)には、要件にも加点にも賃上げは含まれません。

補助金の上限額と補助率

IT導入補助金の上限額と補助率は以下のとおりです。

・通常枠

A類型:5万~150万円未満、補助率12以内

B類型:150万~450万円以下、補助率12以内

・セキュリティ対策推進枠

5万~100万円、補助率12以内

・デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)

●ソフトウェアなど

下限なし~50万円以下、補助率34以内

50万円超~350万円以下、補助率23以内

●ハードウェア(パソコン、タブレット、レジ、券売機など)

パソコン、タブレットなど:10万円以下、補助率1/2以内

レジ、券売機:20万円以下、補助率1/2以内

・デジタル化基盤導入枠(商流一括インボイス対応類型)

下限なし~350万円

補助率

・中小企業・小規模事業者等が申請する場合:23以内

・そのほかの事業者等が申請する場合:12以内

・デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)

●基盤導入経費:3,000万円以下、補助率1/2~34

●消費動向等分析経費:3,000万円以下、補助率23以内

●事務費、専門家費:200万円以下、補助率23以内

賃上げに関するルール~加点について

審査でおこなわれる優遇措置である加点の種類は複数ありますが、ここでは賃上げに関係する加点のみを紹介します。

・通常枠の賃上げに関する加点

・A類型で、事業計画に「給与支給総額を年率平均1.5%以上増加」「事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にすること」を盛り込み、従業員に表明したとき。「事業場内最低賃金を地域別最低賃金+50円以上の水準にする」と従業員に表明したときはさらに加点する。

・B類型で、事業計画期間に事業場内最低賃金を地域別最低賃金+50円以上の水準にする。

・セキュリティ対策推進枠の賃上げに関する加点

以下の要件をすべて満たす3年の事業計画を策定し、従業員に表明していること

・事業計画期間において、給与支給総額を3年後に4.5%以上増加

・事業計画期間において、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にする 

・なお、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+50円以上の水準にした場合、さらに加点する

・デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)の賃上げに関する加点

以下の要件をすべて満たす3年の事業計画を策定し、従業員に表明していること

・事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加

・事業計画期間において、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にする

・なお、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+50円以上の水準にした場合、さらに加点される

・デジタル化基盤導入枠(商流一括インボイス対応類型)の賃上げに関する加点

以下の要件をすべて満たす3年の事業計画を策定し、従業員に表明していること

・事業計画期間において、中小企業・小規模事業者等については、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加。中小企業・小規模事業者等以外については給与支給総を年率平均3.0%以上増加

・事業計画期間において、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にする

・なお、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+50円以上の水準にした場合、さらに加点される

なおデジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)には賃上げに関する加点がありません。

④業務改善助成金は「投資+賃上げ」を支援

業務改善助成金は、生産向上につながる設備投資などをおこない、事業内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その投資などにかかった費用の一部を助成する制度です。投資と賃上げを同時におこなった企業などの事業場(以下、事業場)を支援するしくみといえます。

 参考) 業務改善助成金

業務改善助成金と賃上げの関係

事業場内最低賃金とは、その事業場でもっとも低い時間給のことです。事業場内最低賃金は、基本給と諸手当から算出し、このなかには時間外勤務手当(残業代)や休日出勤手当、賞与などは含まれません。

業務改善助成金のポイントは、事業内最低賃金に焦点を当てていることです。つまり、国(厚生労働省)としては賃金の底上げを図ろうとしているわけです。

制度の概要

業務改善助成金の概要をみていきましょう。

投資の費用を助成

業務改善助成金のもうひとつのポイントは、生産性向上に関わる投資などの費用の一部を助成するのであって、賃上げに使った費用の一部を助成するものではないという点です。

生産性向上に関わる投資などには、次のものがあります。

■生産性向上に関わる投資などの具体例

  • 機器、設備の導入(POSレジ・システム、リフト付き特殊車両など)
  • 経営コンサルティングの利用
  • そのほか(店舗改装など)

生産性向上に関わる投資などに該当するには、それが生産性の向上につながっていなければなりません。たとえば、POSレジ・システムを導入すれば、在庫管理の時間を短縮できます。介護施設などがリフト付き特殊車両を導入すれば、利用者の送迎時間を短縮できます。

また、経営コンサルタントに、顧客回転率を高めるための業務フローの見直しを依頼すれば生産性は向上するでしょう。店舗を改装して配膳時間が短くなれば、これも生産性向上に寄与しているため対象になります。

事業場ごとに申請する

業務改善助成金は事業場ごとに申請します。たとえば、ある企業の本社と工場が別の事業場だった場合、どちらも対象であれば、本社として申請するだけでなく、工場としても申請します。

対象は、事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内である中小企業、または小規模事業者です。

助成金の上限額と助成率

助成金の上限額は、事業場内最低賃金の引上げ額や、引き上げの対象となる労働者数によって細かく定められています。ここでは、そのなかからいくつか抜粋して上限額を紹介します。

■業務改善助成金の上限額(一部抜粋)

30円以上引き上げる

・引き上げる労働者が1人:30万円(30人未満の事業場の場合60万円)

・引き上げる労働者が10人以上:120万円(30人未満の事業場の場合130万円)

90円以上引き上げる

・引き上げる労働者が1人:90万円(30人未満の事業場の場合170万円)

・引き上げる労働者が10人以上:600万円(30人未満の事業場の場合も同様)

助成率は以下のとおりです。

■業務改善助成金の助成率

・現在の事業場内最低賃金900円未満:910

・現在の事業場内最低賃金900950円未満:原則45

・現在の事業場内最低賃金950円以上:34

支給額をシミュレーション

業務改善助成金の額をシミュレーションしてみます。

ある会社の事業場内最低賃金(時間給)が現在863円で、対象者が8人いたとします。この8人の時間給を953円に引き上げると90円(=953円-863円)アップになるので「90円以上引き上げる」に該当します。助成率は910が採用されます。

90円以上引き上げる」ケースで、「引き上げる労働者が8人」の場合、助成金の上限額は450万円になります。もし、この会社が600万円の投資をしていた場合、助成率は910のため、540万円となります。しかし、上限額が450万円なため、この会社には450万円が助成されます。

⑤キャリアアップ助成金は有期雇用労働者を支援

キャリアアップ助成金は、正社員ではない従業員(以下、有期雇用労働者等)を正社員にしたり、処遇改善を実施したりした企業などの事業主に助成するものです。

参考)キャリアアップ助成金

この助成金と賃上げの関係と制度の概要

キャリアアップ助成金には7つのコースがありますが、ここでは賃上げに関連する以下の4つのコースについて解説していきます。

■賃上げに関連するキャリアアップ助成金の4コースの概要

●賃金規定等改定コース

有期雇用労働者等の基本給の賃金規定などを改定して3%以上増額する

●賃金規定等共通化コース

有期雇用労働者等と正規雇用労働者(≒正社員)との共通の賃金規定などを新たに規定して適用する

●賞与・退職金制度導入コース

有期雇用労働者等を対象に賞与、または退職金制度を導入し支給する、または積み立てを実施する

●社会保険適用時処遇改善コース

有期雇用労働者等に新たに社会保険を適用させるとともに、労働者の収入を増加させる

基本給や収入を「増やす」と明記しているのは、賃金規定等改定コースと社会保険適用時処遇改善コースです。賃金規定等共通化コースと賞与・退職金制度導入コースは賃上げを明記しているわけではありません。しかし、正社員と同様の賃金規定が適用されたり、賞与や退職金制度が適用されたりすれば、収入が増えることになるため、賃上げに関連するといえるでしょう。

助成金の支給額

4つのコースの助成金の支給額を紹介します。金額は原則です。

●賃金規定等改定コース

労働者1人当たり

  • 基本給の上昇率35%未満:5万円
  • 基本給の上昇率5%以上:6.5万円

●賃金規定等共通化コース

1事業所当たり60万円

●賞与・退職金制度導入コース

1事業所当たり40万円

●社会保険適用時処遇改善コース

  • 手当等支給メニュー:労働者1人当たり50万円(最長3年で3年の合計額)
  • 労働時間延長メニュー:労働者1人当たり30万円(最長3年で3年の合計額)

賃上げ関連の補助金・助成金の相談はドリームゲートへ

賃上げは自社の成長に欠かせない投資であり、政府の要請でもあります。しかし、賃上げは短期的にはコストアップ要因となるため、実施はかんたんではないはずです。そのようなとき、賃上げをおこなう企業を支援する補助金・助成金の活用は有効な手段です。

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執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局

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